トルコにおける地域コミュニティ主導の取組を紹介
COMDEKSプロジェクトが示す、人と自然のための地域主導イノベーション
2026年8月25日
2026年7月7日から9日にかけて、経団連自然保護基金(KNCF)および経団連自然保護協議会(KNCC)のハイレベル代表団が、トルコ・サムスン県のクズルルマク・デルタを訪問し、GEF小規模助成プログラム(SGP)のCOMDEKSフェーズ4プロジェクトを通じて、地域コミュニティなどの多様な主体がどのように生物多様性保全、持続可能な生計向上、気候変動への強靭性強化に取り組んでいるかを視察しました。
クズルルマク・デルタは、ラムサール条約に基づく国際的に重要な湿地であり、ユネスコ世界遺産の候補地でもある、トルコ有数の生物多様性ホットスポットです。湿地、湖沼、氾濫原森林、砂丘、草地、農地が織りなす多様な景観モザイクは、渡り鳥をはじめとする豊かな野生生物の生息環境を提供するともに、農業、漁業、畜産を通じて地域住民の生計を支えています。
今回の3日間のミッションには、KNCF/KNCCの代表者に加え、日本国環境省、生物多様性条約(CBD)事務局、および複数の日本企業の関係者が参加しました。この訪問を通じて、生物多様性保全と地域の発展を実現するうえで、地域コミュニティ、市民社会、行政機関、学術機関、企業の連携の重要性が改めて示されました。
COMDEKSは、人と自然の共生社会を目指す「SATOYAMAイニシアティブ」の旗艦プログラムとして2011年に開始され、生態系と人間活動が共存する生産ランドスケープおよびシースケープ(SEPLS)において、生物多様性保全、気候変動への適応力向上、持続可能な生計、そして伝統的知識の活用を促進する地域主導の取組を支援しています。トルコでは、2011年からプロジェクトを実施しており、現在は日本の環境省およびKNCFの支援のもと、UNDPのGEF小規模助成プログラムを通じて11の相互に連携したプロジェクトが実施されています。
視察はクズルルマク・デルタ・ビジターセンターから始まり、参加者はデルタの生態学的重要性とCOMDEKSのランドスケープ戦略について説明を受けました。訪問期間中、代表団は生物多様性保全、持続可能な農業、女性のエンパワーメント、若者の参画、技術革新に取り組む多様なプロジェクトを視察し、地域の多様なステークホルダーと意見交換を行いました。
主要な訪問先の一つである「空にやさしい送電線プロジェクト(Sky-Friendly Powerlines Project)」では、高リスクの電力設備への絶縁対策を実施することで野鳥の感電死を減らすとともに、野生動物救護体制の強化や地域コミュニティおよび学校での啓発活動を進めています。同プロジェクトでは、飛翔・営巣する鳥類を保護するため、50本の高リスク電柱に絶縁材を設置しています。
また、デジタル技術が持続可能な農業に貢献している事例も紹介されました。有機ヘーゼルナッツ農園やトリュフ農園では、気候および灌漑モニタリングシステムが農家の効率的な水利用や気候変動への適応を支援しています。さらに、「自然にバランスを、製品に質を(Balance in Nature, Quality in Product)」プロジェクトでは、地元の企業や大学研究機関との連携を通じてデジタル害虫トラップや生物的防除手法を活用し、農薬使用量の削減と生物多様性に配慮した生産を推進しています。
「自然にバランスを、製品に質を」プロジェクト・マネージャーのF. Figen Ar博士は次のように述べました。「経団連代表団をクズルルマク・デルタにお迎えし、私たちのCOMDEKSプロジェクトをご紹介できたことを大変光栄に思います。害虫トラップのデジタル監視システムの提供を含む皆様からのご支援は、生物多様性に配慮した農業と持続可能な生計の推進に向けた私たちの取組を大きく後押ししています。この訪問が、長期的なパートナーシップと友情の始まりとなることを願っています。」
このほかにも、水産加工品の高付加価値化を通じて新たな収入機会を創出し、漁業管理への女性の参画を推進する「女性漁業者協会(Women Fishers Association)」や、デルタの生態系と深く結びついた伝統的な水牛飼育を維持しながら、水牛製品の品質向上、ブランド化、市場アクセスの強化を支援する「バッファローからブランドへプロジェクト(From Buffalo to Brand Project)」も紹介されました。
COMDEKSポートフォリオ全体の統合的なアプローチは、訪問した代表団に強い印象を与えました。
経団連自然保護協議会(KNCC)会長の西澤敬二氏は次のように述べました。「今回、11のプロジェクトが相互に連携して進められている、ランドスケープ・アプローチの現場を視察しました。各プロジェクトが「人と自然との共生」という基本的な考え方を共有し、強く連携していることが印象的でした。また、地域住民、大学などの研究者、地方政府、企業といった多様な関係者が連携して取組を進めていました。特に、研究者と地域住民が協力し、環境教育やデジタル技術の活用などを通じて、創意工夫を重ねながら活動している姿が印象に残りました。多様な関係者の連携の重要性については、これまでも頭では理解していましたが、今回、専門家と地域住民が実際に協力している姿を見て、日本の経済界としても、こうした地域に根差した多様な関係者とより一層連携していく必要性があると強く感じました。」
今回の訪問は、地域主導のイノベーションが、長期的な投資と強固なパートナーシップによって支えられることで、人々と地球環境の双方に具体的な利益をもたらすことを示しました。渡り鳥や湿地の保全から、女性起業家の支援、若手農業者の参画促進、農業へのデジタル技術の活用に至るまで、クズルルマク・デルタにおけるCOMDEKSの多様な取組は、強靭なランドスケープ・アプローチに向けた実践的な知見を提供しています。
各国が昆明・モントリオール生物多様性枠組みおよび持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて取り組む中、サムスンでの経験は、地域コミュニティに根ざし、協働によって拡大・発展する解決策へ投資することの重要性を示しています。