ガラパゴスが切り拓く、持続可能なモビリティの未来
保全と発展を両立させるために
2026年9月29日
安全で効率的そして持続的な移動手段を確保することは、人々の教育や医療、雇用機会へのアクセスを向上させ、より良い暮らしそのものを支えることにもつながります。環境、エネルギー、物流の面で特有の課題を抱えるガラパゴス諸島では、新たなモビリティの実現に向けて。地域の実情に即しニーズに応える解決策が求められています。
2026年8月、ガラパゴス諸島は持続可能なモビリティの実現に向けて新たな一歩を踏み出しました。モニタリング技術を搭載した2台のハイブリッド車両の導入により、島しょ地域特有の環境条件下での走行データを収集し、持続可能なモビリティに関する将来的な意思決定の根拠となる科学的エビデンスを提供します。
この取り組みの目的は、新しい技術を試験導入することに留まらず、ガラパゴスでの実践を通じて学びを深めることも追求しています。
ガラパゴス諸島のニーズに最も適したモビリティは何か。その経済的、社会的、環境的影響はいかなるものか。そこで得られた知見を地域住民の移動環境の改善につながる政策や具体的な施策にどう生かせるのか。今回の取り組みは、そうした問いへの答えを見つけるための大切な一歩です。
この取り組みは、ガラパゴス特別体制統治評議会(CGREG)、トヨタ・デル・エクアドル、そして国連開発計画(UNDP)の連携により実現したもので、日本政府の支援を受けて実施されています。公共部門の能力、知見、(民間企業の)イノベーション、そして国際協力を結集し、「ガラパゴスにおけるより持続可能なモビリティの構築」という共通の目標に向けて取り組むパートナーシップです。
この三者によるパートナシップの枠組みのもと、UNDPは、トヨタ・デル・エクアドルとCGREGとの間で締結された、2台のハイブリッド車両の貸与に関する協定の署名に立ち会いました。本イニシアティブは、UNDPが両機関と締結している協力覚書に基づいて実施されています。
調印式はサンタクルス島で開催され、CGREGのカルロス・オルテガ議長、駐エクアドル日本国特命全権大使堀内利彦閣下、トヨタ・デル・エクアドルの井上英久代表取締役社長、そしてUNDPエクアドル常駐代表のインカ・マッティラ氏が出席しました。
インカ・マッティラUNDPエクアドル常駐代表は次のように述べています。
「UNDPにとって、この取り組みは単なるパイロット事業ではありません。公共部門の意思決定を強化し、地域の実情に即した政策形成を後押しするためのエビデンス、学び、そして知識を生み出すことを目指しています。そうした知見を通じて、島々におけるより持続可能なモビリティの実現を後押ししていきます」
エビデンスをより良い意思決定につなげる
ガラパゴスでの取り組みの根底にあるのは、「すべての地域に当てはまる万能なモビリティ解決策は存在しない」という考え方です。ガラパゴス諸島では、あらゆる選択肢について、島々特有の条件に加え、そのライフサイクル全体を通じた経済的・社会的・環境的影響も含めて総合的に検討する必要があります。
このため、UNDPは日本政府の支援のもと、CGREGによる制度強化に向けたより包括的な取り組みを支援しています。この取り組みには、サンタクルス島、イサベラ島、サンクリストバル島を対象とした2035年までの持続可能なモビリティ・ビジョンの策定、移動動向に関する分析、持続可能な通学ルートの提案、さらには使用されなくなった車両や技術を適切に管理するための仕組みづくりなどが含まれています。
目指しているのは、データや知見を、より良い公共政策や地域づくりに役立てることです。その観点から、持続可能なモビリティとは、単に新しい技術を導入することを意味するものではありません。人々を公共サービス、教育、雇用、そしてさまざまな機会へとつなぐものであり、地域計画、インフラ整備、技術革新、資金調達、さらにはジェンダー平等と包摂性の視点を統合したアプローチを必要とします。
また、UNDPは日本政府の支援を受けながら、クエンカ、ポルトビエホ、ヤンササなどの地方都市においても、それぞれの地域のニーズに応じたモビリティ・ソリューションの開発と能力強化を進めています。
さらに、UNDPは「気候の約束(Climate Promise)」イニシアティブを通じて、環境・エネルギー省が主導する国が決定する貢献(NDC)の実施を支援する戦略分野の一つとして、持続可能なモビリティを推進しています。この取り組みでは、制度・ガバナンスの強化、データの収集と活用、交通分野の脱炭素化、人材育成、資金調達メカニズムの整備を一体的に進めることで、各種イニシアティブを持続可能かつ拡張可能なソリューションへと発展させることを目指しています。
ガラパゴス諸島: 自然を守り、人々の暮らしをより豊かに
ガラパゴス諸島において持続可能なモビリティについて語ることは、同時に自然保護と持続可能な開発について語ることでもあります。人々の移動のあり方は、エネルギー利用、島々の土地利用計画、観光、地域経済活動、そして地球上で最も重要な生態系の一つであるガラパゴスの保全と密接に結びついています。
このため、UNDPはガラパゴス諸島において、モビリティの改善に加え、生物多様性保全、責任ある観光、持続可能な漁業、気候変動に強い農業、さらには化学物質や有害廃棄物の管理といった課題を、それぞれ個別のテーマとしてではなく、相互に関係するものとして捉え、統合的なアプローチを進めています。
ガラパゴスでの経験は、自然環境の保護と人々の生活向上が決して相反する目標ではないことを示しています。両者を同時に実現するためには、政府、地域コミュニティ、国際協力機関、学術機関、そして民間セクターが連携し、知見やイノベーションを持続的なソリューションへと結びつけていくことが不可欠です。
こうした取り組みを通じて得られる知見や教訓は、ガラパゴス諸島における将来のモビリティ政策や意思決定を支えるだけでなく、エクアドル国内や世界各地の島嶼地域が直面する課題への対応にも活用されることが期待されています。