ダイビング界のスター、トルコで水資源を守るための行動を呼びかけ

2022年12月19日
diving
Photo: Şebnem Coşkun, Anadolu Agency

フリーダイビングの世界記録保持者で、国連開発計画(UNDP)トルコ事務所とともに海洋資源の保護活動家としても活躍するサヒカ・アークメンさんは2022年12月2日、水質汚染が海洋生態系にもたらす脅威について人々の関心を高めるため、地中海でダイビングを行いました。プラスチックごみ、水質汚染、気候危機などの課題解決には、地域レベルでの行動と、コミュニティの連帯が欠かせないということを周知するため、UNDPがハタイ県サマンダー近くのフルラヴク岬でこのイベントを開催しました。

「私たちの海は呼吸ができなくなっています」と訴えたアークメンさん。「水質汚染、海洋資源の乱獲、外来種、気候変動など、人類が引き起こしたこれらすべての問題が、海洋生物に必要な酸素を奪っています。私たちは今日、アシ川の汚染に警鐘を鳴らしていますが、その脅威ははるかに大きいものです。水中の生物を危険にさらすことは、すべての人類を危険にさらすことでもあります。この地球規模の問題に歯止めをかけるには、地域レベルで行動していかなければなりません」と話しました。

この日、アークメンさんはダイビングに先立ち、サマンダーの地中海沿岸で、子どもたちが「ごみゼロ」について学ぶことを目的とした清掃イベントに参加しました。このイベントには小学生47名が参加し、1時間で40キロのごみを回収しました。

この活動は、日本政府から約180万米ドル(約2億円)の資金拠出を受けて実施しているプロジェクト「ハタイの気候行動」の一環で行われたもので、トルコ南東部のハタイ県における気候変動への対策と海洋生態系の保護を目的としています。本事業は、UNDPトルコ事務所、トルコ政府の環境・都市化・気候変動省、ハタイ県が共同で実施しています。

 

アシ川はレバノンを源流とし、シリアを北上してトルコに到達します。全長571 kmのアシ川にはごみが堆積し、さらにそこから地中海へとごみが流れ込んでいます。アシ川を保全するこのプロジェクトは、廃棄物管理やリサイクルの改善など、UNDPが2019年にハタイ県を支援して作成された地域気候行動計画に定められた優先的な対策に取り組んでいます。

「ハタイの気候行動」には3つの目的があります。1つ目は、サマンダーで地中海に注ぐアシ川からごみを取り除くこと。2つ目は、規制改善と市民教育を通じて川へのごみの投棄を減らすこと。3つ目は、川一面に繁殖して滞留し、水質を悪化させ、地元の漁業経済を脅かしている外来種の水草ウォーターヒヤシンスが増殖するのを防ぐことです。

このプロジェクトは、2019年に約400万米ドルをかけてハッサに建設された下水処理施設をはじめとして、ハタイ県におけるこれまでのUNDPの活動を基礎としています。6万人にサービスを提供するこの下水処理施設の設置により、未処理の下水がアシ川にそのまま流れ込むことがなくなりました。

トルコでのアシ川保全の取り組みは、UNDPが「気候の約束(Climate Promise)」イニシアティブのもと、100か国以上で支援を展開している気候変動対策のための活動の一例です。気候の約束は、パリ協定の目標達成に向けて各国が自国の目標や約束を実現するための世界最大のイニシアティブです。


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国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 registry.jp@undp.org