中東紛争の影響で、化石燃料補助金は1兆ドル規模に拡大する可能性:UNDPが警告

UNDPの新たな報告書によると、中東紛争の波及効果により、開発途上国は化石燃料補助金に資金を奪われ、保健や教育、気候変動対策に投資する財政的余裕を失っています。

2026年7月8日

UNDPの報告書は、化石燃料補助金が一時的な救済策にはなるものの、最終的には各国を高炭素経路へと固定させ、将来の投資を制約することで、気候変動対策と開発の目標達成を困難にすると警告しています。

UNDP Vietnam

ニューヨーク/ハンブルク発国連開発計画(UNDP)が発表した新たな報告書によると、開発途上国は中東紛争の長期化に伴う影響に対処するために多額の財政負担を強いられており、教育や保健、その他の開発優先課題に欠かせない投資に充てる余力が失われている状況にあります。 

『中東情勢の軍事的激化:グローバル・ショックの緩衝(Military Escalation in the Middle East: Cushioning the Global Shock)』と題するこの報告書は、低・中所得国が化石燃料補助金や上限価格規制、税金の還付、需要管理措置を通じ、石油価格の急騰から国民への影響を緩和していることを明らかにしています。 

化石燃料補助金はこれまで、世界的な減少傾向を示してきましたが、石油の平均価格が現状の1バレル88.6米ドルで推移すると想定した場合、2026年には1.1兆米ドルに達し、2025年比で4,100億米ドル増加する見込みです。 

平均石油価格が1バレル110米ドルに達するという「深刻な」シナリオの場合、この予測額は1.43兆米ドルに跳ね上がります。 

UNDP報告書は、化石燃料補助金が一時的な救済になるものの、最終的には気候変動対策と開発の目標達成を阻害し、各国を高炭素排出型の発展経路に固定させ、将来の開発投資への余地を狭めるおそれがあると警告しています。 

アレクサンダー・ドゥ=クローUNDP総裁は「中東紛争の世界的な波及効果は極めて大きく、その影響は長期化する恐れがあります。開発途上国は、すでに多くが債務に苦しみながら、最悪のエネルギー・ショックからなんとか国民を守っている状況です。こうした国々はあらゆる手を尽くしていますが、そこには隠れたコストがあります。各国政府は現在の危機に対処するため、将来に向けた投資を延期しているのです。学校や病院、クリーンエネルギー・システムの構築に使われるべき資金が、単に経済を維持するためだけに用いられています。国際的な支援がなければ、これらの国々はショックから逃れられないでしょう。将来の成長を犠牲にする形で、ショックを吸収しているのが現状なのです」と語っています。 

報告書によれば、世界の最貧国は半数近くが、すでに債務危機に陥っているか、その高いリスクを抱えており、債務はますます速いペースで、開発投資を押しのけています。 

開発途上国は今年、中央値で歳入額全体の9.53%を債務の利払いに充てることになりますが、この割合は10年前の2倍に上り、25年ぶりの高い水準となっています。 

2024年から2026年の3年間の平均で見た場合、債務利払いが歳入額の10%超を占める開発途上国は55か国に上ると見られますが、これも10年前の32か国を上回っています。 

ドゥ=クロー総裁は「自らが引き起こしたわけではない危機を管理するために、将来の開発を犠牲にする国があってはなりません。私たちはまず、低・中所得国がアクセスしやすい形で多国間の資金流動性を提供しなければなりません。そして次に、再生可能エネルギーへの投資を加速させる必要があります。クリーンエネルギーへの投資は、将来のエネルギー危機に対する備えとなり、その影響を軽減することにつながるからです。今回の危機は、エネルギーの安全保障とエネルギーの移行がもはや別個の課題ではないということを明白にしました。この2つは全く同じ課題なのです」と指摘しました。 

本報告書は、6月29日から30日にかけて開催されたハンブルク・サステナビリティ会議(HSC)に発表されました。HSCは、全世界の政策立案者、民間セクターのリーダー、学術専門家、市民社会の代表による新たなパートナーシップとコレクティブ・アクションの促進をねらいとして開催される年次ハイレベル会合です。この毎年恒例のイベントは、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)、国連開発計画(UNDP)、自由ハンザ都市ハンブルク、ミヒャエル・オットー財団による共同イニシアチブとして実施されています。 

報告書全文は、こちらからご覧いただけます。 

 

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