ワヒードが力を取り戻すまでの物語

2022年パキスタン大洪水後の生活再建

2024年3月5日

2022年にパキスタンで発生した大洪水は、無数のコミュニティに壊滅的な被害をもたらし、住民たちに絶望が広がりました。パキスタン南部シンド州のマルック・マアヒに住むワヒード・アリもその一人で、被災後、かつてない困難に直面しました。

「国連開発計画(UNDP)とNGOイスラミック・リリーフ・パキスタン(IRP)は、最も苦しい時期に私たちのそばにいてくれました。日本政府の寛大な支援のもと、彼らが私たちを支えてくれました。」
ワヒードは最も困難な日々の中で受けたサポートを振り返ります。

ワヒードの物語は、パキスタン南部にあるマルック・マアヒの住民が直面している苦悩を反映しています。着の身着のまま避難した住民たちが村に戻ると、そこには壊滅的な被害が広がり簡易な仮設住宅での生活を余儀なくされました。収入源もなく、最低限の生活必需品へのアクセスも限られている状態にあって、ワヒードと彼の子どもたちは空腹と暗闇とともに夜を過ごすことになりました。

「村に戻ると、家には何も残っていませんでした。すべて洪水で流されてしまったのです。頼れるものは何もありませんでした。子どもたちは何日もお腹を空かせて寝ていたのです。」
とワヒードは振り返ります。

洪水後に発生した淀んだ水が農業活動の妨げとなっただけではなく、伝染病を引き起こしとりわけ村の女性や子どもたちが悪影響を受けるなど、状況は悪化していきました。さらに、電気がないことで日没後に蛇に咬まれる危険が増し、女性や子ども、お年寄りなど社会的弱者の人々の夜間の移動が著しく制限されました。

住民たちが絶望の淵に沈む中、UNDPと イスラミック・リリーフそして日本政府の協力によって、一筋の希望の光が見えてきました。衛生キットの提供によりワヒードのような家族が基本的な衛生環境を確保できるようになりました。また、浄水器が配布されたことできれいな水へのアクセスも可能になり、懸命に家族を養っているワヒードの妻のような女性たちの負担が軽減されました。

最も大きな変化は、ソーラーパネルやバッテリーの設置により、夜間も家々が明るく照らされ危険から守られるようになったことです。これは、ワヒードの家族にとって単なる明かり以上の意味がありました。これによって、子どもたちは日没後にも勉強することができるようになり、ワヒードたち家族の生活に影響を及ぼしていた暗闇のサイクルが断ち切られました。さらに、ワヒードと彼の妻は水汲みのために長距離を移動しなくても済むようになりました。ワヒードたちはソーラーポンプを設置して必要な水を確保し、家畜と畑を清潔に保つことができるようになりました。

UNDPパキスタン事務所とイスラミック・リリーフ、そして日本政府の協力によるこれらの取り組みは、洪水で甚大な被害を受けたパキスタン南部マルック・マアヒの住民の喫緊のニーズに応えただけでなく、人間としての尊厳を取り戻しました。きれいな水や改善された衛生環境、持続可能なエネルギーへのアクセスによって力を得たワヒードと彼の仲間の村人たちは、新たな希望と決意を持って生活の再建に取り組んでいます。


Story by: Anum Feroz, Project Preparation & Resource Mobilization Officer, Floods Recovery Programme, UNDP Pakistan
Photos: Talha Usman (Islamic Relief Pakistan) and Shuja Hakim (UNDP Pakistan)