コロンビアの地域コミュニティが、エコツーリズムと教育を通じて、人とジャガーの衝突を「自然との共生の物語」へと変える
ハンターから守り人へ
2026年3月2日
コロンビアのグアビアレ県では、丘陵地やサバンナの風景が、緑の濃いジャングルへと移り変わる中、地球上で最も古い岩石層からなる大きな岩がそびえ立ち、澄んだ小川や古代の岩絵で飾られた秘境の洞窟を見守る番人のように佇んでいます。
この魅力あふれる地域の熱帯雨林で、曲がりくねった小道を歩いていると、草木が揺れるたびに感覚が研ぎ澄まされます。静けさの中で、強い何かに見つめられているような気配を感じることもあります。
「姿は見えなくても、咆哮が聞こえたり足跡を見つけたりすることがあります。」—ディエゴ・ディアス氏(地元ツアーガイド)
ジャガー(パナテラ・オンカ)
地球で3番目に大きい野生のネコ科であるジャガーは、食物連鎖の頂点に立つ捕食者であるだけでなく、健全な生態系を示す重要な指標でもあります。現在グアビアレを訪れる人にとって、ジャガーの足跡をたどることは貴重な経験です。しかし今でこそ人々を魅了する存在ですが、かつては恐れの対象でした。当時、ジャガーの足跡を辿る人々が手にしていたのは、カメラではなく散弾銃でした。
対立から共存へ
この地域では長い間、ジャガーのような大型ネコと地域コミュニティーとの衝突が課題となってきました。人口増加、狩猟、そして持続不可能な牧畜の拡大により、森林破壊が進み生態系同士の自然の回路が失われました。野生の獲物が減るにつれて、空腹のジャガーは家畜やペットを狙うようになり、その結果、報復としてジャガーが殺され、種の存続が脅かされる事態となりました。
「こうした衝突に関わっていたジャガーは、地域に残っていたほぼ最後のジャガーでした。」— ジェファー・トロザ氏(地域団体ファンタシアス・デ・セロ・アズール)
野生動物と地域の暮らしの双方を守りながらこの問題に取り組むため、2021年にコミュニティ主導のガバナンス戦略が立ち上がりました。保全、持続可能な開発、そして自然との和解のモデルとなることを目指すため、地域団体が結集してグアビアレでジャガー保護回廊を設立しました。
この取り組みはUNDPの支援のもと、世界自然保護基金、北東アマゾン持続的開発公社(the Corporation for the Sustainable Development of the Northern and Eastern Amazon)、コロンビア環境・持続可能開発省との連携により、対立を共存へと転換し、地域の人々とジャガーとの関係構築を目指しています。
2023年には、UNDPが実施するグローバル環境施設小規模助成プログラム(GEF SGP)が取り組みに加わり、保全と生計向上を同時に強化するために、20の地域団体へ技術面や資金面の支援を行い、コミュニティ主導のエコツーリズム事業の展開を後押ししました。
ジャガーの回廊を再生する
グアビアレは、アマゾン熱帯雨林、オリノキアの熱帯サバンナ、そしてアンデス山脈という生物群系をつなぐ要衝であり、ジャガーが自由に行き来できる地域です。
「この戦略の主な目的のひとつは、こうした生物回廊を再びつなぎ直すことです」説明するのは、戦略のガバナンス評議会の一員であるコミュニティ組織・ジャガー保護回廊のウィリアム・エスピノサ氏です。
「ジャガーを守るには、その生息地を守らなくてはなりません。」
ウィリアム氏は、コロンビアの一部の農家が自然に害を与えてしまうのは、自然が人間にどれほど多くの恩恵を与えているかを十分に理解していないためだと指摘します。
「土地と調和して生きるためには、土壌・植物・動物、そして私たち人間との関係を理解し、互いに共存し、依存し合っている存在であることを認識しなければなりません。こうした自然の営みをより合理的に活用し、自然が与えてくれる恵みを最大限に生かすということなのです。」
ウィリアム氏は取り組みの一環として発足した「農民プロモーター」と呼ばれるメンバーの一員です。地域の農家同士が支え合いながら、人とジャガーとの衝突に対処するため、伝統的・科学的知識を活かして、野生動物のモニタリングをしています。ジャガーによる襲撃が疑われると、彼らは現場を訪れてカメラトラップで証拠を確認し、食害防止柵や水源保護など、衝突を減らすための対策を状況に応じて提案します。
恐れを生き物への敬意へ
「かつては、ジャガーを殺すことしか、解決策がないと思われていました」農民プロモーターの調整役を務めるコミュニティ組織ASOPRONAREのクラウディア・コクイ氏は述べます。
「今は、農民同士で成功例を共有すれば、より良い結果を生み出せることが分かってきました。外部の誰かが指示するのではなく、私たち自身が近隣や周辺の村々と学び合うのです。」
現在、グアビアレのジャガー保護回廊は、50万ヘクタールほどに及ぶ生物回廊をカバーし、象徴的な大型ネコ科だけでなく、地域全体の生態系を守っています。
共存へ向かう道としてのエコツーリズム
地域の人々から、衝突を減らし、保全を強化するために不可欠な持続可能な生計手段への支援を求める声が上がったことを受け、小規模助成プログラム(SGP)はこの取り組みに参加しました。その結果、地域の観光団体の運営体制が強化され、多様な体験を提供する4つのルートが整備されました。これらのルートは、エコツーリズムによって収入を得ながら、保全にも貢献するように設計されています。
SGPが支援するコミュニティ主体のエコツーリズムモデルは、住民主導の保全活動を土台に、農業・畜産・漁業などの伝統的な営みと調和しながら、文化的アイデンティティや自然資源を損なうことなく、地域経済を強化する持続可能な選択肢として実現しています。
「観光は経済的な手段です。保全の取り組みを持続可能にするには、収益につながることが大切だからです。」コミュニティベースの観光ネットワークCORCPRESTURG所属の地元ツアーガイド、ディエゴ・ディアス氏は語ります。
「収益につながらなければ、人々は取り組みに愛着を持てず、成果も続きません。これまで地域の持続可能性が進んできたのは、農民自身がこれらの取り組みを“自分ごと”として担ってきたからです。」
またSGPは、養蜂や非木材林産物といった他の持続可能な生計手段も促進し、農民プロモーターたちのモニタリング能力を高めました。さらに、回廊の管理を担うガバナンス協議会の強化を通じて、地域団体が長期的に持続可能な運営を行えるよう支援しています。
「私たち農民プロモーターのネットワークやガバナンス協議会の人々は皆、地域に未来を残したいという思いから、自主的に活動しています。」
— セサル・ガルシア氏(地域団体マナトゥの農民プロモーター)
さらにSGPは、環境保全と教育啓発の取り組みも後押ししており、これまでに約5万本の在来樹が植えられ、約900人の子どもと300人の地域住民が活動に参加しました。
グアビアレのジャガー保護回廊の教育活動を牽引するウィリアム氏は、地域の生物多様性について若者に伝える重要性を強調します。
「将来、この保護回廊について語り、この取り組みを主体的に引き継いでいくのは若者です。自分の土地を心から愛し、誇りに思うには、まずその土地について知る必要があります。」
地域の行動が、地球規模の成果に
SGPは30年以上にわたり、市民社会やコミュニティ組織を資金面と技術面の双方で支援し、地球規模の環境課題に取り組みながら、生計向上をもたらすイニシアティブを後押ししてきました。2015年以降、SGPはコロンビア全土で、生物多様性・土地劣化・気候変動の分野において430件のプロジェクトを支援しています。
国内でのSGPの取り組みについて:SGP Colombia website.
グローバルな活動について: global SGP website