エチオピアで進む、女性主導の国内避難民の生計再建

2026年9月14日
Photograph of villagers in colorful clothing with goats lined up by a stone wall.
Photo: UNDP Ethiopia

紛争による避難生活を終えて故郷へ戻った家族にとって、生活を立て直すことは最も大きな課題の一つです。エチオピア北東部に位置するアファール州アバラ郡でも、多くの帰還民世帯が困難に直面しながらも、新たな一歩を踏み出しています。

そうした復興を後押ししている取り組みの一つが、国連開発計画(UNDP)が日本政府によるTICADパッケージの支援を受けて実施している電子バウチャー事業です。これにより、故郷へ戻った国内避難民の人々が、自立に向けた生計手段の再構築を進めています。

本事業を通じて、アファール州、アムハラ州、ティグライ州の帰還民675人が、1人当たり500米ドル相当(現地通貨エチオピア・ブル建て)の電子バウチャーを受け取り、それぞれが選んだ生計向上のための活動への投資に活用しています。

また、受益者の72%を女性が占めており、本事業はジェンダーに配慮した復興と女性の経済的エンパワーメントへの強いコミットメントを示しています。アバラ郡では、対象となる230人のうち204人が女性です。

その一人が、マハシン・アブドゥルカディルさんです。エチオピア北部の紛争により避難を余儀なくされる以前、マハシンさんは農業と牧畜を組み合わせて生計を立てていました。6人の子どもを育てる中、夫が働けない状況にあったため、近隣のティグライ州から来た農家に農地の耕作を任せていました。

故郷のアバラへの帰還後には、新たな課題が待ち受けていました。家族の収入源は限られ、生活の再建は容易ではありませんでした。それでも、より良い未来を築こうと決意したマハシンさんは、電子バウチャー事業のもとでヤギの飼育を生計活動に選んだ女性グループに加わりました。

このグループは電子バウチャーを活用してメスのヤギ30頭を購入し、繁殖事業を立ち上げました。この取り組みはすでにメンバーたちに新たな自信と、より自立した暮らしへの道筋をもたらしています。

マハシンさんは、将来について明確なビジョンを描いています。グループでは、オスの子ヤギを販売して収入を得る一方、メスヤギから得られる乳やバターを、特に子どもたちの栄養改善に役立てる計画です。

彼女にとって、ヤギは単なる家畜ではありません。食料安全保障と収入を支え、自立と尊厳ある暮らしを実現するための大切な資産なのです。

Photograph of a woman in a blue striped shawl standing beside goats by a stone wall.
Photo: UNDP Ethiopia

「これが私たちの生活を変え、未来を希望で満たしてくれると心から信じています」とマハシンさんは語ります。

このデジタル電子バウチャー制度により、参加者は自身のスキルや関心、地域の市場需要に最も適した生計手段を選択することができます。利用可能な生計パッケージには、家畜飼育、養鶏、小規模加工、取引活動などが含まれ、世帯の収入回復と経済的レジリエンスの強化を後押ししています。

参加者は、審査を受けた民間事業者を通じて電子バウチャーを利用し、地域の供給業者から必要な資産や機材を購入します。この仕組みは、帰還民の生活再建を支えるだけでなく、地域市場の活性化にもつながっています。

UNDPの技術パートナーである日本電気株式会社(NEC)は、事業者や郡(Woreda)の担当者、UNDP職員を対象に、電子バウチャーアプリの利用方法に関する研修を実施しました。これにより、効果的で安全かつ透明性の高いデジタルシステムの運用が可能となっています。

また、事業者、郡の技術チーム、地域事務所の緊密な連携により、事業の質と説明責任が確保されています。こうしたパートナーシップが一体となって、紛争の影響を受けた家族が復興の先へと進み、強靭で持続可能な生計を築くことを後押ししています。

女性を経済復興の中心に据えることで、本事業は収入の回復にとどまらず、コミュニティのレジリエンスを強化し、エチオピア北部における持続的な平和と発展への新たな機会を生み出しています。