日本とアフリカをつなぐ共創の開発協力

2026年2月25日
Group of professionals posing for a photo in a modern lobby with a tall plant and a colorful painting.

エチオピア・アディスアババのアフリカ連合委員会(AUC)にて若者・女性担当チームとの面談

Photo: Chika Kondoh

世界に存在する不平等と向き合いながら、レジリエンスをもって行動する人々に寄り添い、可能性を社会の力へと変えていく─TICADプロセスを支えてきたUNDPアフリカ局 TICAD連携専門官の近藤千華さんに、UNDPで働くやりがいとJPO応募を検討する方々に向けた実用的なアドバイスを伺いました。


 

JPO試験のためにどのような準備をしましたか? 

JPOは過去4回受験しました。結果が中々出ない中で、まず自分の強みとこれまでの経験を徹底的に洗い出し、それを国連の文脈でどう見せられるかを整理しました。応募書類は国連で働く先輩に確認してもらい、客観的な視点で修正を重ねました。また、様々な方に話を聞き、ポストごとに求められる経験や知識もリサーチしました。二次試験に向けては、コンピテンシーベースインタビューについて経験者に相談し、具体的なエピソードの構成や伝え方を重点的に準備して臨みました。 

国連で実感:基礎的なビジネススキルの普遍性 

JPOでの経験は、国連だから特別な作法が必要というより、日本企業で培った基礎的なビジネススキルが国際機関でも十分に通用することを実感する機会でした。報連相を徹底すること、上司や意思決定者の立場に立って考えること、報告書の読者や目的を常に意識すること、効率性や成果を言語化しプレゼンできる力は、現在の業務の土台となっています。一方で、終身雇用ではない国連では、自身の役割が組織戦略の中でどう評価され、どの方向性に貢献できるのかを意識し、主体的にキャリアを設計する視点が身についたことも大きな学びです。 

 

Two panelists seated on a stage with UNDP banners; a monitor displays a video call.

UNDP主催 JPOキャリアセミナーに登壇する筆者

一人ひとりの力をつなぎ、社会全体の変化へ─UNDPで働く意義とは? 

私がUNDPで働くことに強い魅力と意義を感じている理由は、「生まれた土地や国、置かれた環境によって、本来持っている能力や意欲とは無関係に、貧困や紛争、教育機会や働く場へのアクセスが制限されてしまう不平等」が、今なお世界に存在している現実を知ったことに端を発しています。 

政治的・社会経済的に弱い立場に置かれている人々が、自らの力では変えがたい構造の中で困難に直面している一方で、世界にはそのような制約の中でも驚くほどのレジリエンスをもって日々を生き、社会をより良くしようと努力している人々がいます。私は、そうした人々に応えられる社会と世界を創ること、そして「世界は本来対等である」ということを、比較的恵まれた環境にある日本の人々にも伝えていきたいと考えるようになりました。 

UNDPで働くやりがいの一つは、「一人ひとりの力は小さくても、志を同じくする人々がつながれば、小さな変化がやがて大きな変化につながり、世代を超えて社会を動かし得る」と本気で信じ、それを実践している組織である点です。UNDPには、既存の枠組みにとらわれずに課題を捉え、アウト・オブ・ボックスで新しい解決策に挑戦する風土があります。また、困難を単なる障害としてではなく、次の機会へと転換しようとする哲学が組織全体に根付いています。 

日々の業務では、多国籍で多様なバックグラウンドを持つ同僚たちと協働し、一つの目標に向かって試行錯誤を重ねながら形のないものを形にしていく経験を重ねています。業務量は多く、決して楽ではありませんが、互いの状況を尊重し合いながらワークライフバランスを意識し、自身のペースを調整して仕事を進められる点も、長期的に働く上での大きな魅力だと感じています。 

 

Group of people in a workshop on a terrace, presenter at front with mountains in the background.

メディアを招待して定期的に行っているパネルディスカッションイベントでモデレーターを務める筆者(JPO当時)

JPO時代の経験:支援の連鎖から生まれる力 

特に印象に残っている業務の一つが、当時JPOとして国連常駐調整官事務所でキャリアをスタートした時、パプアニューギニアの農村で、ほぼ一人で植林活動を続けていた若者を、国連のユースSDGsチャンピオンとして任命したことです。彼は学歴も中学卒業までで、決して恵まれた環境にあったわけではありません。しかし、自分にできることとして地道に植林を続けていました。彼を国連の枠組みで可視化し、テレビ・ラジオ・新聞といったメディアへの露出やイベント登壇の機会をつくる中で、彼自身が大きな自信を得ていきました。その結果、活動は個人の取り組みにとどまらず、周囲の若者やコミュニティを巻き込みながら広がっていきました。さらに、「自分たちにも何かできることがあるのではないか」と考え、行動を始める他のユースが現れたことに、支援の連鎖が生まれる力を実感しました。 

 

模擬アフリカ連合(模擬AU)会議ローンチイベント

「声を持ちにくい立場にある人々の思いを、社会の中核へと届ける」 

同様に、日本においても、アフリカと日本の関係をより良くしようと、草の根で活動している多くの若者と対話する機会があります。私は、こうした前向きな取り組みや挑戦が、もっとメディアや公の場でハイライトされることで、社会全体を動かす大きなうねりにつながると考えています。 

その象徴的な経験が、TICAD9に向けたユース提言のプロセスです。私たちのチームは約2年間にわたり、アフリカと日本の若者団体をつなぎ、Future Designの手法を取り入れた未来志向の課題発見と政策立案のプロセスに伴走しました。若者自身が主体的に考え、対話を重ね、政治家、官僚、経済団体、メディアを巻き込みながら議論を深めていった結果、ユースの提言が正式に採択され、最終的に首相にも認識していただくに至りました。この経験は、「声を持ちにくい立場にある人々の思いを、丁寧に束ね、社会の中枢へと届ける」というUNDPの役割を体現するものであり、大きな感動と達成感をもたらしました。 

UNDPで働く原動力は、まさにこうした瞬間にあります。目の前の一人の変化が、やがて社会全体の変化へとつながっていく。その可能性を信じ、多様な人々と共に未来を創っていけることこそが、私にとってUNDPで働く最大の魅力です。 

国際機関での勤務を志している方、そしてJPOに今後挑戦する方々へメッセージをお願いします。 

JPOに挑戦する過程では、自分の経験や語学力が足りないのではないかと不安になることもあると思います。私自身、「今できること・目の前にあることに全力で取り組んでいけばいつか道は開ける」と信じてきました。国連の仕事に必要なのは、正解を知っていることよりも、相手の声に耳を傾け、粘り強く考え抜き行動をとり続ける姿勢です。迷いがあっても一歩踏み出せば、その経験自体が必ず次につながります。ぜひ自分の思いを信じて挑戦してください。

 


Person wearing a beige cardigan and white top with a blue lanyard against a light background.
 
近藤千華 UNDPアフリカ局TICAD連携専門官

日本とアフリカを結ぶTICADプロセスにおいて、政策対話、官民連携、ユース参画、広報・アドボカシーを担当。日本政府、国際機関、民間、若者団体、メディア等の多様な関係者をつなぎ、共創型の開発協力を推進。TICAD9では日・アフリカの若者提言プロセスを主導し、政策形成への反映を支援。人の可能性を軸とした持続可能な開発の実装に従事。 

過去のインタビュー記事はこちらから:

UNDP邦人職員リレー・エッセイ「開発現場から」 第43回 パプアニューギニア国連常駐調整官事務所 近藤千華さん 

当時JPOとしてパプアニューギニア国連常駐調整官事務所で勤務していた時の仕事内容や国連を志した経緯に加え、家庭・育児の両立についても語られています。 

TICAD連携専門官が見る今のアフリカ。持続可能な発展に向けて、ビジネスが果たす役割とは 

アフリカの開発現場でのご経験や、TICADそしてUNDPの役割について詳しくお話しいただいています。