「SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)」に関するセミナーを開催

2025年5月26日
A diverse group of people stands together, smiling in formal attire against a decorated backdrop.
Photo: UNDP

2025年4月22日(火)、東京において、経団連自然保護協議会と国連開発計画(UNDP)主催、及び環境省共催により「SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)」に関するセミナーを開催しました。

本セミナーでは、経団連自然保護基金と環境省の資金援助を受けUNDPの小規模助成プログラム(Small Grants Programme: SGP)の枠組で実施されている「SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)」第4フェーズの進捗状況が共有されました。同プログラムへの資金提供を行っている日本の民間企業関係者、生物多様性条約(CBD)事務局、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)、学術関係者などを含む約130名が、対面およびオンラインで参加し、盛況となりました。

経団連自然保護協議会の西澤敬二会長は、開会の挨拶において、ティッピングポイントを迎えている地球環境の深刻な状況に歯止めをかけるために、「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた具体的な行動をあらゆるステークホルダーが取る必要があること、そして優良な取り組みやその成果を世界各地へ広げていくことの重要性を強調しました。また、COMDEKSプログラムは、地域コミュニティによる生物多様性の保全および自然資本の持続可能な利用を促進し、「自然と共生する社会」を実現するためのベストプラクティスになると述べました。

環境省の松澤裕地球環境審議官は、2011年からCOMDEKSを支援してきた環境省に加え、経団連自然保護基金がこの取り組みに参画することになったことを高く評価し、生物多様性保全の分野における官民共同出資が画期的であることを強調しました。さらに、同プログラムから多くの優れた実践事例が生まれ、それが世界中に広く発信・促進され、地域主導による持続可能な自然資源管理の推進につながることを期待していると述べました。

UNDP本部(ニューヨーク)のSGPパートナーシップ・スペシャリストであるリサ・エドゥは、COMDEKS第4フェーズの概要と、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の目標との関係性に関して概説し、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)のスニタ・スブラマニアン博士は、COMDEKSプログラムにおいて参加型ツールとして活用されている「レジリエンス指標ツールキット」について紹介しました。このツールは、地域社会や関係者が保全活動の計画、設計、実施、モニタリングに参加することを促進するものであり、地域主導の保全活動と地球規模の生物多様性の優先事項との連携が明確に示されました。

Four speakers sit at a panel with microphones, engaged in discussion, indoors.
Photo: UNDP

また、COMDEKSフェーズ4対象国のうち3カ国からSGPナショナル・コーディネーターも当セミナーに参加しました(カメルーンからエメ・カムガ、コスタリカからアリアナ・アラウホ・レゼンテラ、トルコからゴクメン・アルグン)。各国におけるCOMDEKSの進捗と実施状況に関する彼らの発表により、地域社会がどのようにして環境課題に取り組みながら、生計の向上とレジリエンスの強化を実現しているのか、具体的な活動事例が示されました。

さらに、現地でプロジェクト活動が実施されている重要な生態系やランドスケープ・シースケープ、そこに暮らす人々を紹介する短編動画も制作され、ナショナル・コーディネーターたちのパネルディスカッションの中で紹介されました:

セミナーを総括するにあたり、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局長である渡辺綱男博士は、生物多様性保全におけるランドスケープ/シースケープ・アプローチの重要性を改めて強調し、すべてのCOMDEKS関係者の協働により、ランドスケープレベルでの成果をもたらす具体的なプロジェクト活動が今後さらに展開されることへの期待を表明しました。

最後に、ハジアリッチ秀子UNDP駐日代表は、開発途上国における生物多様性保全支援に対する日本の民間企業の関心と積極的な姿勢を高く評価しつつ、COMDEKSプログラムで採用されている、地域コミュニティ主導の戦略策定および意思決定プロセスが、持続的かつ長期的なインパクトを確保するために不可欠な「地域の主体性(ローカル・オーナーシップ)」の醸成において極めて重要であることを、改めて強調しました。

A diverse group of people seated at tables in a conference setting.
Photo: UNDP

COMDEKSについて

COMDEKS(Community Development and Knowledge Management for the SATOYAMA Initiative)は、地域コミュニティとともにランドスケープおよびシースケープにおける自然資源の持続可能な利用を促進するグローバルな取り組みである「SATOYAMAイニシアティブ」の旗艦プログラムとして、2011年に開始されました。

日本政府環境省および生物多様性条約(CBD)事務局の支援のもと、UNDPはSGPの枠組みを通じて10年以上にわたり本プログラムを実施しています。2011年の開始以来、COMDEKSは3つのフェーズを通じて、20カ国で400件を超える地域コミュニティプロジェクトを支援してきました。

2022年には、第4フェーズに移行し、それまでの環境省に加えて経団連自然保護基金からの支援も受けながら実施されています。同フェーズでは、15カ国で地域主導型のプロジェクトを支援しており、多様なランドスケープおよびシースケープにおいて、生物多様性保全と持続可能な資源管理に向けた取り組みが進められています。

第4フェーズ 対象国:
キルギス、モロッコ、トルコ、ネパール、ベトナム、ブータン、カンボジア、サモア、カメルーン、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、コスタリカ、ペルー、ジャマイカ

第4フェーズ 拠出額:
環境省から7億円、経団連自然保護基金から3億円、合計10億円

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