開催報告:アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)合同セミナー(JETRO、JICA、UNDP、UNIDO共催)

アフリカ・日本ビジネス対話:AfCFTAを通じた日本企業のアフリカ市場の可能性

2026年3月31日
Panel discussion with several panelists at a long table on stage, audience in foreground.
Photo: UNDP

2025年に開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のフォローアップとして、国連開発計画(UNDP)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)、国連工業開発機関(UNIDO)は、2026年3月9日にアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)に関する合同セミナーを開催しました。

本セミナーはAfCFTAをテーマとし、日本企業にとってのアフリカ市場の可能性や制度・実務面での活用方法について理解を深めること、またセミナー後に対面で行われるネットワーキングセッションを通してビジネスに有益な繋がりを促進することを目的に実施されました。会場参加とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催され、計223名が参加しました。

セミナーでは、AfCFTAの制度概要および進展状況に加え、日本企業によるアフリカビジネスの可能性、アフリカ企業の視点から見た市場機会、原産地規則などの実務的課題について、多角的な議論が行われました。


冒頭では、JETRO調査部長の藤井麻理氏が開会挨拶を行い、日本企業のアフリカ市場への関心の高まりに言及しました。JETROの調査によると、アフリカ進出日系企業の6割以上が黒字見込みであり、今後1~2年以内に事業拡大を志向する企業も過半数に達しています。こうした結果から、アフリカが「次の成長市場」として具体的な位置づけを得つつある現状が示されました。また、多くの企業が将来的に活用を検討する自由貿易協定としてAfCFTAを挙げており、その関心の高さが確認されました。

さらに藤井氏は、TICAD9において「経済・ビジネス」が主要議題として取り上げられ、AfCFTAが地域統合支援の柱として明確に位置づけられた点を指摘しました。アフリカにおける投資環境の強化と企業活動の拡大を支えるため、JETROはアフリカに配置した9つの海外事務所を活用し、企業のアフリカビジネス支援を強化していくことを述べました。

Speaker at podium with microphone and laptop, presenting in a conference room.

藤井麻理氏

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続いて、JICAアフリカ部長の岩間創氏は、AfCFTAを通じた経済統合がアフリカ全体の経済成長を後押しする重要な要素であると強調しました。JICAはこれまで、アフリカ各国と貿易円滑化、税関制度の強化、産業化支援、人材育成、ASEAN地域で培った制度構築経験の共有など、多岐にわたる分野で協力を進めてきました。

さらに、非関税障壁の高さが輸出拡大のボトルネックであることを指摘し、域内での付加価値創出には加工・生産能力への投資が鍵であると示しました。

加えて、デジタル分野では、AfCFTAのデジタル貿易プロトコルにより越境決済やデジタルID、サイバーセキュリティといった大陸共通のルール整備が進みつつあり、これによってICTインフラやフィンテック、越境ECなどの市場拡大と投資機会の創出が見込まれていることを紹介しました。こうした動きを踏まえ、JICAはデジタルインフラやフィンテック、サイバーセキュリティ等を含むデジタル貿易を中心としたAfCFTAに関する調査を開始し、AfCFTA支援を強化していく方針を示しました。

Man in a suit speaks at a podium with a microphone; face blurred.

岩間創氏

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外務省アフリカ部の今西靖治参事官は、AfCFTAが約14億人規模の単一市場を形成し、日本とアフリカ双方にとって貿易・投資機会を拡大する枠組みであると位置づけた上で、日本政府としてAfCFTAへの支援と関与を重視する考えを示しました。

TICAD9を契機として、日本とアフリカの経済連携強化に関する産学官検討委員会を本年立ち上げる準備を進めていることを明らかにし、「共創」のプロセスを通じて課題対応策や新たなビジネス機会を見いだす未来志向の施策を提案していきたいと述べました。

一方で、AfCFTA活用における課題として、原材料・部品の域外依存や原産地規則・証明をめぐる情報不足、域内輸送コストの高さなどにも言及し、これらは同時に日本の支援機会でもあると指摘しました。また、今回来日したアフリカ企業関係者からの現場の声への期待を述べ、日本企業にとって有望な連携先となり得るとの見解を示しました。

Photograph: man at a podium presenting to an audience in a conference room with a projection screen.

今西靖治氏

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UNDPアフリカ地域局のコミ・ツォウ氏は、AfCFTAの制度概要や進展状況、今後の可能性について包括的に説明をしました。

AfCFTAの特徴として、物品およびサービス貿易の自由化にとどまらず、デジタル貿易議定書による決済・データ保護・デジタル文書システムの整備、女性・若年層トレーダーの参加促進、知的財産・投資や競争政策紛争解決手続など幅広い分野をカバーしている点が強調されました。AfCFTAの進捗状況としては、54カ国が署名し50カ国が批准済みであり、関税スケジュールは48カ国が提出、26カ国が暫定関税譲許表を正式に発効しており(2026年3月現在)、AfCFTAのルールの下で貿易を行うことが可能となっている実態を共有しました。サービス貿易は25カ国が特定のサービス分野における外資参入や規制緩和の範囲を定めたと説明しました。

特に重要な進展として、原産地規則(Rules of Origin)に関して、自動車・繊維分野の規則が正式採択されたことが報告されました。自動車については非アフリカ原産材料を最大60%まで許容し、5年間の移行期間を経て40%以上のアフリカ原産を達成する仕組みとなっています。この規則はアフリカ域内で製造される新車に適用され、中古車には各国の国内規制が継続して適用されることが明確化されました。さらに、オンラインの「AfCFTA関税ブック」により、国および品目に応じた関税率の確認が可能であり、日本企業にとって実務的に有用なツールとして活用が推奨されました。加えて、日本企業との連携が期待される分野として、自動車・部品、農産品、繊維・アパレル、化粧品を含む化学製品、エネルギー(グリーン分野を含む)、インフラ、物流、デジタル経済、金融、健康・医療・教育サービスが挙げられました。特に、食品加工や包装分野において、日本の技術が現地の産業高度化に寄与する可能性が示されました。

Male presenter in a blue blazer speaks at podium to an audience in a conference room.

コミ・ツォウ氏

Photo: UNDP

日本企業の実践例として、まずアパレルブランドCLOUDYの鳥居優美子氏が登壇しました。同社はガーナを拠点に現地で雇用を創出し、伝統素材や工芸を生かしたオリジナル製品を生産し、日本市場で販売しています。

同社は、アフリカ域内貿易見本市(Intra-African Trade Fair:IATF)への参加を通じて、10カ国以上のビジネスパートナーとの関係性を構築し、今後のビジネス拡大につながる機会を得たと述べました。また、高品質な素材や技術が大陸各地に存在することを発見し、アルジェリアの伝統工芸とガーナの素材を組み合わせた新商品開発に着手した経緯を説明しました。特に、現地のかご編みであるドゥームバスケットに高度な刺繍技術やアフリカンファブリックを組み合わせることで、日本市場でも通用する唯一無二の製品へと仕上げる試みが進められていると述べました。また、単なる製造委託にとどまらず、職人のトレーニング、コミュニティ形成、品質基準の策定、認証制度の整備、デザイン・ブランド開発までを含む産業エコシステムの構築が、クラフトを持続可能な産業へと発展させる鍵であると強調しました。

CLOUDYの取り組みは、文化・生活・技能を尊重しつつ、国際市場で競争可能な品質と供給体制を構築する試みであり、AfCFTAが推進する域内付加価値向上と産業化の潮流に合致するものとして、参加者からも強い関心が寄せられました。

Female presenter speaks into a microphone at the front of a conference room as attendees listen.

鳥居優美子氏

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続いて、東京プラント株式会社のサンブ・スレイマネ氏が登壇し、アフリカ各地で深刻な課題となっている水問題に対し、同社が有する日本のフィルタリング技術を活用した取り組みを紹介しました。サンブ氏は、自社の技術が 99%以上の除去性能を有し、従来にないアプローチとして複数地域で試験設置を進めていること、また電力を必要とせず1〜2分で設置できる簡易性を持ち、セネガル政府の認証を取得していることも紹介しました。

さらに同氏は、IATFへの参加を通じて得られた学びとともに、事業の重点領域として、経済価値の創出、社会課題の解決、雇用機会の創出の 3 点を掲げていることを紹介しました。また、水分野に加え、美容、テキスタイル、教育といった周辺分野においても日ア双方の技術や文化資源を生かした共創を進めていること、大学との連携による研究設備の提供やカリキュラム開発を通じて、現地の高度技術人材の育成と産業基盤の強化に取り組んでいると述べました。

Audience of professionals in suits watches a slide presentation projected at the front.

サンブ・スレイマネ氏

Photo: UNDP
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、アフリカ各国の公的機関および民間企業から、ビジネス環境整備、付加価値創出、物流課題、女性の雇用、農家支援など、AfCFTA運用に直結する具体的な視点が共有されました。

デハ・グローバル株式会社のハピネス・アビサイ・ニティ氏(タンザニア)は、同社がアフリカ15か国で事業を展開し、2025年には約4,000トンの農産物を輸出、2026年には5,000〜6,000トンを見込むなど急速な成長を遂げていると述べました。同社はガーナやナイジェリアなど複数国から事業を開始し、現在ではアジア・欧州市場にも進出していると述べました。輸送コストについては、船会社と直接交渉し、特にECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)域内で割引料金の適用を受けることで物流効率を大幅に改善したと説明しました。また、従業員の80%を女性が占め、直接・間接に約20万人の雇用を創出しているほか、500名の農家を支援しており、社会包摂型ビジネスを重視している点も強調されました。さらに、水産分野ではエジプトやケニアから輸入した魚用飼料を活用した養殖事業を進めていることが紹介され、アフリカ企業が域内外のサプライチェーンを柔軟に組み合わせている実態が示されました。

タマラップ・インターナショナル株式会社のタマラ・エグベディ氏(ナイジェリア)は、妊産婦や子ども・家族向けに栄養価の高い健康食品を生産する企業として、ナイジェリアにおける栄養改善ビジネスの重要性を説明しました。地域の食文化に根ざした原材料を用いながら、グルテンフリーかつ糖尿病・高コレステロールなどの健康課題にも対応した製品を展開しています。AfCFTAの主要なメリットとして、「市場アクセスの拡大」「ブランド強化」「物流コスト削減による効率性向上」「製品開発の幅の拡大」を挙げました。また、日本企業との協働が栄養改善と市場創出の両面で大きな可能性を有すると述べました。

エチオピアのコーヒー生産・輸出企業ダイヤモンド・スペシャリティ・ファームのデハブ・メスフィン氏は、自社ブランド「デハブ・スペシャリティ・ファーム」について、ユネスコ生物圏保護区における有機栽培を基盤とし、環境保全と品質向上を両立している点を強調しました。加えて、従業員の65%を女性が占めており、女性の経済的エンパワーメントが農園の持続可能性および品質維持に直結していると説明しました。さらに同氏は、エチオピアのコーヒー産業における近年の重要な制度改革として、以下の二点を挙げました。第一に、外国直接投資が農園レベルまで認められたことで、新技術導入や生産性向上が可能となった点です。第二に、従来制限されていた加工業者による農家からの直接購入が解禁され、農家支援および品質改善がより直接的に行えるようになった点です。これにより、焙煎や高度加工といった付加価値工程を国内に保持しやすくなり、日本企業との協働の可能性も拡大していると述べました。

ガーナ輸出促進局(Ghana Export Promotion Authority:GEPA)のマーティン・アコグティ氏は、同機関がガーナの輸出振興を担う中核的組織であり、ココア豆、金、木材といった伝統的輸出品に加え、非伝統輸出を含む400品目以上、3,500社以上の企業を支援していると説明しました。GEPAは「Export School」を運営し、交渉、ブランディング、包装、国際取引の基礎などを1週間の集中研修として提供することで、中小企業の輸出能力強化を図っていると述べました。また、パイナップルなど需要が高い品目については、栽培用苗の提供などを通じて生産拡大を支援していると述べました。さらに、アフリカ域内外の市場開拓を支援するため、各国の展示会や商談会への参加を後押しし、企業が新規市場へアクセスできるよう取り組んでいると紹介しました。

ナイジェリア輸出促進機関(Nigeria Export Promotion Council:NEPC)のベラ・グバー氏は、同国が「脱石油依存」を明確な国家方針として掲げ、食品、農産加工品、製造品など非石油輸出の育成に注力している現状を説明しました。NEPCは、輸出志向型の中小企業に対し、国際規格への適合支援、技術研修、包装・ブランディング改善、国際展示会への参加支援、物流ルートの開拓など、包括的な支援を提供しています。物流面では、ウガンダ航空との連携により新たな輸出貨物ルートを開設し、東・南部アフリカ市場へのアクセス改善が図られていることが報告されました。治安に関する質問に対しては、主要都市部は比較的安全であり、外国投資案件については政府が治安機関と連携し、優先的に保護する体制を整えていると説明しました。

Panel of speakers seated on stage addressing the audience.
Photo: UNDP
参加者とのQ&A

質疑応答では、アフリカ域内外のビジネスにおける実務課題や投資判断に関する具体的な論点が提示され、各登壇者から制度改革および現場レベルでの対応が共有されました。まず、「一次産品のまま輸出されることによる付加価値の流出が課題であること」が論点として挙げられました。コーヒーやカカオは最終製品化によって大きな付加価値を生む一方、生産国であるアフリカ諸国は十分な利益を得られていないという構造的課題が指摘されました。これに対し、エチオピアのデハブ氏は、焙煎豆の輸出を開始するなど、上流から下流まで国内で付加価値を保持する取り組みが進んでいることを紹介しました。また、GEPAのマーティン氏も、カカオの国内加工比率を50%に引き上げる政策を通じて付加価値化を国家戦略として推進している点を強調しました。これらの事例は、アフリカが単なる原料供給地からの脱却を図りつつあることを示しています。

物流および通関に関しては、輸送日数がビジネスの競争力に直結するとの指摘を受け、各国の現状が説明されました。ナイジェリアでは、将来的に24〜48時間での通関を目指す制度整備が進む一方、現時点では港湾混雑や書類処理の負荷が遅延要因となる場合もあるとされています。これに対しガーナでは、統合税関管理システム(日本でいうNACCS)の運用が進展し、24時間体制での通関が可能となり、書類が整っていれば24時間以内の処理が行われる体制が整備されつつあることが共有されました。タンザニアについては、輸出はおおむね7日、輸入は書類が整えば1〜2日で処理される実態が示され、特に足が早い生鮮品については24時間以内の優先通関が行われるなど、柔軟な運用が紹介されました。

自動車の原産地規則については、アフリカ連合サミットで原産地規則の合意直後であり、各国で国内手続が進行中であるためE tariffなどの制度への反映に時間を要している状況が説明されました。規則は新車に適用され、中古車については引き続き各国の国内規制が適用される点が整理されました。また、エチオピアの電動車優先政策やガーナの中古車規制など、国ごとの政策差異も共有されました。

安全保障および投資促進に関しては、ナイジェリアが外国投資案件の保護体制を強化していること、タンザニアが投資促進機関と大使館の連携により円滑なデューデリジェンス環境を提供していることが説明されました。さらに、GEPAは経済特区における外資企業の長年の操業実績と安全性を紹介しました。加えて、廃棄物の再資源化やグリーン製品開発といった分野において、日本企業の技術が貢献可能な領域が複数指摘されたほか、ケニアとガーナ間で一部認証の相互承認が進展していることも紹介されました。規制統合が進むことで市場参入コストが低下し、日・アフリカ企業間の連携がさらに促進される可能性が示唆されました。

Group of professionals in business attire seated around a long conference table in a bright office.
Photo: UNDP

セミナーの締めくくりに、UNIDO東京事務所の村上秀樹次長が、複数機関が連携して関係者を一堂に集めるこうした機会は非常に貴重であり、日本とアフリカの民間セクター間の実務的連携を前進させるうえで大きな意義を持つと述べました。また、本セミナーで共有されたAfCFTAの最新動向や日本企業・アフリカ企業の具体的事例が、参加者にとって今後の活用のヒントとなることへの期待が示されました。さらに、4機関の連携枠組みに基づき、政策・制度に関する最新情報の提供に加えて、今後はマッチングやビジネスミッションの企画など、民間連携を後押しする取組を検討していることが共有され、こうした取組を通じて、日本とアフリカの連携が一層深まることへの期待が述べられました。

Photograph of a man in a brown blazer speaking at a podium to an audience.

村上秀樹氏

Photo: UNDP

また、本セミナーについてはアンケート回答者の97%が「有益だった」と高く評価しており、特に「現地企業の生の声を聞けたことが参考になった」といった声が寄せられました。また、4機関の支援スキームを一体的に紹介する機会を求める声や、日本企業とアフリカ企業のマッチングの場を期待する意見も多く見られました。

UNDPとしても、引き続き関係機関や民間セクターとの連携を一層強化し、アフリカの投資・貿易促進に引き続き貢献してまいります。

登壇者

開会挨拶:

  • 藤井麻理氏 JETRO調査部長、岩間創氏 JICAアフリカ部長

外務省よりご挨拶:

  • 今西靖治氏 外務省アフリカ部参事官

基調講演:

AfCFTAの最新動向と日本企業の可能性

  • コミ・ツォウ氏 UNDP AfCFTA 地域アドバイザー

IATF参加によって得られた経験とビジネス機会の共有

  • 鳥居優美子氏 CLOUDY 
  • サンブ・スレイマネ氏 東京プラント株式会社

パネルディスカッション:

  • タマラ・エグベディ氏 タマラップ・インターナショナル株式会社(ナイジェリア)
  • デハブ・メスフィン氏 ダイヤモンド・スペシャリティ・ファーム(エチオピア)
  • ハピネス・アビサイ・ニティ氏 デハ・グローバル株式会社(タンザニア)
  • ベラ・グバー氏 ナイジェリア輸出促進評議会(Nigeria Export Promotion Council:NEPC)
  • マーティン・アコグティ氏 ガーナ輸出促進局(Ghana Export Promotion Authority:GEPA)
  • コミ・ツォウ氏 UNDP AfCFTA 地域アドバイザー (モデレーター)

閉会挨拶:

  • 村上秀樹氏 UNIDO東京事務所次長

モデレーター:

  • 峰安悠美氏 UNDP AfCFTA担当 地域プログラム分析官