開催報告:「新市場はアフリカにある」第1回日本企業のためのアフリカビジネス共創セミナー ~参入のヒントと次の一歩~

2026年7月17日
Audience seated in a bright conference room watches a slide presentation at the front.

セミナー会場全体の様子

JICA

概要

イベント名:「新市場はアフリカにある」第1回日本企業のためのアフリカビジネス共創セミナー ~参入のヒントと次の一歩~
 開催日:2026年7月3日(金)15:00-17:30
 共催:JETRO、JICA、UNDP、UNIDO
 会場:JICA中部(名古屋)
 参加者:日本企業、支援機関、研究機関、アフリカ人材等


 

JETRO、JICA、UNDP、UNIDOの4機関は、日本企業によるアフリカビジネスへの参入促進を目的として、「新市場はアフリカにある」と題した第1回日本企業のためのアフリカビジネス共創セミナーを開催しました。本セミナーは、TICADプロセスの一環として、アフリカ市場の最新動向や支援制度、先行企業の実践事例を共有し、企業の具体的な行動につなげることを目的として実施され、約30名が参加しました。

なお、後半にはネットワーキングや個別相談会を設け、参加者と登壇者、支援機関との交流の機会を創出しました。UNDPのブースでは、アフリカ各国に広がる現地事務所のネットワークや現地で培った知見をもとに、各国のビジネス環境やパートナー候補、開発課題とビジネスを結びつける事業機会などについて情報提供を行いました。

セミナー後のアンケートでは、有効回答者の90%が「役に立った」と回答し、満足度は100%でした。また、参加者の約7割がアフリカビジネスに既に取り組んでいる、または今後検討したいと回答しており、アフリカ市場への関心の高さが確認されました。

開会挨拶

JICA中部センター所長の上町氏は、アフリカが援助の対象からビジネスパートナーへと大きく変化していることを強調しました。2050年には人口25億人に達する見込みであり、若年人口の増加やAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)の進展によって、世界有数の成長市場となる可能性を秘めていると説明しました。また、日本政府が本年5月に発表した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の進化」にも触れつつ、 JICAによる人材育成、インフラ整備、海外投融資など、日本企業の進出を後押しする取り組みについて紹介しました。 

アフリカ市場概況

JETRO調査部の波多野氏からは、アフリカ市場の最新動向について説明がありました。アフリカは54か国、人口約15億人を擁し、2000年代以降は高い経済成長を維持しています。日本との貿易額も3兆円規模に達し、資源・エネルギー、消費市場、インフラ分野への期待が高まっています。一方で、制度運用の不透明さや為替リスク、インフラ不足などが依然として課題であることも示されました。また、日本企業の進出先としては南アフリカ、ケニア、モロッコ等が主要市場であり、近年はナイジェリアやコートジボワールへの関心も高まっていることが紹介されました。 

Lecture hall with students seated at desks, a presenter at the front near a projector screen.

JETRO波多野氏からのアフリカ市場概況の説明

JICA
四機関による支援メニュー紹介

JICAアフリカ部計画・TICAD推進課の田中氏からは、企業のアフリカ展開を支援する各機関のサービスについて紹介がありました。情報収集段階から現地調査、ビジネスモデル構築、人材確保、販路開拓、事業拡大に至るまで、JETRO、 JICA、 UNDP、UNIDOがそれぞれの強みを活かした支援制度を提供していることが説明されました。企業の成長ステージに応じた支援メニューが用意されており、4機関が連携して企業の挑戦を後押しする体制が紹介されました。 

Photo: Classroom filled with attendees seated at tables, watching a front-screen presentation.

JICA田中氏からの四機関による支援メニュー紹介

JICA
アフリカビジネス協議会の取組

アフリカビジネス協議会(JBCA)事務局長の佐藤氏からは、官民連携によるアフリカビジネス促進の取組が紹介されました。同協議会は約500社が参加するプラットフォームとして、各省庁の補助制度や人材プログラムに関する情報提供を行っています。また、日本で学ぶアフリカ人留学生や高度人材とのマッチング支援にも力を入れており、日本企業の人材確保やネットワーク形成を後押ししていることが紹介されました。

Photo: Presenter delivering a slide presentation to a small audience with laptops in a conference room.

佐藤JBCA事務局長からの概要説明

JICA
企業事例紹介① SORA Technology株式会社

SORA Technology株式会社 の宮原氏からは、ドローンとAIを活用したマラリア対策事業について紹介がありました。同社は、「空から人々の生き方を変える」をミッションに掲げ、アフリカを中心に感染症対策ソリューションを展開しているスタートアップ企業です。現在までに15カ国以上で事業を実施しており、現地スタッフ約40名を擁しながら事業の拡大を進めています。 

マラリアは世界で年間約6億人が感染リスクにさらされ、多くの患者と死者を生み出していますが、その約95%がアフリカで発生しています。同社は、マラリアを媒介する蚊の幼虫が発生する水たまりをドローンで広域撮影し、独自のAI技術によって発生リスクの高い場所を特定する仕組みを開発しました。これにより、従来は人手に頼って行われていた調査や薬剤散布を効率化し、限られた予算や人員でより効果的な感染症対策を実現しています。

また、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用し、ガーナにおいてニーズ確認調査およびビジネス化実証事業を実施しました。現地政府機関や大学、WHO、国際ドナー機関など多様な関係者との連携を通じて事業モデルの検証を進めた結果、薬剤使用量を約70%削減、事業コストを約40%削減する成果を達成しました。こうした実証結果はWHOにも評価され、同社の取組はマラリア対策に関するWHOガイドラインの改訂にも反映されるなど、国際的な制度形成にも影響を与えています。

宮原氏は発表の中で、「アフリカで事業を展開する際には、技術だけではなく、現地政府や国際機関との信頼関係構築、そして成果を客観的なデータとして示すことが重要である」と強調しました。また、今後はマラリア対策にとどまらず、デング熱や黄熱病など他の感染症対策や、気候変動分野への応用も視野に入れていることが紹介されました。

Conference room presentation with attendees on laptops, projector screen showing slide, banners.

SORA Technology株式会社 宮原氏からの事業概要、アフリカの取組等の発表

JICA
企業事例紹介② 株式会社CourieMate

続いて、株式会社CourieMate、代表取締役(当時)(現ヤマハ発動機・経営戦略本部 新事業開発統括部 MSB部長)である松本氏が東アフリカにおけるモビリティ・物流事業の取組について紹介しました。ウガンダおよびタンザニアに約6年間駐在し、現地での事業立ち上げ・運営に携わった経験をもとに、アフリカ市場のリアルなビジネス環境について説明しました。

同社はヤマハ発動機が推進する「モビリティ・サービス・ビジネス(MSB)」の一環として、オートバイや三輪車のリース・レンタル事業を展開しています。アフリカでは、オートバイは移動手段であるだけでなく、バイクタクシーや配送サービスなど収入を得るための重要な生産手段として利用されています。しかし、多くの人々にとって車両購入は大きな負担となるため、同社は車両へのアクセスを容易にするファイナンス・サービスを提供しています。

さらに同社は、急速に成長するEコマース市場を背景に、ラストマイル配送事業にも取り組んでいます。ウガンダの首都カンパラでは深刻な交通渋滞が発生しており、フォーマルな物流網も十分に整備されていません。そのため、配送にはオートバイを活用することが不可欠となっています。一方で、配送先住所が存在しない地域や、商品配達時に代金を回収する「現金引換」が一般的であることなど、日本とは大きく異なる物流環境への対応が求められます。

こうした課題に対応するため、同社はスマートフォンアプリとGPSを活用した配送管理システムを構築しました。配送実績の位置情報を蓄積することで独自の住所データベースを形成し、顧客管理や配送効率の向上を実現しています。また、配送ドライバーに対する研修や安全管理も重視しており、単なる物流サービスにとどまらず、現地の雇用創出や人材育成にも貢献しています。

Man presenting beside projected slide in a bright conference room.

株式会社CourieMate、代表取締役(当時)(現ヤマハ発動機・経営戦略本部 新事業開発統括部 MSB部長)松本氏からの概要説明、アフリカでの取組、JICA Bizの体験談の説明

JICA

松本氏は、「アフリカでは日本の常識が通用しない場面も多いが、その分、新しいビジネスモデルを生み出す余地が大きい」と語りました。また、成功の鍵として、現地の課題を正確に理解し、デジタル技術を活用しながら現地ニーズに合わせて柔軟に事業を設計することの重要性を参加者へ伝えました。

まとめ

本セミナーでは、アフリカ市場の成長可能性に加え、日本企業が活用できる支援制度や実際のビジネス事例が紹介されました。登壇企業からは、アフリカでの事業成功には現地パートナーとの協働や制度理解、長期的な視点が不可欠であることが共有されました。

UNDP、UNIDO、JETRO、JICAの4機関は、今後も日本企業によるアフリカビジネスの促進に向け、情報提供やネットワーク形成、事業化支援を通じて官民連携を強化していく予定です。