2022年、日本から総額約3億8,800万米ドルの資金拠出(163のパートナー中最大額)を受ける

2023年5月2日
Photo: UNDP Ghana

2022年1月~12月において、UNDPは、日本政府から総額約3億8,800万米ドルの資金拠出を受けました。これは163のUNDP資金パートナー中で最大の額でした。これに加えて2023年3月、UNDPは日本政府の2022年度補正予算から約2億6,744万米ドルの資金拠出を受けました。この拠出金は、ウクライナをはじめとする国と地域において、22件のプロジェクトに充当されるとともに、3件のテーマ別プロジェクト(気候変動、ビジネスと人権、及び新規医療技術へのアクセスと提供に関するもの)やアフリカでの現地スタートアップ支援等に活用されます。また、約3,221万米ドルはUNDPの組織運営管理費や人件費等に加えて、自然災害や紛争などの危機発生時に現地で必要とされる支援を即座に実施するための資金として使用されます。

欧州地域では、ウクライナのプロジェクトに対して約9,500万米ドルが拠出され、緊急爆発物除去・がれき撤去、電力施設等のインフラ復旧、治安改善、人権推進、司法アクセスの確保などの活動に活用されます。特に、深刻なエネルギー危機と停電により暖房・照明などが利用できない状況を踏まえ、日本政府による緊急的な支援の一環としてポータブル電源等を地方自治体及びコミュニティに対して供与しました。また、難民の流入等により経済社会的な影響を受けている近隣のモルドバにおいても、エネルギー及び食料安全保障を強化するためのプロジェクトを実施する予定です。

サハラ砂漠以南のアフリカ地域では、チャド湖周辺(カメルーン、チャド、ニジェール)を対象とする地域案件に加え、9件のプロジェクト(ケニア、コンゴ民主共和国、セネガル、ナイジェリア、ベナン、マラウイ、マリ、中央アフリカ及び南スーダン)を実施します。チャド湖周辺の地域案件では、武装勢力による暴力や気候変動、自然災害といった複合的な危機状況下にあるコミュニティに対し、経済社会基盤の整備や生計向上活動を国境を越えて行い、長期的な平和構築と開発の観点から社会的結束の強化を図る予定です。また、これらの地域・国別案件に加えて、経済産業省からの拠出金を通じ、若手起業家も含むアフリカのスタートアップ支援とエコシステムの整備等を行います。

北アフリカ・中東地域ではイエメン、イラク、エジプト、シリア及びパレスチナにおいて、6件のプロジェクトを実施します。イエメンでは沖合に放置された大型石油タンカー「FSOセイファー」からの石油流出危機に同国政府が適切に対応するための支援を行います。イラクとエジプトでは小規模農家、シリアでは女性や若年層、障がいのある人々といった複合的な危機に最も脆弱な人々に対して、農業生産性の改善や生計向上のための活動を行います。また、パレスチナのガザ地区では自然を基盤とした解決策(Nature-based solutions)を推進し、人間の安全保障の観点から、深刻化している気候変動による影響への現地レベルでの適応能力の強化を図ります。更にエジプトでは、暴力的過激主義の防止を通じてアフリカの持続的な平和と安定を実現するために、紛争解決及び平和維持・構築のためのカイロ国際センターへの長年にわたる、また第8回アフリカ開発会議(TICAD8:Tokyo International Conference on African Development)の重点分野にも合致した支援も引き続き行います。

アジア・太平洋地域ではアフガニスタン、スリランカ、パキスタン及びフィリピンにおいて、4件のプロジェクトを実施します。アフガニスタンでは、ABADEI (Area-Based Approach to Development Emergency Initiatives)プログラムの一環として、学校や病院への再生可能エネルギーの導入、コミュニティレベルでの職業訓練、特に女性への裨益に重点を置いた中小企業支援などを行います。パキスタンでは洪水の被害にあったコミュニティの復興を支援します。複雑な社会経済状況下にあるスリランカにおいても、女性の経済的エンパワーメントと環境に配慮した農業技術の導入に焦点を当てて、脆弱な小規模農家の生計向上に取り組みます。

テーマ別案件としては、「気候の約束(Climate Promise)」イニチアチブを通じ、アジア・太平洋7カ国、中東・中央アジア4カ国、中央・東欧州1カ国、アフリカ4カ国の計16カ国・地域において、パリ協定の目標達成に向けて、各国・地域の気候変動にかかる排出削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」を具体的な行動に移すための支援を行います。それぞれの国・地域にあったクリーンエネルギー資源・技術の促進、ネットゼロ(脱炭素)達成への気候変動対策の加速、及び既に気候変動や災害の影響を受けているぜい弱なコミュニティの適応対策能力強化等を行います。

また、「ビジネスと人権」をテーマとする案件においては、アフリカ1カ国、アジア6カ国、欧州・中央アジア3カ国、中東2カ国、中南米2カ国の計14カ国において、各国政府や企業等による「ビジネスと人権に関する国連指導原則」の実施を通じ、「責任あるビジネス」の実現を推進します。特に、日本企業を始めとする各国企業が、サプライチェーン上での企業活動による人権に対する有害な影響を評価・防止・緩和するためのプロセスである「人権デュー・ディリジェンス」を、事業活動を行う各国の状況に応じた形で適切に実施できるよう支援します。

新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership (ADP)」では、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT基金)などとの協働のもと、アジア・太平洋4カ国・地域、アフリカ5カ国・地域の計9カ国・2地域において、結核、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)対策に係わる医療技術へのアクセスと提供を確保するために必要な政策・規制の策定や人材、システムの開発を支援します。こういった医療システムの強化を通じ各国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に貢献するとともに、デジタル・ヘルスソリューションの拡大と、南南交流・協力の促進などによる、将来の新たなパンデミック(感染症の世界的流行)に備えるための支援を実施します。

UNDPでは、ニューヨーク本部や各国事務所、駐日代表事務所において日本人約150名(2023年3月現在。職員、コンサルタント、国連ボランティア、インターン等)が活躍しており、2022年度補正予算からの本拠出に関係するプロジェクトの計画策定・実施にも関与しています。