開催報告:第3回模擬アフリカ連合日本大会2026年度

ウブントゥ(Ubuntu)、あなたがいるから私がいる

2026年7月6日
Group of people posing behind a long conference table in a meeting room.

第3回模擬アフリカ連合(MAU)日本大会2026年度の様子

2026年5月17日、第3回 模擬アフリカ連合(MAU)日本大会が上智大学で開催され、国内134の大学と15の高校、そしてアフリカ連合加盟42カ国の若者代表団を含めた総勢150名が集結しました。参加者は、全国24都道府県・60以上の教育機関から集まった326名以上の応募者(過去最多)の中から選出されました。

MAU日本大会は、アフリカ連合の交渉プロセスを模擬的に体験する若者主導のプラットフォームです。参加者がアフリカの開発アジェンダに直接関わりながら、アフリカと日本の関係を強化することを目的としています。外交シミュレーション、政策討論、異文化対話を通じて、学生たちは多国間交渉やグローバルリーダーシップの実践的な経験を積み、アフリカの未来に向けた若者ならではの新鮮な視点を提示しています。

2026年度のテーマは、共通の人間性、相互のつながり、そして集団責任を肯定するアフリカの哲学である「ウブントゥ(Ubuntu)」を掲げ開催されました。今年度は、個人の幸福は他者の幸福を切り離せないという相互扶助と連帯を説く、ウブントゥというアフリカの伝統的な哲学をテーマに開催されました。このテーマのもと、参加者は各国の代表として、共通の地球規模課題に対処し、より包括的で持続可能な未来への道を共に創り出すために、若者がどのように国境を越えた協力を実現できるかを探求しました。

 

Wide conference room with panelists on stage and attendees seated around white tables.
 
オープニングセッション:協働と意思を語る声

会議は、上智大学の杉村美紀学長による歓迎の挨拶で開幕しました。杉村学長は、すべてのパートナー、共催者、そして参加者に対して深い感謝の意を表しました。また、上智大学が長年にわたりアフリカ研究に取り組んできたこと、そして学術的な知見と世界の現実的な課題を紐解く架け橋となることへのコミットメントを強調しました。

杉村学長は参加者に対し、MAUを単なる外交のシミュレーションとして捉えるのではなく、真の学び、交流、そしてグローバル市民としての素養を育む場として活用するよう呼びかけました。また、アフリカを理解することは、相互につながり合う世界の共通の未来を理解することでもあると強調し、デリゲート(代表団)たちに対して、オープンな心と好奇心を持って臨むよう促しました。

 

Photo: four panelists at a conference table with banners and logos behind.

 

国連事務次長補兼国連開発計画(UNDP)アフリカ局長のアフナ・エザコンワは基調講演を行い、世界の開発の方向性を形作る上での若者のリーダーシップの重要性が高まっていることを強調しました。また、アフリカはもはや国際社会における受動的な参加者ではなく、未来の解決策を創り出す能動的かつ影響力のあるパートナーであると訴えました。さらに、MAUを「アイデアを試し、視野を広げ、リーダーシップを鍛えるプラットフォーム」であると表現し、参加者に対し、傍観者ではなく貢献者としての自覚を持つよう呼びかけ、リーダーシップは責任、勇気、そして行動する意志から始まるのだと語りかけました。

 

Four panelists seated at a conference table with a banner reading Model African Union.

 

開発協力の観点から、JICA(国際協力機構)理事長特別補佐の中村俊之氏は、気候変動や紛争、不平等といった地球規模課題に対処するための国際協力の緊急性を強調しました。同氏は、JICAがアフリカ全土で数十年にわたり築いてきたパートナーシップを振り返り、持続可能な社会を構築する上での信頼、対話、そして相互理解の重要性を指摘しました。

また、MAUについて、アフリカ連合が掲げる統一と多様性の原則を実践的に具現化したものであると称賛しました。このような取り組みを通じて築かれた関係は、単に会議の場にとどまらず、将来のアフリカと日本のリーダーたちの間で長期的な結びつきを形成していくのだろうと述べました。

 

Three panelists, two women and a man, seated at a conference table with water bottles.

 

日本の外務省を代表して、高橋美佐子アフリカ部長が登壇し、TICAD(アフリカ開発会議)プロセスを通じた日本の長年にわたるアフリカへのコミットメントを再確認しました。高橋氏は、アフリカ連合の6つの公用語で挨拶をしてスピーチを始め、日・アフリカ関係を強化する上での「人と人とのつながり」の重要性を強調しました。

そして、参加者に対し、MAUというプラットフォームを活用して視野を広げ、既成の概念にとらわれず、地球規模の開発課題に対して革新的なアプローチを生み出してほしいと激励しました。

 

Photograph of conference panel; central woman speaks into microphone; logos in background.

 

会議では、アフリカ連合委員会(AUC)の女性・ジェンダー・若者局長であるノンクルレコ・プルーデンス・ングウェニャ氏による特別ビデオメッセージが上映されました。

ングウェニャ氏は、現在アフリカが「アジェンダ2063」の実施を加速させる10年を迎えており、大陸の変革の中心には若者と女性がいると指摘しました。また、今回のテーマである「ウブントゥ(Ubuntu)」は、責任の共有と協力によって前進を目指す「集団的リーダーシップ」の本質を反映していると強調しました。

同氏はMAUを重要なリーダーシップ育成のプラットフォームとして称賛し、アフリカの現在と未来を形作る上での「若者の声の力」を信じるよう参加者を激励しました。

 

Conference room panel discussion; audience around a long table, two screens display a speaker.
 
代表団による開会宣言:アフリカの未来に向けた若者の視点

本会議の主要プログラムの一つとして、アフリカ23か国を代表する大使(参加者)による提言発表が行われました。各国の置かれた背景は多様であるものの、代表団の提言はアフリカの共通の開発優先事項を反映した「3つの主要テーマ」に集約されました。

 

Woman speaks into microphone at a conference table; man beside her, audience in background.

 

若者のエンパワーメントとガバナンス

アフリカの人口ボーナス(豊富な若年層)を、実質的な政治参加へと結びつける必要性を強調しました。持続可能な開発には若者が「変革の主体」として力を持つことが不可欠とし、ガバナンス構造や意思決定プロセスへの若者のさらなる参画を要求しました。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)と人工知能(AI)

デジタル格差の解消と技術革新の加速が急務であると言及し、教育、起業、医療、ガバナンスを支えるための、デジタルインフラ、AIを活用したソリューション、地域的なイノベーションやエコシステムへの投資を提案しました。

社会経済の統合と安定

経済的レジリエンス(回復力)を高める推進力として、地域統合の重要性を強調しました。大陸全体の包括的な成長に不可欠な柱として、貿易、起業、職業訓練、食料安全保障、官民連携に焦点を当てて議論しました。

 

専門技術委員会(STCs)の成果:

参加者はその後、3つの委員会に分かれて決議案の交渉を行いました。

  • STC1(ガバナンス、平和、安全保障)

政策実施のギャップ(隙間)を埋めること。若者の信頼を回復するためのシビックテック(市民技術)の制度化。地域の長期的な平和を保証するため、ルールに基づく枠組みに若者の声を組み込むことを義務付け。

  • STC2(経済統合、貿易、農業)

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の本格運用に焦点を当て、若き起業家のためのデジタル貿易インフラを整備。民間のイノベーションセンターの設立や、現代的な農業教育への資金提供を推進。

  • STC3(教育、科学、技術)

デジタル人材の需要に合わせるための、従来の教育課程(カリキュラム)の改革。地域的なAI学習ハブの創設を承認。政府と国際機関の間の組織的な共同事業(ジョイントベンチャー)の枠組みを確保。

 

投票と決議の採択

審議の終了後、本会議にて投票セッションが行われ、結果は以下の通り記録されました。

  • 第1委員会(ガバナンス、平和、安全保障)決議案:公式に可決(賛成41、反対0、棄権1[チュニジア])。
  • 第2委員会(経済統合、貿易、農業)決議案:公式に可決(賛成41、反対1[ジブチ]、棄権0)。
  • 第3委員会(教育、科学、技術)決議案:公式に可決(賛成42、反対0、棄権0)。

3つの決議案すべてが採択されたことは、アフリカの開発課題に対して「若者主導の実践的な解決策」が急務であるという、代表団の強い合意(コンセンサス)を反映しています。

 

表彰式

会議の締めくくりとして、卓越した貢献を称える表彰式が行われました。最優秀代表団賞(Best Delegation Awards)はJICAの中村俊之氏より授与されました。最優秀ポジションペーパー賞(Best Position Paper Awards)は上智大学の杉村美紀学長より授与されました。

すべての参加者に「参加証明書」が贈られ、組織委員会のメンバーには、その献身的な努力とリーダーシップを称えて「感謝状」が授与されました。

 

Two professionals at a conference, man holding certificate, woman beside him.
Group of five professionals at an awards ceremony; four hold certificates, banners in background.

 

日本・アフリカ文化交流

公式な議事の終了後、アフリカと日本の若者の相互理解を深めることを目的とした、活気あふれる文化交流プログラムが行われました。セッションでは、アフリカの伝統衣装と日本の浴衣がそれぞれ披露され、続いて行われた合同ダンスパフォーマンスでは、参加者が一体となって文化の多様性を共に祝いました。

また、グループディスカッションや「桜とバオバブの木」のアートワーク制作などのクリエイティブな活動を通じて、アイデンティティ、つながり、そしてグローバル市民権について深く考える機会が設けられました。プログラムは、全員での記念撮影とカジュアルなネットワーキング(交流会)をもって終了しました。

なぜMAU(模擬アフリカ連合)が重要なのか

第3回 模擬アフリカ連合は、MAUが単なる外交のシミュレーションにとどまらない存在であることを改めて示しました。それは、若者たちがグローバル・ガバナンスの現実に主体的に関わり、交渉の複雑さを経験し、共通の課題に対する解決策を共に創り出すプラットフォームです。

ここにこそ、MAUの明確な意義があります。アフリカと日本の若者が、理論的な学習を超えて、双方の地域の未来を形作る開発の問いに直接向き合うユニークな空間を提供しているのです。そうすることで、既成の概念を打破し、共感を育み、文化や学問分野を越えた協力を促進しています。

したがって、MAU日本大会は「大陸」「組織」「世代」を繋ぐ架け橋として機能しています。対話だけでなく、信頼、理解、そして共通の目的に基づいた、持続的な若者の参画を通じて、アフリカと日本の関係を強化しているのです。

「ウブントゥ(Ubuntu)」の哲学に導かれた本会議は、ある一つの中心的な事実を再確認しました。それは、「進歩は孤立して達成されるものではなく、連帯、協力、そして集団責任によってもたらされる」ということです。

MAU終了後、参加者たちは、それぞれの教育機関や地域社会へと戻っていきますが、彼らが持ち帰るのは新しい知識や経験だけではありません。グローバル市民としての自覚と、協調的なリーダーシップへのより強いコミットメントです。このようにMAUは、より包括的で平和かつ相互に繋がり合う世界を目指して活動する若きリーダーたちのコミュニティをこれからも形作り続けていきます。

 

Large group of people in a conference hall posing for a group photo.