開催報告:四機関連携 アフリカビジネスセミナー in埼玉 ―成長市場アフリカをビジネスチャンスへ―

2026年8月18日
People seated around tables in a conference room, presentation screen at the front.

セミナー全体の様子

概要 

イベント名:四機関連携 アフリカビジネスセミナー in埼玉 ―成長市場アフリカをビジネスチャンスへ― 

 開催日:2026年7月27日(月)14:00-17:00 

 共催:JETRO、JICA、UNDP、UNIDO 

 会場:渋沢MIX(埼玉) 

 参加者:日本企業、支援機関、研究機関、アフリカ人材等 


 

JETRO、JICA、UNDP、UNIDOの4機関は、日本企業によるアフリカビジネスへの参入促進を目的として、「成長市場アフリカをビジネスチャンスへ」と題したアフリカビジネスセミナーを埼玉にて共催しました 。本セミナーは、TICADプロセスの一環として、アフリカ市場の最新動向や充実した公的支援、実際に現地で挑戦を続ける企業の実践事例を共有し、参加企業の具体的なアクションに繋げることを目的として実施され、県内企業を中心に約50名が参加しました 。 

プログラム後半には、参加者と登壇者、各機関が直接意見を交わせるネットワーキングの時間や個別相談の機会を設け、新たなビジネス展開に向けた交流の場を創出しました。会場内のUNDPブースでは、アフリカ各国に広がる現地事務所の密なネットワークや長年培った知見をベースに、社会課題と民間ビジネスを融合させる事業創出の可能性について情報提供を行いました。 

アフリカ市場概況 

JETRO調査部の天神氏からは、アフリカ市場の最新トレンドと日本企業を取り巻く現状について解説がありました。アフリカ大陸は54か国、人口約15億人を擁し、2000年代以降高い経済成長を維持しています。日本との貿易額も約3兆円規模に達しており、資源・エネルギーのみならず、急成長する消費市場やインフラ分野への期待が寄せられています。一方で、現地の制度運用の不透明さや外国為替リスク、未整備のインフラといった特有の障壁が依然として課題であることも示されました。また、日本企業の進出先としては南アフリカ、ケニア、モロッコ等が主要市場であり、近年はナイジェリアやコートジボワールへの関心も高まっていることが紹介されました。  

アフリカビジネス協議会の取組 

アフリカビジネス協議会(JBCA)事務局長の佐藤氏からは、官民連携によるアフリカビジネス促進の取組が紹介されました。同協議会は約500社が加盟するプラットフォームとして、各政府省庁が提供する補助制度や海外派遣プログラムに関する情報提供を行っています。また、日本で学ぶアフリカ人留学生や高度人材の日本企業とのマッチング支援にも注力しており、企業のグローバル人材確保や現地ネットワーク構築を後押ししている実態が紹介されました。 


企業事例紹介① 株式会社インバックス 

株式会社インバックスの秋山氏からは、ケニアでの砂防ソイルセメント活用技術の実証と、土木構造物材料への展開について紹介がありました。同社は「発生土砂を資源化する技術で、インフラと環境を守る」をミッションに掲げ、土砂を再利用可能な建設資材に変えるソリューションを展開しています。独自の土砂を固化し、用途に合わせて自由に強度をコントロールできる技術を強みに、国内1,000カ所以上の施工実績と複数の受賞歴を有しています。 

アフリカに広く分布する「黒綿土(ブラックコットンソイル)」は、吸水時の膨張・泥化と乾燥時の激しい収縮・地割れを起こすため、建築物や道路の地盤沈下・損壊を引き起こします。現地では良質な土への置換作業に膨大な時間・費用・処分場の確保が課題となっていました。同社は土砂改質ノウハウを応用し、黒綿土をその場で頑丈な建設資源へ転換する仕組みを開発。拡大するアフリカのインフラ需要において、施工の効率化と現地資源の有効活用を同時に実現しています。 

現地素材・重機のみで行われた屋外実証試験では、ひび割れや膨潤等の問題は確認されませんでした。これらの成果はTICAD閣僚会合で配布されたほか、現地のジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)の学術論文に共同掲載されるなど、国際的にも高い評価を得ています。さらに同社は、自社開発の配合等を推定するAIシステムの国内での活用に注力しており、現地の資源・標準重機のみで黒綿土を改良するケニアでの地産地消型モデルの実証に向けた導入を検討しています。 

秋山氏は発表の中で、海外展開の障壁として「目に見えない技術力の販売」「ターゲット市場と製品選定」「推進体制の限界」を挙げました。国内実績があっても専門スタッフ不足や初期投資予算などの制約がある中、いかに最適な社内体制を構築するかが課題であると語られました。今後はAIによる配合プロセスの自動化・汎用化を進め、現地で完結する地産地消のインフラ整備モデルの確立を目指しています。 

Conference stage with speaker at orange podium, banners with logos, blue presentation screen.

株式会社インバックス 秋山氏からの事業概要、アフリカの取組等の発表

企業事例紹介② 伊藤超短波株式会社 

続いて、伊藤超短波株式会社代表取締役副社長の伊藤氏より、エジプトを中心とした北アフリカ市場における開拓・深耕事例と、今後のアフリカ市場展望について紹介がありました。超短波や超音波、EMSといった物理エネルギーを活用する「物理療法」の技術と知見をコアに、約50年にわたりグローバル事業を展開してきた同社の豊富な経験に基づき、アフリカの医療機器市場におけるビジネスの実態が解説されました。 

同社は、今年で創業110周年を迎えた物理療法機器のパイオニアとして、病院用の医療機器から家庭用治療器、美容機器まで、幅広く研究開発・製造・販売を行っています。日本の高い技術に基づく高性能・高耐久な機器は信頼が厚く、早くから海外展開に着手。医療現場のニーズに応じた製品開発により、現在までに世界100カ国以上へ輸出しています。また、海外で得た学術・医療情報を国内の開発にフィードバックする循環も確立しています。 

1970年代からは世界の未開拓市場へ本格的に参入し、アフリカではODAを通じた医療インフラ整備にも関与してきました。 一方で、距離の遠さや国ごとの医療機器許認可など、現地ニーズの把握や制度面での障壁が存在します。そして販売成功の成否は現地代理店の実行力に大きく依存します。同社はこれらの課題に対し、出張や現地出身の人材採用により現場の実態把握に努めました。 さらに、機器の販売にとどまらず、適切な使用ノウハウや医療知見をセットで提供する手法を採用しています。 これにより価格競争に陥ることなく、現地パートナーとの強固な信頼関係を構築しています。 

同社は、急速な人口増加と経済成長に伴ってヘルスケア需要が爆発的に高まるアフリカ市場の将来性に強い確信を持っています。今後は、複雑かつ変化の激しい各国の医療機器規制や参入障壁に注意しながら、エジプトでの成功事例をベースに、東アフリカをはじめとする周辺国への横展開を本格化したい考えです。ビジョンを共有する志の高い現地代理店と共にブランドと市場を育むことで、アフリカ大陸全体の医療水準および治療技術の向上に貢献していく展望を示しました。 

Photograph of a presenter at a podium addressing an audience in a conference hall with banners and a screen.

伊藤超短波株式会社 代表取締役副社長 伊藤氏からの概要説明、アフリカでの取組等の発表

企業事例紹介③ 株式会社サイサン 

最後に、株式会社サイサンの海外事業部小池氏が、LPガス(液化石油ガス)の貯蔵・充填・流通事業におけるアジアおよびアフリカ市場での展開事例を紹介しました。ルワンダでの具体的なLPガス事業化調査や現地合弁会社の設立にいたるプロセスを背景に、アフリカのエネルギー市場の実態と現地での会社設立・運用のリアルな解像度が語られました。 

ルワンダ等アフリカ諸国では、依然として家庭での調理用薪・木炭が多用され、森林破壊や健康被害が深刻化しています。同国政府は木材燃料への依存度を2024年までに42%へ削減する目標を掲げていたものの、自国のみでの達成は困難でした。そこで同社は現地パートナーと合弁会社を設立し、高い安全性と利便性を誇る自社LPガス充填装置等を用いた小口需要の開拓に着手し、LPガスを一般家庭や地方都市まで広く普及させる革新的なビジネスモデルを構築しました。これにより安定供給や物流の効率化を実現し、現地のクリーンエネルギー移行を推進しています。 

同社は、現地でラストワンマイルの配送網を確立していた「飲料水デリバリー事業者」をパートナーとして巻き込むことで、短期間でのシェア拡大を目指して事業展開を行っています。現在は一般住宅に加え、外食産業、工場、ガソリンスタンドなどへ供給領域を拡大しています。さらに、日本水準の厳格な保安体制を提案し、国際機関等の協力のもと、学校給食用調理施設の燃料転換や、同国最大級の難民キャンプにおける供給事業者としても採用されました。 

今後、GDPの急成長が見込まれるアフリカの地を足がかりとし、同社は創業100周年を迎える2045年に「世界で選ばれる総合エネルギー小売企業」となる目標を掲げています。今後は持続可能なエネルギー移行政策にさらに深く参画し、薪からLPガスへの燃料転換を加速させるとともに、現地開発会社とタッグを組んでLPガス集中配管システムの導入提案を行うなど、次の100年に向けた持続可能な成長戦略を邁進している様子が紹介されました。 

Speaker at podium presenting to an audience in a conference room; slide in Japanese on screen with JICA banners on stage.

株式会社サイサン 海外事業部 小池氏からの概要説明、アフリカでの取組等の発表

まとめ 

本セミナーでは、アフリカ市場のポテンシャルに加え、日本企業が戦略的に活用できる各種支援スキーム、そして埼玉県内からアフリカへいち早く進出した企業による経験が詳しく紹介されました。参加した企業にとっては、地元・埼玉からアフリカ市場へ進出している企業の具体的な取り組みや事例が有益な参考情報となり、同様の進出ニーズや事業課題を抱える企業間で実務的な解決策やノウハウを共有し合う、有意義な意見交換の場となりました。 

UNDP、UNIDO、JETRO、JICAの4機関は、今後も強固な協力体制を敷き、アフリカビジネスに挑戦する日本企業のために、実践的な市場情報、現地ネットワーキングの構築、そして個別具体的な事業化サポートを通じて、持続可能な官民共創アプローチをさらに深化させていく予定です。