人と自然、タンザニアの原動力

TICAD9インタビューシリーズ03 - 堀場千鶴 UNDPタンザニア

2025年8月28日
A large group of diverse people posing together in a modern office setting.

 

2025年8月にアフリカ開発会議(TICAD)が開催されることを記念し、アフリカで働いている日本人UNDP職員の方々にインタビューを行いました。今回はインタビュー企画第4回目として、タンザニアでプログラムアナリストとして勤務している、堀場千鶴さんに話を伺いました。


タンザニアの魅力や印象について教えてください。

人と自然

タンザニアの最大の魅力は「人」と「自然」だと思います。

タンザニアの人々は非常に謙虚で思いやりがあり、新しい人を温かく迎え入れ、困っているときは積極的に助けようとしてくれます。こうした姿勢は日本人の気質にも通じているように感じます。

また、タンザニアはケニアに続く東アフリカの成長国として大きな可能性を秘めているといわれています。これは、私が日々現地の人々と接する中で強く感じることでもあります。特に、若者や女性を含む多くの人々が、社会課題の解決に高い意欲を持っている点が印象的です。彼らはさまざまな形で課題解決に取り組んでおり、彼らの意識が経済成長を後押ししているのだと感じます。このように、人々の思いやりや助け合いの精神と高いモチベーションこそが、タンザニアの大きな魅力の一つだと実感しています。

自然面では、ザンジバル島の透明度の高い海や、世界的にも有名なセレンゲティやンゴロンゴロなどの国立公園、自然保護区、動物保護区が存在し、豊かな植物やキリン、ライオン、ゾウ、ヒョウ、バッファローなどの野生動物が広大な自然環境の中で保護され、観光資源としても大きな価値を持っています。加えて農業や漁業も盛んで、野菜や魚介類はとても新鮮で味わい深いように感じます。またタンザニアの北東部にあるキリマンジャロ山はコーヒーの産地として有名です。

タンザニアのこうした豊かな人材と自然資源が、今後の更なる経済成長や発展の大きな原動力になると考えます。

安全面

昼間は比較的安全で、海外からの観光客も多く訪れています。日本では、確認できるタンザニアに関する情報が限られているかもしれませんが、正しい情報と対策があれば安全に生活可能です。

Workers in hard hats and vests install solar panels under a clear blue sky.

 

アフリカ・タンザニアで働こうと思ったきっかけを教えてください。

「本当に現地の人々に届く支援」

タンザニアで働こうと思ったきっかけは、ニューヨークの国連日本政府代表部での経験にあります。当時、中南米諸国の安全保障やアフリカ諸国の平和構築などを担当していました。決議や提言の執筆に携わる中で「本当に現地の人々に届く支援」とはどのようなものであるのかを知りたいという思いが強まりました。

また、アフリカには「アフリカン・ウェイ」と呼ばれる独自のやり方があるときき、それを理解したいと考えたことも大きな動機でした。

「平和の秘訣」

他にも、タンザニアは独立以来紛争を経験せず平和を維持してきた国であり、その「平和の秘訣」を学ぶことで、今後の平和構築や経済発展に向けた取り組みに活かせると感じたことが、赴任を決意した理由でもあります。

Group of people assessing a hillside with several holes, surrounded by trees and mountains.

 

主な業務内容について教えて下さい。

UNDPタンザニア事務所の自然・エコシステムチームのプログラムアナリストとして勤務しつつ、平和構築・安全保障分野にも携わっています。

具体的な業務は大きく3つに分かれています。

新規プロジェクトの企画・立案

現地の状況を把握するため各地を訪問し、地域住民や現地政府、関連機関から直接情報を収集します。その上で、ニーズ、課題を分析し、現地の文脈に合い、プロジェクト終了後も自走できる持続可能な解決策を設計します。この際、現地の優先事項やノウハウも考慮し、協働できる形にまとめることを重視しています。所属チーム分野に加え、過去の国連代表部での経験を生かし、防衛省や警察、PKOセンターへの研修支援、女性・平和・安全保障(WPS)関連の取り組みなどにも関わっています。

既存プロジェクトの運営・評価

密猟防止や違法野生生物取引対策など、長期にわたるプロジェクトの進捗をモニタリングし、計画通り実施されているか、成果目標が達成されているかを確認します。遅れや課題があれば改善策を検討し、評価・報告を行います。

パートナーシップ構築と資金調達

タンザニア政府、日本含む他国政府、国際機関、民間財団など幅広いパートナーと連携し、技術・財政支援を確保します。プロジェクトによっては、タンザニア政府や機関が予算を拠出し、UNDPが実行機関として共同で実施する場合もあります。

こうした業務全般に共通する特徴は、現地のニーズを的確に把握し、現地の人々が主体的に運営・改善を続けられる仕組みを作ることです。

A woman in a white shirt converses with a uniformed officer in a formal setting.

 

堀場さんの携わっているプロジェクトのアプローチの特徴などあれば、教えてください。

現地の文脈に沿った持続可能な解決策を重視しているのが特徴です。プロジェクトを立案する際は、自分の足で現地に行き、現地の人々、政府関係者、関連団体から、現状やニーズについて直接話を聞きます。そうして、「今この地域で一番必要なことは何か」をしっかり把握します。プログラムには、必要な知識やスキルを身につけてもらう研修を行ったり、経済的に自立できるようなサポートも組み込みます。また、最新の技術や方法を導入する場合も、「この地域で本当に使えるか」「続けられるか」を必ず確認します。そうすることで、プロジェクトが終わったあとも、現地の人たちだけで運営や改善を続けられるような仕組みを作るよう心掛けています。

こうした姿勢は自然保護や観光分野だけでなく、平和構築や安全保障のプロジェクトにも共通しており、常に現地の声を出発点にした持続的なプロジェクトにすることを大切にしています。

 

日本はどの様にタンザニアの課題に関わっていけると思いますか?

また、日本が関わっていく重要性などがあれば教えてください。

タンザニアと日本の協力には大きな意義があると考えています。

タンザニアは東側ではインド洋に面し、西側では複数の内陸国と国境を接する地理的条件を持ち、東アフリカ地域の経済・平和分野でリーダー的な役割を担っています。

こうした地理的・政治的特性から、タンザニアは東アフリカ市場への玄関(ゲートウェイ)として、日本企業にとっても戦略的な拠点になり得ます。日本の民間企業がタンザニアを足がかりに、周辺国へ事業を拡大する可能性は大きく、今後の民間協力の広がりが期待されています。

また、日本はテクノロジー、教育、防災などといった分野で強みを持っています。たとえば、テクノロジー分野ではデジタル化やスマート農業・観光など、教育分野では人材育成や職業訓練、防災分野ではインフラ整備や災害対策などが協力の余地として挙げられるのではないでしょうか。これらの分野で日本の知見や技術を活かせば、タンザニアの経済成長や地域発展を加速させることができます。

日本とタンザニアがそれぞれの強みを持ち寄り、共同で課題解決に取り組むことが、両国にとっての利益だけでなく、地域全体の安定と発展にも繋がると考えています。

 

堀場千鶴 | UNDPタンザニア事務所 プログラムアナリスト

在フィジー日本国大使館の専門調査員として政務・経済・広報文化に携わった後、国連広報センターにて政策の戦略的発信や、国連日本政府代表部にて平和構築及び安全保障に関する仕事に従事。

2025年2月より、JPOとして、UNDPタンザニア事務所にて平和・安全や自然・エコシステムに関するプロジェクトの立案・実行・評価、また資金調達とパートナーシップ構築を推進している。

聞き手:直井ひな TICAD Unit