池田麻衣子 国連開発計画(UNDP)ネパール事務所/UNVプログラム・アシスタント
震災復興のその先へ —ネパールで見た「復興」のかたち
2026年7月27日
在ネパール日本国大使館による現場視察(筆者右から2番目)
美しい緑と、険しく連なる山々。ネパールの壮大な自然には、何度見ても目を奪われます。
ネパールも日本と同じく、地震の多い国です。ネパール西部に位置するジャジャルコット郡とルクム・ウエスト郡では、2023年11月3日に発生した地震により、約25万人もの人々が被害を受けました。しかし、地震から時間が経った今も復興は十分に進んでおらず、ひびの入った建物に住み続ける人々や、仮設シェルターでの生活を余儀なくされている人々が数多くいます
地震の被害の状況
こうした状況の中、UNDPは日本とのパートナーシップのもと、2025年3月からこの地域の震災復興を支援してきました。このプロジェクトには大きく二つの柱がありました。一つは、地方政府による行政サービス提供能力の強化、そしてもう一つが生計支援です。
目指したのは、単に地震前の状態へ戻す「復旧」ではありません。将来起こり得る災害にも耐えられる、よりレジリエントな地域社会を築くことを目標とした支援でした。行政サービスの分野では、ひび割れた危険な庁舎に代わり、安全に行政サービスを提供できるよう地方政府のプレハブ庁舎を整備したほか、行政サービスに必要な設備の整備や、防災・減災に関する研修などを通じたキャパシティビルディングを実施しました。一方、生計支援では、コミュニティ向けの灌漑設備の整備などのインフラ支援に加え、収入向上を目的とした養蜂支援などを行いました。
その中でも、私が最も印象に残ったのは、メンタルヘルスや心のケアなどを含む心理社会的支援です。震災復興というと、瓦礫の撤去や建物の再建など、まずは目に見える復興を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。一方で、心のケアは目に見えにくく、その重要性が十分に認識されにくい分野です。そのため、支援が後回しになったり、当事者自身も支援を求めにくかったりするという状況があると思います。このプロジェクトでは、ネパールのローカルNGOとのパートナーシップのもと、メンタルヘルスや心のケアなどに関するさまざまなプログラムを実施しました。子どもから大人まで幅広い世代を対象に、それぞれのニーズに応じた支援を届けることができました。
地方政府とのプレハブ庁舎の引き渡し式の様子
地方政府の庁舎整備、生計向上のための養蜂支援、そして心理社会的支援まで、多角的なアプローチで震災復興に取り組んだこのプロジェクトを通して、私は一つの災害からの復興を支援することは決して単純なものではなく、多様な課題に向き合う包括的な支援が必要なのだと実感しました。
災害大国である日本には、長年培われてきた防災・減災の技術や知見があります。そうした日本の技術や経験が、ネパールとのパートナーシップをさらに深め、より災害に強い社会づくりに貢献していくことを願っています。
UNDPチームとコミュニティとの交流の様子
池田麻衣子(いけだ・まいこ)
国連開発計画(UNDP)ネパール事務所/UNVプログラム・アシスタント
大学卒業後、UNDPネパールにて、国連ボランティアとして同国の気候変動、及び防災・減災プロジェクトに携わっている。