セネガルで就学前児童を対象とした住血吸虫症治療のパイロット調査を開始
2026年9月16日
2026年9月3日、セネガル・ケドゥグ州のサレマタで、就学前児童にアラプラジカンテル(arpraziquantel)が投与される様子。
セネガル保健社会活動省は、就学前児童向けの住血吸虫症の新しい治療オプション、アラプラジカンテルの導入に向けた計画の一環として、ケドゥグ州におけるパイロット調査を開始しました。
2026年9月2日にセネガルのサレマタで開催されたパイロット調査開始に際した会合には、国および地域の保健当局、世界保健機関(WHO)セネガル事務所、熱帯病研究訓練特別計画(TDR)、PATHをはじめとする技術・資金協力パートナーや実施機関、そして地域コミュニティのリーダーらが参加しました。
セネガルのアラプラジカンテル導入計画では、小児保健分野で既に運用されている3つの公衆衛生プラットフォームを通じた治療薬の提供方法を検証する調査が進められています。セネガルのティエス大学とガストン・ベルジェ大学が連携して主導する今回の調査では、これらのうち2つのプラットフォームを評価します。本調査はUNDP主導の「新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)」、TDRおよびPATHの支援を受けて実施されます。パイロット調査で使用される治療薬はIZUMI財団から提供されており、ADPは日本政府の支援を受けています。
顧みられない熱帯病(NTDs)のひとつである住血吸虫症は、汚染された淡水との接触によって感染する寄生虫症です。セネガルにある14の州のうち13の州で流行しており、特にケドゥグ州では依然として重要な公衆衛生上の課題となっています。住血吸虫症は世界で2億5,000万人以上が感染しており、そのうち推定5,000万人が就学前の子どもたちで、感染した子どもの大多数がサハラ以南アフリカに暮らしています。
今回の取り組みは、長年にわたり治療対象から取り残されていた幼い子どもたちに治療を届けるための重要な一歩となります。近年まで、就学前児童向けに特別に開発された治療薬は存在していませんでした。アラプラジカンテルは日本の公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)や欧州・途上国臨床試験パートナーシップ(EDCTP)、そしてドイツ・ダルムシュタットにある製薬会社メルクの支援を受け、小児用プラジカンテル・コンソーシアムが開発しました。現在、コートジボワール、ガーナ、ケニア、セネガル、タンザニア、ウガンダで実施されているパイロット事業を通じて、この治療薬を必要とする子どもたちへの提供が始まっています。
2026年9月2日、サレマタで開催されたパイロット調査開始会合に参加した国・地域の保健当局、技術・資金協力パートナー、実施機関およびコミュニティリーダー。
導入方法の検証調査では、既存の地域保健プラットフォームを活用し、実際の現場環境において治療薬をどのように提供・投与するのが最適かを検証します。また、保健従事者、地域の治療薬配布担当者や家族が感じる期待や課題を明らかにし、それらに対処するための実践的な解決策を探ります。
セネガルの国家NTDs対策プログラム調整官であるンドゥイェ・ムバケ・カネ氏は次のように述べました。「私たちは長年、住血吸虫症対策として集団投薬キャンペーンを実施してきましたが、24か月から59か月の子どもたち向けの小児用製剤がありませんでした。この新しい製剤の導入は、特に感染率の高い地域において、子どもたちを守るための重要な機会となります。」
また、UNDPセネガル事務所常駐代表代行であるキャサリン・フオンは次のように述べました。「どれほど優れた医療技術も、それを必要とする人々に届かなければ意味がありません。UNDPはADPを通じて、アラプラジカンテルをより多くの子どもたちに、公平かつ持続的に届けるために必要な実践的な知見の収集をセネガルで支援しています。幼い子どもたちを取り残さないことは、保健分野の優先課題であると同時に、人への投資でもあります。より多くの子どもたちが健やかに成長し、学び、自らの可能性を最大限に発揮できる機会につながるのです。」
ケドゥグ州では、本パイロット調査を通じて、生後24か月〜59か月の約6,000人の子どもたちに治療を届けることが計画されています。本調査では、アラプラジカンテルを既存の地域保健プログラムへ組み込むための2つの提供モデルを比較しています。1つは在宅医療プラットフォーム「PECADOM Plus」を通じた提供と、もう1つは季節性マラリア化学予防(SMC)の仕組みを活用した提供です。SMCを通じた初回投与は2026年9月3日に実施されました。これら2つの提供モデルについてケドゥグ地区とサレマタ地区で調査を実施しており、サラヤ地区を対照地区としています。
アラプラジカンテルは就学前児童向けに開発された、小型で水に溶けやすく、子どもでも飲みやすい製剤です。
サレマタの「バジェヌ・ゴフ」ネットワークで代表を務めるマリアマ・ディアロ氏は、次のように語りました。「以前、私の家族にも、排尿時に血尿が見られる幼い子どもがいました。薬がなかった頃は常に不安がありましたが、今はこの薬が利用できるようになり、とても安心しています。地域の伝統的な治療を行う人に相談することもありましたが、十分な安心感は得られませんでした。今はこの治療薬があることで安心できています。」
TDRのコリーヌ・メール氏は次のように述べました。「アラプラジカンテルをマラリア対策事業の中に組み込むことは、持続的な活用を確保するうえで重要な要素です。今回のパイロット調査は、実装研究の枠組みのもと実施され、これらのアプローチが地域社会で実施可能かつ人々に受け入れられるものであるかを検証し、今後の拡大展開に向けた国の政策協議に知見を提供します。さらに、本調査で得られる医療経済学的なエビデンスも、こうした政策対話を後押しすることになります。」
地域での啓発活動を通じて、幼い子どもにおける住血吸虫症への理解を深めるとともに、アラプラジカンテルおよび地域保健プラットフォームを通じた治療の提供方法について、家族への情報提供も行われます。
PATHのマラリア・NTDsプログラムの上級マネージャーであるティディアン・ティアム氏は、次のように述べました。「アラプラジカンテルの導入を成功させるためには、家族が子どもの治療について必要な情報を得た上で、適切な判断ができるようになることが不可欠です。地域社会の参画と、これらの提供モデルから得られる知見は、セネガルが持続可能で全国展開に向けた導入アプローチを構築するうえで大きな助けとなるでしょう。」