キーウに起業家支援の新拠点を開設

予備電源と通信設備を備え、空襲警報や停電時でも稼働可能な拠点を整備

2025年6月25日
Two men in formal attire holding a certificate, standing in front of flags.

ゲンナディ・チジコウ ウクライナ商工会議所会頭(左)と、ハオリャン・シュウ国連事務次長兼国連開発計画(UNDP)総裁代行(右)

Photo: UNDP Ukraine / Andrii Krepkykh

国連開発計画(UNDP)と日本政府の支援を受け、キーウに「レジリエント・ビジネス・ハブ(Resilient Business Hub)」が開設されました。これは、2025年にウクライナ国内で開設予定の11の起業家支援施設のうち、2か所目となります。

こうした施設は、空襲警報や停電の際でも、安定した電力のもとで途切れることなく業務を続けられるよう人々を支援します。キーウに開設されたこの支援拠点は、不確実性や日々の困難に直面する人々の事業を支えるうえで、重要な一歩となります。

新たに開設されたこのビジネスハブは、ウクライナ商工会議所の施設内に設置されています。ここは、最新のコワーキングスペース、ビジネスコミュニティ向けのイベントスペース、そして相談センターの機能を有しています。加えて最大15人分のワークスペースのほか、10人用の会議室と、最大100人を収容できるカンファレンスルームも備えています。

UNDPの調査によると、ウクライナ経済の基盤を支えているのは中小零細企業(MSMEs)であり、全事業体の99.98%を占め、付加価値の64%を生み出し、700万人以上の雇用を提供しています。それにもかかわらず、これらの企業は、需要の減少、人材不足、インフラの破壊、資金へのアクセスの困難、高額な物流コストなど、深刻な課題に直面しています。

ハオリャン・シュウ国連事務次長 兼 UNDP総裁代行は、ウクライナの持続可能な復興において中小企業の発展が重要な要素であると指摘したほか、国際機関・政府・企業の三者による連携の重要性を強調し、以下のように述べました。

「キーウにおけるレジリエント・ビジネス・ハブの開設は、ウクライナの未来に対する私たちの揺るぎないコミットメントを示すものです。この取り組みは、包括的な支援体制の重要な一部であり、起業家たちが目の前の困難に適応するだけでなく、成長し、革新を起こし、持続可能な経済復興を牽引していく力を与えます。中小零細企業のレジリエンス(強靱性)に投資することは、ウクライナの構造的な変革に直接寄与するものであり、民間セクターがすべてのウクライナ国民にとって、より公平で豊かな未来を築く中心的な存在であり続けることを保証するものです。」

ヴィタリー・キンドラティフ ウクライナ経済省副大臣は、持続可能な経済を構築するうえで、政府・国際パートナー・ビジネスの三者間の協働により生まれる相乗効果の重要性を強調し、以下のように述べました。

「このプロジェクトは、公共部門・民間部門・国際部門が連携し、効果的なビジネス支援体制を構築できることを示す証です。ウクライナの起業家たちが受け取っているのは抽象的な支援ではなく、成長や新たな市場への参入を実現するための具体的な手段なのです。」

 

このハブの開設は、「中小零細企業支援のためのインフラ:ビジネス・インテリジェンスと政策対話」会議の中で行われました。本イベントは、「イノベーションと貿易:日本とのパートナーシップ、ビジネス分析」助成プロジェクトの最終段階として開催されたものであり、同活動は「ウクライナにおける人間の安全保障のための変革的復興」プロジェクトの一環として、UNDPとウクライナ商工会議所が連携し、日本政府の支援を受けて実施されています。

平木忠義在ウクライナ日本国大使館経済担当官は、中小企業(SMEs)が経済の基盤であることや、ウクライナに根付く、力強い起業家精神がイノベーションを生み出し、経済の持続可能性を高めてきたことを強調し、次のように述べました。「中小企業が宇位か経済の基盤であることからも、困難な状況下において事業継続を支援するレジリエント・ビジネス・ハブの創設は極めて重要です。日本は、ベストプラクティスや経験の共有を含め、ウクライナの中小企業の発展を引き続き支援していく決意です。」

ゲンナディ・チジコウ ウクライナ商工会議所会頭は次のように述べました。

「このスペースは、ウクライナのビジネスの未来に対する私たちの共通の信念を象徴するものです。私たちは国際パートナーと共に、単なるインフラを築くだけでなく、起業家が適応し、成長していくための支援体制を構築しています。」


背景

今回のようにUNDPが支援するビジネスハブは、今年中にヴィーンヌィツャ、ヴォルィーニ、オデーサ、ハルキウ各州にも開設される予定です。UNDPと日本政府は、ウクライナの中小企業を支援するため、広範な支援ネットワークを構築しています。また、「Made in Ukraine」ビジネス支援イニシアチブの枠組みのもとで、起業家を支援するオフィスの開設も進めています。現在、ウクライナ国内には88か所の支援オフィスがあり、そのうち11か所はUNDPと日本政府の支援によって運営されています。2025年末までには、支援オフィスを100か所まで拡大し、そのうち13か所をUNDPと日本政府の支援により開設する計画です。さらに、この支援ネットワークの一環として、統合地方自治体(アマルガメーテッド・テリトリアル・コミュニティ)における行政サービスセンター内には、すでに151か所の起業家支援拠点が地域レベルで運営されています。