JICAとUNDP、危機対応と復興の現場における「Made in Japan」ソリューション活用に向け官民連携セミナーを開催
2026年6月16日
国際協力機構(JICA)と国連開発計画(UNDP)は2026年6月2日、東京・国連大学において、官民連携セミナー「国際協力とビジネスの交差点~世界の危機対応と復興の現場における 「Made in Japan」 ソリューションの活用に向けて~」を共催しました。
本セミナーは、紛争や災害の影響を受けた国・地域における危機対応、復旧・復興の過程において、日本企業が有する技術、製品、サービスの活用拡大を議論することを目的として開催されました。会場及びオンラインを通じて、民間企業、日本政府関係省庁、国際機関、業界団体、開発金融機関、学術機関等が参加しました。
ウクライナ、ガザ、シリアをはじめとする危機の現場では、がれき処理、地雷・不発弾リスクへの対応、環境回復、インフラ復旧、生計回復など、複合的な課題が相互に関連しています。特に、戦闘や空爆、都市インフラの破壊により発生した大量のがれきは、道路、公共施設、住宅地へのアクセスを妨げるだけでなく、有害物質、不発弾、環境汚染などのリスクを伴う場合があり、安全な撤去、分別、再利用、処理の体制整備が急務となっています。
日本政府とUNDPは、人道支援・開発・平和構築を切れ目なくつなぐ「Humanitarian-Development-Peace Nexus」(HDPネクサス)アプローチを重視し、紛争の根本原因への対処や、中・長期的な平和の構築に貢献してきました。さらに、近年の政府開発援助(ODA)においては、開発途上国の課題解決に貢献するだけでなく、民間企業の優れた技術、製品、サービスをより積極的に現場で活用することが期待されています。2026年4月及び5月に公式訪日したAlexander De Croo(アレクサンダー・ドゥ=クロー)UNDP総裁は、民間セクターが開発分野において果たす役割の重要性及び官民連携の更なる促進に言及しています。
開会挨拶において、UNDPのハジアリッチ秀子駐日代表は、「復興インフラの整備、地雷やがれき処理、エネルギー、水、住宅、デジタルサービス—これらはいずれも、人間の安全保障にとって不可欠です」と述べました。民間セクターが持つ技術やノウハウが現場で活用され、持続可能な形で現地への社会貢献と利益創出を両立することは、結果として支援協力の継続性や地域の自立性にもつながること。それがUNDPが考える支援とビジネスのWin-Winのパートナーシップであることを強調しました。
外務省の大場雄一国際協力局審議官・国際保健外交担当大使は、日本が東日本大震災をはじめとする幾多の災害からの復興を通じて、防災、インフラ復旧、地域社会の再生など、多くの知見と技術を蓄積してきたことに言及し、こうした日本の知見は、危機の影響を受けた国々の復旧・復興においても大きな価値を持つと強調しました。同氏は「紛争後や危機影響下にある国・地域への民間企業の参画は容易ではなく、安全面の懸念、カントリーリスク、現地情報の不足、調達手続や資金調達の課題など多くの障壁が存在する状況だからこそ、本イベントのように、国連機関、日本政府、JICA、関係機関、そして民間企業が一堂に会し、現場のニーズ、参入上の課題について率直に議論する機会は、大きな意義があります」と述べました。
「真に国や地域が立ち直るためには、人道支援だけでなく、経済復興に官民両面で関与していくことが不可欠です」と経済産業省の辻阪高子通商政策局審議官(通商戦略担当)は述べました。同氏は経済産業省のウクライナ、ガザ、シリア、中東での復興過程での日本企業の参入のための幅広い取り組みを紹介し、日本が東日本大震災等の災害を通して蓄積された知見を梃子として、復興途上の地域の経済発展に寄与し、持続可能な成長と平和構築に繋げること、そして、同時に日本企業の新たな海外市場獲得に繋げることの重要性を強調しました。
国際協力機構(JICA)の橘秀治ガバナンス・平和構築部長は、自身が阪神・淡路大震災で被災しその復興現場を当事者として見てきた経験から、建設機械、リモートセンシング、ロボティクス、さらには危険物処理や地雷対策に至るまで、日本企業の強みが、まさに今、国際社会から求められていることを強調しました。その上で、「民間企業や業界団体等関係者の皆様との協業により、日本の技術やアイディア、現場感覚を公的セクターの知見やネットワークと結びつけることで、現地の課題解決と新たなビジネス機会の創出に繋げていきたいと考えております」と述べました。
最後に、日本建設機械工業会(CEMA)の横森昭文国際委員会企画調整部会長は、世界の建設機械市場において、日本は米国に次ぐ世界第2位のシェアを占めており、高い品質と技術力を背景に、国際的な競争力を維持している反面、ガザやウクライナをはじめとする紛争・災害後の復興の現場では、日本の建設機械や企業の存在感は、必ずしも十分に発揮されていないとの認識を示しました。同氏は「裏を返せば、日本の技術や製品、さらには運用ノウハウが、復興の現場においてより一層貢献できる大きな可能性が残されている、ということであり、日本の建設機械メーカーが培ってきた技術力は、持続可能で強靭な社会の再構築に大いに資するものと考えております」と力強く述べました。
本セミナーでは「ウクライナやガザ、シリアといった危機下・復興段階にある国・地域のがれきや地雷の課題、求められているソリューション」、「復興・開発に必要な資金ニーズが拡大する中でのブレンデッド・ファイナンスの活用可能性」、「参加企業をビジネスリスクから守る貿易保険」、「調達に限らない民間セクターのビジネス展開に資する国際機関との連携方法」等についてのプレゼンテーションが様々な組織の専門家から行われました。パネル・ディスカッションではこうした国々のがれき処理や地雷除去の分野で先進的な取り組みを行っている日本企業5社の代表者が登壇し、「危機下・復興段階にある国・地域におけるビジネスチャンス」、「民間企業が直面しうる障壁」、「公的部門に求めるビジネス・アクセラレーター支援」等の見解を共有しました。
また、オンラインで登壇したガザ商工会議所、パレスチナ産業連盟やUNDP現地事務所職員から課題とニーズのプレゼンテーションが行われた他、ワークショップでは会場を9つのグループに分け、「危機下・復興段階にある国・地域でのビジネス展開を考えるうえでの企業の障壁」「公的部門に求めるビジネス・アクセラレーター支援」に関する活発な議論が行われました。なお、ワークショップには外務省、経済産業省、国土交通省、環境省、建設機械工業会 (CEMA)、JICA、UNDPの職員がグループ・ファシリテーターとして参加しました。各グループの議論を通じ、企業関係者と現場の課題に関する相互理解を深めました。
背景
2026年は、2016年の世界人道サミットにおいて、人道・開発・平和の連携、いわゆるHDPネクサスが国際的に提唱されてから10年にあたります。紛争や災害の影響は、緊急人道支援の段階にとどまらず、中長期的な復旧・復興、社会経済の再建、持続可能な平和の実現にまで及びます。
こうした危機に効果的に対応するためには、人道支援から復興、そして持続可能な平和へとつながる継続的な関与が求められます。本セミナーは、日本の復興経験、日本企業の技術、JICA及び国連機関の現場知見を接続し、危機の影響を受けた国・地域における実践的な官民連携の可能性を検討する場として開催されました。
本イベントは、外務省及び経済産業省の後援により開催されました。主要パートナーとして、国土交通省、環境省、建設機械工業会(CEMA)、海外コンサルタンツ協会 (ECFA)、日本貿易保険(NEXI)、国連環境計画 (UNEP)及び国連工業開発機関(UNIDO)の協力を受け、実施されました。