未来の協力モデルの創出
日本の技術とパートナーシップがアラル海地域を変革
2025年11月13日
在ウズベキスタン日本国大使館の宇野希美二等書記官がカラカルパクスタン共和国の遠隔地域を10月6と7日に訪問し、日本政府が資金提供するUNDPのプロジェクト「アラル海地域における気候に対して強靭な農業を通じた自立支援計画」で生活を改善することができた住民と面会しました。 宇野書記官は「プロジェクトを通じて、人々の生活が改善されたことを嬉しく思います。今後も協力を続け、この地域の人々の生活をサポートしていきます」と述べました。
本訪問は、ファルハッド・エルマノフ カラカルパクスタン共和国閣僚会議議長との会談から始まりました。両者は協力の成果について意見交換し、議長は日本の気候レジリエント技術によって住民の生活が目覚ましく改善されたと述べました。宇野書記官は支援への感謝を述べ、本プロジェクトが効果的なパートナーシップの好例であることを強調し、今後の協力継続への意欲を示しました。
会合の後、一行はケゲイリ地区ココゼク集落にある第38学校分校舎の改修完了式典を訪問し、伝統衣装を着た児童たちが来賓を歓迎しました。「冬は気温が氷点下10度まで下がり、子どもたちはジャケットを着たまま授業を受け、体調を崩していました。今では建物が全面改修され、水道設備、太陽光パネル、毎時500リットルの淡水化装置、新しい暖房設備が整っています。」と教員は説明しました。
ケゲイリ地区の訪問は続き、「サイム・オイ」農家のオミルニヤズ・トレニヤゾフさんが新設された果樹園を案内しました。食料・経済の安全保障強化のため、本プロジェクトの支援により、パイロット地区に果樹園が10か所設置され、1ヘクタールあたり800本のリンゴやナシの苗木が植えられ、人工池から水を汲み上げるポンプ付き点滴灌漑システムや、木の手入れをするための最新の噴霧器が導入されています。 「点滴灌漑は根元に直接水分を届けることで、水の使用量を10分の1に抑えます。この土地の乾燥した気候では、こうした技術なしには果樹園は維持できません。」とオミルニヤズ氏は説明します。
「ボルリ・オイ」農場では、アイムルザ・クトリムラトフ氏により構築された革新的な閉鎖型水循環管理システムである、「排水から成長へ(From Drainage to Growth)システム」が導入されました。本システムでは、以下の仕組みで農業用水を再利用しています:
- 人工池に水を集めて魚やアルテミア(養殖魚の餌になるカニの仲間)を養殖
- 養殖の排水は1日あたり1000立方メートルの処理能力を持つ逆浸透膜により浄化
- 浄化された水は点滴灌漑によって農地に再供給
- 本システムで必要なエネルギーは15キロワットの発電能力を持つ太陽光パネルによって補完
成果:果樹園と野菜畑それぞれ1ヘクタールを整備
この結果に対してアイムルザ氏は以下のように語りました。「排水を食料と収入に変えることができました。これは、無駄のない循環型モデルです。」
さらに、ケゲイリ地区中心部のグリーン農業輸出ファーム(Green Agro Farm Export)有限会社を訪問。アジベク・ジュマナザロフ代表が、カリフォルニアミミズを使った液体バイオフムス(ミミズが原料の有機堆肥)の生産現場を紹介しました。年間600トンの生産能力を持つ設備が導入されており、ジュマナザロフ代表は「需要は非常に高く、農家が列をなして購入に来ます。常勤職員は4名、化学肥料を使わずに作物を育てる支援をしています」と語ります。
続いてチンバイ地区では、起業家ノディーラ・スルタノワさんが営むコーンパフ製造工房を訪問しました。ノディラさんには、UNDPのプロジェクトを通じて、地元で採れた有機トウモロコシを原料に、年間300トンの製品を生産可能な製造ラインが提供されました。 「自分の事業を持つのが夢でしたが、設備を購入する余裕がありませんでした。今では生産を開始し、地域全体に販売することができています。4人の女性をフルタイムで雇用し、地元農家からトウモロコシを仕入れています。」とノディーラさんは語ります。
パシェンタウ集落では、水処理施設の改修状況を視察。この施設は1985年に建設され、以前は100世帯向けの低容量施設でしたが、現在は新しい水道網が整備され、300世帯に水を届けています。 「40年間、井戸の塩水を飲んで皆調子を崩していました。今ではすべての家庭に清潔な水が届き、1,897人が健康被害から解放されました」と高齢の住民は語ります。
2日目は、ヌクス地区の第13幼稚園の訪問から開始。この地域で初めて導入された日本の「浄化槽」技術による排水処理システムを視察しました。 「301人の園児が、1日約10立方メートルの水を使用しています。以前は定期的に浄化槽トラックを呼ばなければならず、費用も環境負荷も大きいものでした。」と園長は説明。新しいシステムは、1日あたり10立方メートルの処理能力を有し、微生物を利用して排水を自然な方法で処理しています。処理水は、灌漑や技術的な用途に再利用され、予算削減と環境保全に貢献しています。
ヌクス地区中心部では、トマトペースト製造施設「Aqamangit」が7人の雇用を創出。訪問を行ったオンガルバイ・マンベトムラトフさんの工房では、地元の建設産業のニーズのための排水管や建具の製造が行われています。サマンバイ集落では、代表団は「一村一品アラル(OVOP Aral)」の事務所を訪問。日本の「一村一品」コンセプトを導入し、地域ブランドの開発を推進しています。さらに一行が訪問した燻製魚製造施設「Nukus Balik」では、地元住民12人が雇用されています。
代表団はタキルコル集落も訪問。本集落では、次の事業を視察しました。
- アルジベク・ナメトフさんが経営するアサドベク・ダニヤール農場。800本のナシの木と点滴灌漑を有する果樹園があります。
- グラサル・レイムバエワさんが経営する養蜂場。巣箱の規模を広げることに成功しました。
- コルガンバイ・アイティモフさんの、農業機械による耕作支援
- カリベク・トレウオフさんが開発した、年間を通じて耕作可能な温室栽培
- ナシバ・ジョルダスバエワさんが100㎡の敷地で始めたバイオフムス生産所。彼女は3人の子どもを育てながら、地元農家や家庭に有機肥料を販売しています。
すべての数字の裏側には、人々の名前があり、家族があり、人生を変えた物語があります。 寒さに震えずに済む学校の子どもたち、清潔な水を飲めるようになった家族、起業家へと変身した女性たち、再び家族を支える誇りを取り戻した男性たち。これらの成功事例は他地域にも広がり、同様の取り組みを促進しています。小規模ながらも戦略的な介入が、元来の対象地域を超えて人々の生活を変え、レジリエンスを築く力を持っていることが証明されています。