イベント報告:アフリコンバース2025 #4

AIと共に飛躍するアフリカ:最速で成長する大陸がAIのポテンシャルを活かす時

2026年2月3日
Photo: UNDP

アフリコンバース 2025 #4「AIと共に飛躍するアフリカ:最速で成長する大陸がAIのポテンシャルを活かす時」が、2025年12月12日、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。本イベントは、第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)のフォローアップとして、国連開発計画(UNDP)、国連大学(UNU)、および国際協力機構(JICA)の共催により実施されました。 

本イベントでは、アフリカの若く急速に増加する人口を背景に、AI教育、人材育成、エコシステム構築に焦点を当てながら、アフリカにおけるAIの可能性と、包摂的なデジタル変革に向けた日本の支援について議論が行われました。 

アフリカと日本からオンライン参加者437名、対面参加者45名の学生、研究者、起業家、イノベーター、ビジネス関係者が参加。AIがアフリカの課題解決や持続可能な開発を推進するうえで果たす役割、そしてテクノロジー、農業、イノベーションが後押しする起業分野における日本とアフリカの協力の可能性が示されました。


登壇者:

  • チリツィ・マルワラ、国連大学学長兼国際連合事務次長
  • 川瀨 太郎、外務省 アフリカ部アフリカ第一課長
  • 加藤 健治、経済産業省 通商政策局 アフリカ室長
  • 平川恵鈴、東京大学松尾・岩澤研究室グローバルチームリーダー
  • ブライアン・T・チリマ、ハラレ工科大学情報セキュリティ&アシュアランス学生
  • ロバート・オップ、UNDPチーフデジタルオフィサー
  • 山田智之、JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室長
  • 西郡琴音、株式会社Ready to Bloom 代表取締役社長
  • レイチェル・キムウェリ・マクンバ、株式会社KiAIイノベーション&新興市場研究者

モデレーター:

  • 上野修平、JICAアフリカ部次長(計画・TICAD推進課担当)

開会挨拶

冒頭では、国連大学学長であり国連事務次長を務めるチリツィ・マルワラ氏がビデオメッセージで挨拶を行い、アフリコンバース 2025への参加者を歓迎しました。マルワラ氏は、アフリカが開発の道筋をつける上で人工知能(AI)が果たす役割が急速に拡大していることを強調しました。AIはあらゆる分野を変革しており、アフリカにとっては、長年の開発課題に対処し、制度を強化し、持続可能な成長を推進するための独自の機会をもたらしていると述べました。また、アフリカの若年人口の増加に言及し、TICAD 9での議論を踏まえつつ、AIが包摂的で、信頼性が高く、人間中心のものであり続けるためには、若者への投資、倫理的なAI枠組みの整備、そして特にアフリカと日本の間の国際的パートナーシップの強化が重要であると強調しました。

続いて祝辞を述べた外務省アフリカ部アフリカ第一課長の川瀬太郎氏は、AIを包摂的かつ持続可能な開発のために活用するため、アフリカと協力していく日本のコミットメントを改めて表明しました。川瀬氏は、TICAD 9で共有されたビジョンと横浜宣言2025に言及し、安全で人間中心、かつ信頼性の高いAIシステムの必要性を強調しました。さらに、日本がAIとデータサイエンス分野における能力強化、若者のスキル育成、そして政府、学術界、民間セクター間の連携強化を通じて、アフリカのデジタル・トランスフォーメーションを支援してきたことを紹介しました。また、アフリカ主導の枠組みである「アフリカ・デジタル・コンパクト」について、包摂的で主権を尊重し、イノベーション主導のデジタルな未来に向けたアフリカ自身のビジョンを力強く示すものとして評価しました。アフリカ主導のデジタル戦略への日本の支援を再確認し、同氏は、本セッションが若者と女性をエンパワーし、包摂的成長を促進し、強靭な社会を強化する協力のための具体的な協力アイデアを生み出す場となることへの期待を表明して締めくくりました。

続いて、経済産業省 通商政策局 アフリカ室長の加藤健治氏が登壇し、AIを産業発展と経済成長の重要な鍵として位置づけ、開会式を締めくくりました。加藤氏は、経済産業省が東京大学松尾研究室およびUNDPと連携し、産業発展と経済競争力を牽引できるアフリカの次世代AI・データサイエンス人材の育成に取り組んでいることを強調しました。さらに、日本企業、アフリカのスタートアップ・現地企業間の連携を促進することでビジネス投資の活性化を目指す「日アフリカ産業共創イニシアチブ」といった取り組みにも言及しました。これらの取り組みは、AI人材を実際のビジネス応用と結び付けることで、双方に利益をもたらす産業共創の促進を目的としています。また、同氏はケニア、ナイジェリア、南アフリカなどの国々における国家AI戦略の策定や、データガバナンスとインフラ強化への取り組みにも触れ、デジタル変革の中核技術としてのAIに対するアフリカの関心の高まりを指摘しました。経済産業省としても、国内事業者による競争力あるAI開発に向け総合的に取り組んでいることに触れつつ、 パートナー国とAIエコシステムとの共創関係の構築などの検討を進めていきたいとの考えを示しました。最後に、日本はアフリカの戦略と優先課題に沿った共創のパートナーであることを強調し、より深い協力を通じ、国際的なAIの発展にも日本とアフリカが貢献できるとの期待を示しました。

導入ディスカッション

平川恵鈴氏は、東京大学松尾・岩澤研究室が運営するグローバル・コンシューマー・インテリジェンス(GCI)・プログラムについて紹介しました。同プログラムが、2014年の開始以来、データサイエンスや機械学習、ならびに実社会におけるビジネス応用に重点を置いてきたことが強調されました。

ブライアン・T・チリマ氏は、GCIプログラムの参加者として、同プログラムを通じて習得したスキルが、アフリカの開発課題にどのように応用できるかについて共有しました。同氏は、特に脆弱国や新興経済国において、AIが労働力の効率化、人材の最適なマッチング、予測分析の高度化に貢献し得る可能性を指摘しました。また、これらのスキルを自身のキャリアに活かすだけでなく、次世代のアフリカ発のAI主導型企業の育成にも活かしていく決意を示しました。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、「AIと共に飛躍するアフリカ ― AI 人材育成とエコシステム強化」をテーマに、学術界、開発機関、民間セクター、ならびに若者のイノベーション分野から専門家が集いました。JICAアフリカ部次長(計画・TICAD推進課担当)の上野修平氏の司会のもと、人工知能を政策目標から、アフリカ全域における実践的で包摂的なインパクトへと転換する方法について議論が行われました。パネリストからは、AI人材の育成パイプラインの構築、データ・エコシステムの強化、イノベーション主導型起業の促進に関する実践的な経験が共有されるとともに、政府、学術界、民間セクター、国際開発機関の連携の重要性が強調されました。また、日本の開発協力アプローチおよびTICADプロセスが、責任あるAIの導入、能力強化、持続可能なデジタル・トランスフォーメーションをアフリカで前進させるための重要なプラットフォームであると示されました。

株式会社KiAIイノベーション&新興市場研究者であるレイチェル・キムウェリ・マクンバ氏は、AIはアフリカが開発を加速させるためのまたとない機会であることを強調しました。AIによる雇用の喪失や悪用に対する一般的な懸念に言及しつつも、AIはむしろ日常的な課題を解決するためのツールとして理解されるべきであると強調しました。農業分野における具体的な事例を挙げながら、AI搭載ツールにより、農家が携帯電話を通じてリアルタイムの天候予報、害虫管理に関するアドバイス、作物に関する知見を入手できるようになり、「農家の手のひらに小さな専門家を置く」ことが可能になると説明しました。

さらに同氏は、AIが若者や起業家にもたらす変革的な可能性について強調しました。適切なスキルとパートナーシップがあれば、アフリカ各地の若手イノベーターが、大陸のどこからでも国際的に競争力のある製品を開発できると述べました。AIは従来の参入障壁を引き下げ、小規模なチーム、あるいはノートパソコンとアイデアを持っている個人であっても、地域および国際市場の双方に向けたソリューションを構築することを可能にすると指摘しました。最後に、日本とアフリカの政府、学術界、研究機関、産業界間における連携の重要性を強調しました。

国際協力機構(JICA)ガバナンス・平和構築部STI・DX室長である山田智之氏は、人材育成こそがアフリカにおけるAIの未来の基盤であると強調しました。TICAD 9の前後に発表されたアフリカにおけるAIに関するJICAのランドスケープ・レポートに言及し、農業分野におけるAI活用だけでも、生産性が最大30%向上した事例が確認されており、推定3,300万人にのぼるアフリカの農家全体に波及する可能性があると述べました。一方で、アフリカはAIから大きな恩恵を受け得る立場にあるにもかかわらず、世界のAI人材のうち、アフリカ出身者は現在約1%にとどまっているという大きな不均衡を指摘しました。

この課題に対応するため、山田氏は、JICAが東京大学松尾・岩澤研究室をはじめとする大学との連携を通じて、AI教育を支援していることを紹介しました。また、インフラ、特にデータとコンピューティング能力の重要性を強調し、衛星データとAIを組み合わせて作物の成長と農業生産性を監視する方法についても紹介しました。さらに、AIによるソリューションは現地に根ざしたものでなければならず、アフリカの高等教育機関、民間企業、教育分野のスタートアップ間の連携強化が、持続可能なAIエコシステムの構築に不可欠であると述べました。

開発の観点から、国連開発計画(UNDP)のチーフ・デジタル・オフィサーであるロバート・オップは、AIを持続可能な開発目標(SDGs)達成を加速させる強力な手段であると位置づける一方、その成功は複数の構造的課題に対処できるかどうかにかかっていると指摘しました。UNDPは約170か国で活動しており、その中でも「AIスプリント・イニシアティブ」を通じて、20か国以上のアフリカ諸国で、国家AI戦略やガバナンス枠組みの策定を支援する取り組みを展開していることを紹介しました。

オップは、データの可用性が主要な課題であると強調し、正確で代表性があり、かつ地域に即したデータがなければ、AIシステムは効果的に機能しないと説明しました。また、西アフリカのエウェ語や中部アフリカのリンガラ語など、現地言語のデジタル化を支援するUNDPの具体的な取り組みを紹介し、数百万人の話者が母語でデジタルおよびAIベースのシステムと対話できるようになっていると述べました。

また、アフリカにおける計算インフラの不足について言及し、大陸全体のデータセンター容量が世界全体の2%未満にとどまっている現状を指摘しました。これに対応するため、UNDPはアフリカの民間企業やグローバルなテクノロジー企業と連携し、手頃で持続可能な計算能力の拡充に取り組んでいます。MicrosoftやAWSなどの企業とのパートナーシップを通じて、イノベーターの皆様はAIソリューション開発のためのコンピュートクレジットを受け取ることができる一方、UNDPは、グリーン・コンピュート・コアリションなどのイニシアチブを通じて、アフリカ企業が長期的で環境に配慮した計算インフラを構築できるよう支援しています。このアプローチは、短期的な援助にとどまらず、持続可能で地域が主導するビジネスモデルへの転換を目指すものです。

加えて、UNDPの「timbuktoo」イニシアチブについても紹介し、大学を拠点としたイノベーションハブ(UniPods)や、アグリテック、ヘルステックなど分野別のテックハブを通じて、アフリカ全土のイノベーションおよびスタートアップ・エコシステムを支援していると述べました。これらのプラットフォームによって、アフリカのイノベーターの皆様はAI主導のソリューションの試行することができると同時に、スキル開発、メンタリング、資金調達の機会にもアクセスすることを可能にしています。

株式会社Ready to Bloom の代表取締役社長である西郡琴音氏は、同社のルワンダでの取り組みに基づき、民間企業の視点を共有しました。彼女は、同社が若いアフリカ人の方々と協働し、グローバル企業向けのAI訓練データを開発する一方で、収入創出やスキル育成の機会を生み出していることを説明しました。また、多くのアフリカ特有のデータセット、とりわけ現地語に関するデータセットは、世界的な需要が高いにもかかわらず依然として未整備であると述べ、地域に根ざしたデータの重要性を強調しました。

西郡氏は、AI開発は包摂的かつ倫理的で、地域の文脈に即したものであるべきだと指摘しました。その上で、同社が教育教材やAIモデルのローカライズを進めることで、学習成果や雇用可能性の向上につなげていることを説明しました。また、AIは一部の仕事を代替する可能性があるものの、責任ある設計が行われ、政府や地域機関と連携することで新たな機会を創出できると述べました。最後に、日本とアフリカ間のAI分野における協力は、従来の援助型アプローチではなく、相互尊重と責任の共有、そして長期的な協働に基づくべきであると締めくくりました。

結び

議論の最後には、地震工学のような高度で専門的な分野におけるAI活用から、日本の農業人口の高齢化を踏まえた日本とアフリカの農業者間の協働の可能性に至るまで、幅広いテーマについて参加者の皆様から質問が寄せられました。山田智之氏は、人間の専門性とAIツールの適切なバランスが不可欠であると述べ、伝統的手法と先端的AI技術が共存できる教育システムの必要性を強調しました。

パネリストは、雇用喪失への懸念を超えて、AIをイノベーションと包摂的成長の手段として積極的に活用する必要性を指摘しました。特に、アフリカと日本の強固なパートナーシップは、アフリカのイノベーターがアイデアを持続可能で拡張可能なソリューションへと発展させるために不可欠であると強調しました。セッションは、AIエコシステムの強化と、AIがアフリカの長期的な発展に実質的に貢献するための継続的な対話、教育、協力を呼びかける形で締めくくられました。

なお今回のアフリコンバース2025#4 で議論されたテーマを補完する形で、UNDP総裁補兼アフリカ局長のアフナ・エザコンワ は、ブログ「アフリカでのAIの好機:基盤を創り、未来を掴む」において、アフリカが自信と主権を持ってデジタル未来を築くための洞察を共有しています。