AIの時代に、言語と文化の多様性を守り、次世代へと引き継ぐセルビア発の新たな取り組み
LORYA発表:文字で残された文化遺産をAIで未来へつなぐ
2026年4月16日
2026年4月1日、ベオグラード — 国連開発計画(UNDP)は、セルビア科学芸術アカデミー数学研究所およびセルビア国立図書館とのパートナーシップのもと、さらにフランス政府および日本政府の支援を受け、文字資料としての文化遺産のデジタル化と保存を支援するAIツール「LORYA」を発表しました。4月1日にベオグラードで発表されたこのプラットフォームは、これまで十分に活用されてこなかった言語のテキストデータをAIモデルの開発に取り込むことを目的としています。
フランス大使館のナタシャ・エフィモフ次席公使は次のように述べています。
「フランスは、UNDPおよび日本政府との協力のもとでLORYAの立ち上げを支援できることを誇りに思います。言語の多様性は、包摂的でアクセス可能なAIを実現するうえで不可欠です。多言語対応は国家間のデジタル格差の縮小、偽情報への対抗、人権の促進において重要な役割を果たします。セルビアでのLORYAの成功が、他国への広がりにつながることを期待しています。」
また、在セルビア日本国大使館の齋藤厚次席公使は次のように述べています。
「AIが急速に発展する中で、私たちの学習や意思決定のあり方は大きく変わりつつあります。一方で、その基盤となるデータの信頼性や文脈、質に関する課題も浮き彫りになっています。だからこそ、LORYAのような取り組みは非常に重要です。日本は、技術と文化を結びつけるこうした取り組みを支援できることを嬉しく思っており、今後の協力にも期待しています。」
LORYAは、デジタル化された印刷資料に含まれる文字資料としての文化遺産を、 AIで活用可能な「クリーンで機械可読なテキスト」に変換することで、データ処理を容易にするデジタルツールです。これにより、書籍、雑誌、新聞、手稿など文化的・歴史的価値の高い資料が、研究者、歴史家、学生、さらには一般市民にとっても、学習・研究・新たなAIサービス開発のために活用可能になります。
UNDPセルビア常駐代表のヤクップ・ベリスは次のように述べています。
「セルビアの主要な科学・文化機関との協力により、文字資料としての文化遺産をAI時代に可視化し、存在感を持たせるツールを開発しました。言語と文化的アイデンティティの保全は、より包摂的なAIシステムの構築に不可欠です。セルビアで生まれたこのソリューションが、世界中のコミュニティの文化遺産保護と、グローバルなAI知識への統合に貢献できることを誇りに思います。」
LORYAは、従来のOCR(光学文字認識)では処理が困難だった資料、すなわち複数の文字体系を含む文書、手書きテキスト、非標準的なレイアウトなどにも対応できるよう設計されています。また、本プラットフォームはオープンソースとして公開され、デジタル公共財(Digital Public Good)として正式登録される予定であり、世界中で自由に利用・改良できる形で提供されます。すでにイラクやネパールのUNDPチームが、それぞれの地域に合わせた活用に関心を示しており、このソリューションの国際的な重要性が示されています。
発表後には、「AI時代における言語と文化遺産の保全」をテーマとしたパネルディスカッションも開催されました。パネリストには、UNDPデジタル・AI・イノベーション・ハブのバルボラ・ブロモヴァ氏、セルビア科学芸術アカデミー数学研究所の自然言語処理研究者アンジェルカ・ゼチェヴィッチ氏、セルビア国立図書館のデジタル図書館開発・マイクロフィルム部門責任者タマラ・ブティガン・ヴチャイ氏が参加しました。