安全な原発運営とエネルギーコスト削減を支援
UNDPと日本、チョルノービリ原発に太陽光発電設備を導入
2026年9月9日
左から : オレクシー・ブディク ウクライナ立入禁止区域管理庁副長官、横井水穂 UNDPウクライナ事務所プログラム・マネージャー、大隅洋 駐ウクライナ日本国特命全権大使、アレクサンダー・ドゥ=クローUNDP総裁兼国連事務次長、アナトリー・クセヴォルウクライナ・エネルギー省副大臣、セルヒー・タラカノフ チョルノービリ原子力発電所所長、アウケ・ルーツマ UNDPウクライナ常駐代表、ロマン・シャフマテンコ UNDPウクライナ エネルギー・環境ポートフォリオ チームリーダー
ウクライナ・チョルノービリ発 – チョルノービリ原子力発電所に、新たに出力2MWの太陽光発電設備が導入されました。発電されたクリーンな電力は、廃炉作業や放射性廃棄物の管理など、原発事故の影響に対応するために現在も続けられている取り組みに活用されます。この太陽光発電設備は、日本政府から約82万5,000米ドルの資金提供を受け、国連開発計画(UNDP)が整備したものです。2024年には、リトアニア政府が本プロジェクトに必要な太陽光パネル7,000枚以上と17台のインバーターを人道支援として供与しており、今回の日本政府による支援は、こうした既存の支援を基盤に、設備の設置・稼働に向けた取り組みをさらに進めたものです。本プロジェクトは、ウクライナ・エネルギー省によって重要性の高い事業として位置づけられていました。
アレクサンダー・ドゥ=クローUNDP総裁 兼 チョルノービリに関する国際協力担当国連調整官は、太陽光発電設備の完成を記念して9月9日に同原発で行われた式典で次のように述べました。
「チョルノービリは、原子力の安全確保が、国境や世代を越えた共通の責任であることを私たちに改めて認識させます。UNDPはウクライナ各地で、エネルギー供給の安定性と強靱性を高めながらも、グリーン・トランジションを加速させるため、再生可能エネルギーの導入を進めています。今回の太陽光発電設備は、UNDPがこれまでウクライナで導入した中で最大規模のものです。チョルノービリ原発を安全かつ安定的に運営し続けることは、ウクライナ国内だけでなく、その周辺地域の安全にとっても欠かせず、今回の設備は、そうした重要な拠点のエネルギー基盤を支えるものです。」
式典に出席した大隅洋 駐ウクライナ日本国特命全権大使は、日本による今回の支援は、チョルノービリ原発事故の影響への対応をめぐってウクライナと長年にわたり積み重ねてきた協力と、チョルノービリと福島の原発事故から得られた経験や教訓の共有の上に成り立つものだと強調しました。
「今回の太陽光発電プロジェクトは、両国の協力の歩みを象徴するものです。チョルノービリ原発事故の影響への対応に始まり、福島の経験と教訓の共有を経て、現在では、戦時下における原子力安全の確保と、より強靱な未来への投資へと協力の幅が広がっています。今日の成果を新たな出発点として、ウクライナ、そして世界の、より安全で持続可能かつ強靱なエネルギーシステムの実現に向けて、これからもともに取り組んでいきましょう」
デニス・シュミハリ・ウクライナ第一副首相兼エネルギー相は、次のように述べました。
「チョルノービリ原子力発電所が必要な電力の一部を自らまかなえるようになることで、外部からの電力供給が途絶えた場合でも、重要な設備を安定して稼働させることができます。こうした安定した電力の確保は、原発を安全に管理し、放射線による事故や被害のリスクを抑える上で欠かせません。
ウクライナでは、太陽光発電の設備容量がすでに7.6GWに達しており、エネルギー供給の強靱性を支える重要な柱となっています。今回の太陽光発電設備は、年間200万kWhを超えるクリーンな電力を生み出す見込みです。これは、チョルノービリ原発の年間電力消費量の約5%に相当し、年間約36万5,000米ドルのコスト削減につながります。削減できた費用は、チョルノービリ原発の安全な廃炉に不可欠な設備の更新や交換、機能強化に充てられます。ウクライナを支えてくださる国際社会のパートナーに感謝します。ウクライナと周辺地域の原子力・エネルギー安全保障の強化に向け、国際社会と共に取り組めることを大変心強く感じています。」
設備の設置とチョルノービリ原発の電力網への接続には、高度な技術を要する作業が必要となり、12人の専門チームが4か月をかけて実施しました。約90トンの鋼材を使用した180基の架台に太陽光発電パネルを設置したほか、約60キロメートルにわたってケーブルを敷設し、発電設備の稼働に必要な接地設備、電気保護設備、避雷設備を整備しました。
今回の太陽光発電設備は、年間200万kWhを超えるクリーンな電力を供給し、年間約1,600万フリヴニャのエネルギーコスト削減につながると見込まれています。発電された電力は、放射性廃棄物や使用済み核燃料を取り扱う施設の電力需要を支えるとともに、1986年の事故で破壊されたチョルノービリ原発4号炉を覆う「新安全閉じ込め構造物(New Safe Confinement)」の運用にも活用されます。
背景
1986年4月26日、チョルノービリ原子力発電所4号炉で爆発事故が発生しました。放射性物質による汚染はウクライナや欧州の広い地域に拡大し、世界で最も深刻な原子力災害の一つとなりました。現在、チョルノービリ原発では、安全な廃炉、放射性廃棄物や使用済み核燃料の管理、事故で破壊された4号炉を覆う新安全閉じ込め構造物(New Safe Confinement)の維持管理などが進められています。これらはいずれも長期にわたる取り組みであり、ウクライナと国際社会による継続的な協力が不可欠です。ロシアによる全面侵攻によって、同原発をめぐるリスクはさらに高まっています。2022年には同地域がロシア軍に占拠されたほか、2025年2月にはドローン攻撃によって新安全閉じ込め構造物が損傷し、大規模な修復が必要な状況となっています。