帰還から復興へ:電子バウチャーが紛争後の帰還民に生計再建の選択肢をもたらす

2026年8月13日
Outdoor community event with a crowd around blue crates topped with vinyl records; two men hold records.
Photo: UNDP

エチオピアのアムハラ州テフレデレ郡において、故郷へ戻った国内避難民(IDPs)が電子バウチャーを活用し、地元事業者から灌漑用のウォーターポンプを購入しました。これにより、灌漑環境の改善や農業生産性の向上、さらには世帯の食料安全保障の強化につながっています。

これは、エチオピア北部においてUNDP(国連開発計画)が実施する「エチオピア北部の紛争影響地における復興プロジェクトにおける救援物資配布のための電子バウチャー解決策の導入」の取り組みの一環として行われたものです。本プロジェクトは、日本政府によるTICADパッケージの補正予算支援を受けて実施されており、デジタル技術を生計回復につなげることで、紛争や避難の影響を受けたコミュニティの復興を後押ししています。

UNDPの国内避難民の恒久的解決プログラムとして実施し、アファール州、アムハラ州、ティグライ州で紛争の影響を受けた帰還民675人を支援しています。受益者の72%を女性が占めており、生計の回復を支援するとともに、エチオピアにおける国内避難民の恒久的解決の推進にも貢献しています。 

一律の現物支援に加えて、帰還民一人ひとりに500米ドル相当(現地通貨建て)の電子バウチャーを提供しており、各受益者のニーズや状況に最も適した生計手段を選択することができます。 

支援対象となる生計資産には、灌漑設備、養鶏、ヤギの飼育、牛の肥育などが含まれています。 

Close-up of a hand touching a tablet displaying a blue screen with white text, outdoors.
Photo: UNDP

電子バウチャー方式は、生計回復という目的を維持しながら、受益者自身の選択を尊重する仕組みとなっています。従来の現物支給型支援とは異なり、帰還民は自らの優先事項や生活状況に応じて必要な生計資産を選択することができます。また、デジタルプラットフォームの活用により、透明性と説明責任が強化されるとともに、受益者自身が復興の主体として意思決定できる環境が整えられています。 

プログラムの実施にあたっては、各地域の地方行政との連携のもと、アファール州、アムハラ州、ティグライ州で合計20の地元事業者が選定されました。UNDPは事業者に対して実施能力の評価を行い、電子バウチャー制度を通じて質の高い商品やサービスを提供できる能力を備えていることを確認しています。

また、日本企業であるNEC(日本電気株式会社)は、事業者、郡(Woreda)およびUNDP職員を対象に、電子バウチャーアプリの利用方法に関する5日間の研修を実施しました。さらに事業者に対して、デジタル取引を円滑に実施するために必要な機器を提供しました。 

アムハラ州では、3つのケベレ(村などの小行政区)において、紛争の影響を受けた帰還民230人が、安全なデジタル電子バウチャーシステムを通じた支援を受ける予定です。その第一段階としてテフレデレ郡では、帰還した国内避難民(IDPs)の127人(うち52%は女性)が、すでに電子バウチャーを利用して灌漑用ウォーターポンプを購入しました。これにより、灌漑が改善され、農業生産性が向上し、世帯の食料安全保障の強化につながっています。 

Outdoor art event with a crowd; right side shows two men talking.
Photo: UNDP

帰還民は、自ら復興の主体として積極的に取り組み、電子バウチャーによる支援に自己負担分を加えることで、ウォーターポンプおよび付属機材の費用を賄いました。地方行政は参加事業者の選定・承認において重要な役割を果たし、地域のニーズに即した生計資産の提供を支え、透明性と品質基準の確保に努めました。電子バウチャーシステムへの登録を通じて、承認された事業者は信頼性の高い供給ネットワークの一員となり、受益者が必要な生計資材へ効率的にアクセスできるようになるとともに、地域事業者の活動を後押しし、市場の回復を支えています。  

初期段階の成果からは、デジタルソリューションが個々の世帯の生計回復にとどまらず、帰還民と地域事業者をつなぐことで、地域経済の活性化やサプライチェーンの強化、生計回復の機会創出に貢献する可能性が示されています。また、紛争や避難の影響を受けた人々に対する恒久的解決を後押しし、より強靭で持続可能なコミュニティづくりにも貢献することが期待されています。