国連開発計画(UNDP)は、2019年7月25日(月)にJICA東北と宮城アフリカ協会(AFAM)主催で開催されたアフリカビジネスセミナーをJETROと共催しました。本セミナーは、本年8月に横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を見据え、より多くの企業の皆様にアフリカビジネスのヒントを掴んで頂くべく、地方5都市にて開催してきたセミナーシリーズの最終回として開催されました。
冒頭、外務省アフリカ部アフリカ二課・野口修二調整官が、高い経済成長やアフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)の発効等による地域統合、さらにはモバイルマネーの普及、ドローンの活用、遠隔診療、アプリを通した農作物売買といった急速な変貌を遂げているアフリカの現在に触れ、市場としての可能性を示しました。
TICAD7ではビジネスセクターと共にアフリカの発展を後押しするため、官民ビジネス対話を始めて行うこと、さらには過去最大の150件のサイドイベントが開催されるので企業の方にも参加いただきたいと話しました。また、本年6月には外務省・経産省が共同議長となって対アフリカ投資を促進するための常設プラットフォームであるアフリカビジネス協議が発足したことなどを紹介し、TICAD7を通じて日・アフリカ関係を新たな次元へと飛躍させて行きたいと期待と述べました。
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アフリカ駐日外交団を代表し、フランク・オチュレ駐日ガーナ特命全権大使がアフリカ投資の機会や企業の方々に活用いただける制度について講演しました。日本はこれまで質の高いインフラやレジリエントな社会の構築、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ「修士課程およびインターンシップ」プログラム(以降、ABEイニシアティブ)など様々なプログラムを通じて途上国へ貢献されているが、日本企業もより前向きにアフリカ投資を通じて共に持続可能な発展に向けて貢献して欲しいと期待を述べました。
また、ガーナでは金融機関の再編、Eレジストリーの導入、通関手続きの迅速化、免税措置の強化など、ビジネス環境整備を強化してきたことで、外国からの投資誘致と国の自立を促進し、世界銀行グループの報告書「ビジネス環境の現状2019(Doing Business 2019)」のビジネスのしやすさ指数では 6ポイント上昇したと紹介しました。
最後に、在京大使館も日本企業のアフリカ進出を後押しする用意があるので活用して欲しいと話しました。
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【第1部 アフリカへの企業進出のすすめ】
経済同友会アフリカ委員会副委員長(日立製作所・アドバイザー)の石塚達郎氏が、アフリカの現状とポテンシャル、そして自身の経験から見出したアフリカビジネスの可能性を基に講演しました。
まず、アフリカの近代化について自立型の分散電源など先端技術の活用を実験的に行われていることに触れ、インフラがないなどの課題が逆にチャンスになっていることを説明しました。一方で、アフリカは日本からは距離が遠いことに加え、54カ国が国ごとに法律や規制が画一的でないなど、日本企業が進出を検討する際のハードルについても述べました。ただし、国ごとに異なる法制度があることはアジアでビジネスを展開するうえでも同様であることを考えると、アフリカに限った難しさではないと話しまた。また、従来はインフラ輸出ビジネスが主流だったアフリカビジネスは、ビジネス環境が大きく改善しており、現在では様々なセクターが進出し、進出した国の中で雇用や投資を行って成長していくケースも増えていると説明しました。また、経済同友会が発表したレポート・アフリカ進出中の日本企業30社へのインタビューに基づく調査報告書「アフリカ進出のすすめ」では、企業の正直な声を届けることに注力したため、等身大のアフリカを知りビジネス機会について検討して欲しいと述べました。
最後に、日立建機に所属していた際のザンビアでの部品再生工場の立ち上げの経験を共有しました。現地の日本大使館、ザンビア政府、JICA、JETRO、リスク保険を提供している多数国間投資保証機関(MIGA)等のサポートを継続的に活用してビジネスを進めてきたと話しました。さらに、まじめで丁寧な国民性も伴い、JICAと現地商務省の傘下の団体が開催するKAIZEN大会で優勝したり、品質管理の国際QCサークル大会にアフリカからの初代表として参加し、金賞を受賞したエピソードも共有しました。ザンビアを拠点として周辺地域、アフリカ大陸全域、さらにCISエリアへもビジネスの拡大を検討していること、ザンビアでは今後食糧生産の需要が見込まれ、近代的な設備を備えた養鶏場があるなど、ビジネスチャンスが顕在化していることを共有しました。
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次に、UNDPの石田ともみ・TICAD民間連携コンサルタントより、アフリカのビジネスチャンスと日本企業の進出の際のサポート体制について発表しました。
アフリカの潜在的なチャンスについて、成長市場、人口増加(2015年には12億人の人口が2050年には25億人との増加予測)、急増する中間層(2010年には2.23億人から2020年には4.35億人との拡大予測)、AfCFTAにより約273兆円の市場形成が期待される域内市場など、アフリカ進出が日本の企業への成長機会となると説明しました。日本企業がアフリカでビジネスを行い、同時に社会の発展に寄与することは持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献するため、各種サポートを活用して挑戦していただきたいと述べました。アフリカ進出に必要な情報、ネットワーク、パートナー、資金などを一気通貫してサポートするため、UNDPは、JICA、JETROと連携をして日本の中小企業のアフリカ進出を支援していくことを発表しました。ビジネス機会となる課題発見から事業拡大までのそれぞれの過程において支援事業の用意があるため、三機関のいずれかに相談して欲しいと述べました。
様々な支援制度やパートナーとの連携によりアフリカへ進出している企業、前回のTICADをきっかけにアフリカ市場への進出を進めている日本の企業を紹介し、TICADはアフリカのニーズを知り、自社の事業の展開のきっかけを作るプラットフォームでもあるため、ぜひ足を運んでいただきたいと強調しました。さらに、事業が軌道に乗り拡大を目指すフェーズにおいては、ビジネス行動要請(BCtA)という長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルへの認証制度も活用して欲しいと述べました。
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JICA東北の須藤勝義・センター所長は、JICAの民間連携事業、留学生支援事業について説明しました。
JICAでは、日本の民間企業の技術を開発途上国の課題解決に繋げる支援をしており、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」として基礎調査、案件化調査、普及・実証・ビジネス化事業など数多くの支援事業があるのでアフリカ進出の際は活用していただきたいと述べました。また、2018年時点で54カ国から1,218人が来日し、日本企業がアフリカでビジネスをする上で水先案内人として活躍が期待されるABEイニシアティブについても紹介しました。雷害対策の日本国内シェアトップであり、ルワンダ雷害対策の普及・実証事業を行う音羽電気工業は、実際にABEイニシアティブ生をインターンで受け入れ、現地の情報を得たことがきっかけでアフリカ進出をしたこと言います。このように企業にとっても人材交流がアフリカビジネス開拓のきっかけ、さらには進出のパートナーとなっていると説明しました。
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続いて、気仙沼で漁業ビジネスを行う株式会社カネダイ・佐藤俊輔代表取締役専務が、アフリカビジネスの事例を発表しました。当企業は、1970年代にナミビアの豊富な水産資源にチャンスを見出して進出し、カニ漁業を行なっています。ナミビアの漁業は捕獲量が科学的に計算・管理されており、また非常に衛生的な水産加工場があるなど水産業環境が整っていると紹介しました。また、当企業は震災により被害を受けたことをきっかけにナミビア産のカニの優れた美味しさを再認識し、「かに物語」というブランドを立ち上げ、
有名消費者雑誌で日本で一番良い水産品ギフトとして認められたことも紹介しました。
長く現地でビジネスを行うヒントとしては、ナミビアの漁業資源を活用してビジネスをしていることを念頭におき、短期的利益を追求するのではなく、現地の雇用やパートナーとの関係構築など、長期的な協力関係を築くことであり、このことが自社にとってもパートナーにとっても利益となり発展していると説明しました。
【第2部 アフリカビジネスに向けた留学生の活用】
次に、東北大学の秋田次郎・大学院経済学研究科教授が、アフリカビジネスに向けた留学生の活用について発表しました。東北大学ではアフリカ出身留学生が過去5年で2倍に増加しており、東京大学,京都大学と並ぶ水準(約60名)にあると述べました。また、日本で学ぶ留学生へ日本語キャリア教育やインターンシップのサポートなどを通じて、日本企業で活躍する人材を育てる「DATEentre東北イノベーション人材育成コンソーシアム」のプログラムを紹介しました。特にアフリカ出身学生については,アフリカでビジネスの展開を検討している企業、専門性が合致する企業の方々に同プログラムへの参加を検討して頂きたいと述べました。
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続いて、ABEイニシアティブ生として来日し、東北大学大学院で学んだ後、技術系ソフトウェアの研究開発を行う浜松の企業に就職したイマネ・ブアママ氏(モロッコ出身)が自身の経験と、アフリカと日本の架け橋となる人材としての今度の展望について発表しました。
まず、大学院生時代には、日本の大手製薬会社において北アフリカのスキンケア商品の市場調査や、東北のIT企業、そしてベンチャー企業にて子供向けプログラミングキットのモロッコ向けプログラムの開発に従事したと紹介しました。日本とアフリカの関係構築に貢献する方法を模索していると言い、現在働く企業では急成長するモロッコの自動車産業への進出などを検討していると自身の夢についても語りました。また、日本で少しでも多くの方にアフリカについて知ってもらう機会を作るため、日本にいるアフリカ人学生を特集した雑誌の発行をクラウドファンディングを通じて挑戦していると精力的に活動していることも紹介しました。
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閉会の挨拶では、宮城アフリカ協会(AFAM)のアスィードゥ・アイザック・ヤウ代表から、登壇者・来場者へ感謝の意を述べると共に、アフリカ諸国は10-20年後に大きく発展する可能性を秘めており、日本でもそれぞれの地域や社会でアフリカを知っていただく機会をこれからも作っていきたいと述べました。東北各地の大学で学ぶ大学院生や働いているアフリカ人がメンバーであるAFAMは、日本で学ぶそして働くだけではなく、地域で交流する活動やアフリカを知ってもらえるようなセミナーの開催を多く行なっており、交流を通じて将来AFAMのメンバーは日本へ貢献する人材となるだろう、と期待を述べました。
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日本の企業にとって成長の機会となるアフリカ市場についてきっかけや思いから経験に基づくヒント、さらには進出を検討する際の支援制度などアフリカ進出に係る網羅的な情報を提供するイベントとなりました。会場には地元の企業、アフリカからの留学生、在京大使館からの参加者や、地元テレビ局の取材が入るなど、アフリカビジネスの機会を知ると共に日・アフリカの交流の機会となりました。
今後もUNDPは、JICAやJETRO等と連携してアフリカの発展に貢献する日本企業を応援していきます。