UNDPと日本、ウズベキスタンにて地域の発展と安定のためのパートナーシップを強化

2025年9月2日
Four professionals stand together, holding blue documents, against a colorful patterned backdrop.

「このパートナーシップは、スルハンダリヤにおける持続可能な開発を推進し、若者、女性、地域のイノベーターに新たな扉を開くとともに、アフガニスタン住民も含めた包摂的なより良い未来への歩みを後押しします。」– 藤井明子UNDPウズベキスタン事務所常駐代表

Photo: UNDP Uzbekistan

UNDPは、近年経済・社会の発展が最も著しい中央アジアのウズベキスタンにて、日本政府と連携し、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」包摂性を備えた社会サービスの構築を目指し、現地社会が抱える問題の解決を後押しする支援に取り組んできました。

UNDPは日本政府との協力のもと、地球規模課題である気候変動及びカラカルパクスタン地域にあるアラル海の干ばつ等の環境問題への対処を現地政府及びコミュニティとの緊密な連携により、現場のニーズに沿った形で、持続可能かつ包摂的な社会サービスを保健・医療、教育、給水面で実現するための支援を行ってきました。アラル海地域では水資源の枯渇や塩害が課題である中、現在の環境化での効果的な農業生産手法の導入や生産者による製品化や製品の質の向上などにも向上し、地域社会の生活向上のための支援を様々な形で関与しています。

この度、UNDPは、2025年8月下旬岩屋毅・外務大臣によるウズベキスタン訪問の機会に、アフガニスタンと国境を接する南部スルハンダリヤ州における若者とアフガン住民のための経済的自立を支援する新たなパートナーシップに合意しました。本プロジェクトは、国連80周年・UNDP創設60周年であり、世界が様々な困難に直面する状況下で、日本が国連との協調を中央アジア地域で具体化する1つの事例あり、現在ウズベキスタン政府が掲げる多国間主義との連携を推進する重要イニシアチブとなります。

UNDPはウズベキスタンにて、中央アジア地域横断プロジェクトも含め、災害危機管理・都市レジリエンス強化、若者の過激主義化防止、アラル海農業支援、気候変動・エネルギー効率化の分野で日本との連携プロジェクトを実施しています。今回の新規プロジェクトは、ウズベキスタン南部で国境を接するアフガニスタンなど周辺国が不安定化する中、ウズベキスタンの発展と安定に貢献し、ひいては地域全体の安定に寄与するという観点からも大きな意義があります。

ウズベキスタンは中央アジア地域最大の人口約3,700万人で、そのうち60%が30歳以下で、毎年新たに60万人の若者が就業年齢に達し労働市場に参入します。若者人材育成が同国発展の鍵ともにいわれ、特に南部スルハンダリヤ州では国境を接することから多くのアフガン人が住み、いわゆる就労機会のない若者の過激主義化を防ぐことが地域の平和と安定に重要であることと同時に、今回の新プロジェクトはその取り組みを後押しするイニチアチブとなります。

ウズベキスタンにおけるもう一つの開発課題はアラル海周辺の気候変動と環境影響への対応です。かつての3分の一まで縮小してしまったアラル海の枯渇、塩害と砂漠化、水資源減少による農業並びに食糧危機への影響が年々深刻となっています。カラカルパクスタン自治州はウズベキスタン政府の優先地域でもあります。2021年国連総会決議によるアラル海地域の「生態系イノベーションと技術の導入地域」としての認定に基づき、国連事務総長も過去訪問しています。

アラル海地域でUNDP はこれまで日本政府の資金拠出を受けて数々の活動を実施してきました。排水を農業水に再利用する日本の浄化槽の支援は僻地のコミュニティにて大きな生活環境の改善をもたらしました。今回の浄化槽は日本企業(テラオライテック社:福井県)が施工しており、日本技術活用、日本の顔の見える好事例となりました。さらにJICAがキルギスや他国の農村活性化支援で活用している一村一品活動アプローチをUNDPのアラル海支援でも取り入れることで、地場産業の活性化、環境に優しい特産物の開発など、今後も日本企業との連携へと繋がる可能性があります。

ウズベキスタン政府内の閣僚や重要ポストの中には、日本への留学経験者なども多く、日本語を話す親日派が多いことが近年の特徴です。環境大臣や汚職対策機関長など、長年に渡る日本の文化外交の実が生かされ、UNDPが日本政府との連携をウズベキスタンで行う強固な地盤があります。このような中、ウズベキスタンの発展を後押しすることは、地理的かつ戦略的重要な意味を有するウズベキスタンから、中央アジア地域全体、ひいてはユーラシア地域の発展と平和に資するものであり、UNDPは今後も日本と連携して同地域での支援を継続していきます。

背景:

日本政府と国連開発計画(UNDP)は8月27日、無償資金協力「スルハンダリア州におけるアフガニスタン人を含む脆弱層の自立支援計画」の合意文書を締結しました。本署名は、岩屋毅外務大臣によるウズベキスタン公式訪問の機会に行われ、持続可能な開発と包摂的成長に向けた日・UNDP双方の共同のコミットメントを強調するものとなりました。本事業は、日本により開発協力を進める発意のもと総額330万米ドル超の支援を受け、ウズベキスタン共和国経済・財務省を主要パートナーとして実施されます。アフガニスタンと国境を接する南部スルハンダリヤ州の経済的潜在力を活かし、地域社会およびアフガニスタン住民に新たな機会を創出するものです。

本プロジェクトは、直接的には4,330人以上、間接的には1万人以上に恩恵をもたらし、教育、実践的な技能研修、起業の機会を通じて、人々がより良い生活を築くことを支援します。取り組みの重要な柱の一つは、アフガニスタン国民教育研修センター(ECTAC)の機能強化であり、最新のSTEM(科学・技術・工学・数学)実験室や職業技術教育訓練(TVET)の施設を整備することです。これにより、農業技術から情報技術、医療に至るまで、地域のニーズに即した多様なコースを提供できるようになります。さらに、若者や起業を志す人々を対象に、インターンシップやワークショップを提供するビジネスインキュベーターを設置します。加えて、経済成長を一層後押しするべく、300のスタートアップに機材を供与し、150の新規ビジネス創出と1,000人の雇用創出を目指します。これらの取り組みは、「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダや、教育・ジェンダー平等・経済成長に関する国連持続可能な開発目標(SDGs)とも合致しています。