AIパートナーシップ強化に向けた在京アフリカ外交団(ADC)とのハイレベル協議

2026年6月22日
Boardroom meeting with attendees around a U-shaped table; presentation on screen.
Photo: UNDP

国連開発計画(UNDP)と在京アフリカ外交団(ADC)、国連大学(UNU)の共催により、AIに関するハイレベル協議が開催されました。日本に駐在するアフリカ諸国の31の大使館から14名の大使と46名の代表者、さらに国連大学や東京大学からAIの専門家が参加しました。協議では、2025年8月に開催されたTICAD 9やアフリカ主導の枠組みを踏まえ、AIとデジタルトランスフォーメーション(DX)が包摂的かつ持続可能な開発にどのように貢献できるかを議論するとともに、ガバナンス、技能開発、若者や女性に裨益するデジタルインフラ整備に重点を置き、AI戦略の具体化に向けた連携強化を図ることが目的とされました。

本協議にてADCは、各国の開発優先課題に対して、AIやDXの活用をどのように活用できるかについて意見交換を行いました。議論では、AI・DXを農業、医療、教育、金融、交通などの分野でどのように活用できるかに加え、その実装を支えるデジタル基盤、人材育成、制度整備、資金調達の課題が共有されました。特に、アフリカの多様な言語や文化を反映した主権的な大規模言語モデル(LLM)の開発、データセンターや計算資源の確保、AI人材の育成、国内資本の動員などをめぐり、今後の連携のあり方について具体的な議論が行われました。また、日本やUNDPとの協力関係の構築に向けては、アフリカの主体的なオーナーシップ強化、セクター間連携による繁栄の共有、多国間主義の促進といったTICADの理念に焦点が当てられ、各国の外交官の間でも戦略的な対話が活発に交わされました。

Diverse panelists at a conference table; UNDP banner in background.
Photo: UNDP

ADCのTICAD委員会議長であるジャン・アントワーヌ・デュフ駐日セネガル共和国大使による開会の挨拶で、協議は幕を開けました。デュフ議長は、多数のADCメンバーが参加したことを踏まえ、TICAD8のテーマ「革新的な解決策の共創」という日アフリカの協力強化に向けた強い決意を反映していると述べました。さらに、AIが農業、医療、金融、運輸など幅広い分野においてイノベーションと共創を加速させる強力な原動力だと捉え、アフリカは戦略的推進役となるべきだと強調しました。最後に、イノベーションを社会経済開発の真の原動力とし、SDGsを達成するための具体的な行動を呼びかけるとともに、AIのガバナンス、説明責任、倫理に関しての立場を明確にすることで、TICAD9の公約を履行するように求めました。

次に、国連大学のチリツィ・マルワラ学長は、気候変動や食料安全保障など問題が複雑化する中、多くの参加者が集ったこと自体が解決に向けた強い意思の表れだと評価しました。AIは農業・教育・公共サービスを変革する可能性を持つ一方、データやアルゴリズム、計算基盤を握る者が主導権を持つと指摘し、技術だけでなく医療・農業・言語など応用分野を理解する多分野人材を育成し、積極的に関与することが不可欠だと強調しました。さらに、若年層が多いアフリカの重要性と日アフリカ協力の潜在力を訴え、「横浜宣言」が掲げる包摂的で信頼できるAIの推進におけるUNUの役割に触れ、今回の議論がアフリカのAI政策の具体的成果につながると期待を示しました。

その後、UNDPのアフナ・エザコンワ 総裁補兼アフリカ局長は、不安定な国際情勢の中でアフリカが重視すべき概念として「主権」「規模」「持続可能性」を提示し、DXとAIは未来の理想ではなく経済再構築のための実践的ツールであると強調しました。また、資源搾取による「第2のアフリカ分割」を警告し、国際的取り組みではアフリカ自身のリーダーシップを最優先すべきだと述べました。そして、日本の支援のもとUNDPが展開するUniPods、またフィンテックやアグリテック等を対象としたtimbuktooイニシアティブを紹介し、若者主導のイノベーション創出が進んでいると説明しました。最後に、援助から投資へ、能力構築からエコシステム構築へ、個別プロジェクトから拡張可能なプラットフォームへという戦略的転換を強調し、TICAD10に向け民間連携とデジタル公共インフラへの投資拡大を呼びかけました。

外務省の高橋美佐子アフリカ部長は、外務大臣のアフリカ歴訪を踏まえ、日アフリカ協力がかつてない勢いにあると述べた上で、自由で開かれたインド太平洋 (FOIP)政策演説で示されたアフリカ外交の三本柱を説明しました。PKO訓練やOSAを通じた平和と安定の支援、技術・人材育成やアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)における協力を通じた成長の好循環の促進、そして若者のエンパワーメントによる包摂的社会の実現であり、これらはTICADの理念とも深く響き合うと強調しました。また、DXとAIに関し、アフリカ主導の「大陸AI戦略」を高く評価し、日本の具体的貢献として、東大松尾研究室と連携した3年間で3万人のAI・データ人材育成と500人の専門家養成の取り組みを紹介しました。最後に、今回の協議が政策目標を包摂的開発へとつなぐ契機になることへの期待を示しました。

次に、東京大学松尾・岩澤研究室の松尾豊教授と平川恵鈴氏が、アフリカにおけるAIの活用に関する基調講演を行いました。

初めに、平川氏は、松尾研究室が構築した基礎研究から高度教育、産学連携の研究開発、スタートアップ育成までを包含するAIイノベーション・エコシステムを紹介しました。これまでに42社のスタートアップを輩出していることにも触れました。さらに、同研究室の主力教育プログラムであるオンライン講座「Global Consumer Intelligence (GCI)」と、その英語版「GCI World」の急成長を説明し、世界2万5,000人の受講者のうちアフリカから1万人以上、1,000校超の大学が参加していると述べました。これらの取り組みは、TICAD9で掲げられた3万人のアフリカAI人材育成に大きく貢献していると強調しました。

続いて、松尾教授が登壇し、アフリカ各国が独自のAI戦略を策定しつつある現状を踏まえ、その戦略に共通する5つの主要要素を整理した上で、日本との連携が最も効果を発揮し得る3分野を提示しました。

第1の分野は「AIの導入」とし、日本は農業の作物モニタリングや医療の遠隔診断など、既に成熟した技術を基に実践的なノウハウを共有できると述べました。これらはアフリカの文脈でも応用可能であり、両地域の協力が大きな成果を生む分野として位置づけられました。

第2の重点分野には「主権的大規模言語モデル (LLM)」の開発を挙げ、2,000以上の言語を持つアフリカの多様性を反映した基盤モデル構築の重要性を強調しました。また、日本が自国の文化的文脈に合わせてLLMを開発してきた経験は、アフリカにとって有益な参考になると述べました。

第3の分野は「コンピューティングリソース」に焦点を当て、インフラ不足という課題に対し、地域連携によるデータセンター整備や日本との産業協力が重要な支援となり得ると指摘しました。

最後に、目指すべきは単なる技術移転ではなく、大陸全体に持続可能で地域に根差したAIエコシステムを共創することであると締めくくりました。

Large conference room with attendees around rectangular table and a projection screen at the front.
Photo: UNDP

オープンディスカッションでは、AIの悪用を防ぐ強固な国際的枠組みの構築とガバナンスの重要性が強調されました。モロッコはTICAD 10に向け、アフリカの実情とデータ主権を尊重したAI規範の共同策定を提案しました。また、セネガルからは、コスト削減のための地域共通インフラと、各国のセキュリティやデータ管理における主権維持が重要な課題として指摘されました。こうした議論を通じて、アフリカが技術の単なる消費者ではなく、倫理的で透明性のあるAIの「構築者」として参画するための土台作りが求められていることが確認されました。

その中でも特に、AI人材の育成が急務であると確認されました。ジンバブエは教育分野への連携拡大を求め、AIの早期教育や経済効果を生む「トレーナー育成」の必要性を訴えました。また、モロッコは大学での奨学金を通じたサハラ以南の学生受け入れを紹介し、頭脳流出を防ぎ「頭脳循環」を促進する「モロッコ・アフリカAIフェローシップ」の創設を日本に提案しました。さらに、エジプト大使は、AI格差を広げないためには人材育成が不可欠であると述べ、その実現に資する取り組みとして、東京大学のオープン講座や研修プログラムを高く評価しました。

こうしたエコシステム構築の議論と並行して、社会課題解決に向けた具体的なAIの実装も進んでいます。ジンバブエではUNDP支援のもと、日本のドローンとAIを活用した鳥害防除が農業分野で成果を上げています。モロッコも精密農業や医療用AIツールを展開し、「アフリカによる、アフリカのための」技術活用を実践している点に触れ、国家戦略を大陸規模の実装へ移すため、日本からの「手取り足取りの支援」や持続的な資金提供を伴う強力なパートナーシップへの期待がよせられました。

議論を踏まえて、アフナ・エザコンワ UNDPアフリカ局長は、デジタルインフラが資本動員と直接結びついていることを強調しました。例えば、UNDPがラゴスのAI イノベーション拠点やエチオピアのデータセンターといった基礎インフラを支援している一方で、必要な投資規模は膨大であると指摘しました。そして、「アフリカの開発のためにアフリカの資金を活用する」よう力強く訴えました。 さらに、アフリカ大陸には年金基金や政府系ファンドなど、多額の資本が蓄積されているにもかかわらず、アフリカが高コストで借入を行っている現状を指摘し、AIインフラの真の主体性を確立するためには、国内資源の動員が鍵であり、援助を求める姿勢から、主権的な成長のために現地の投資を活用する姿勢へと転換すべきだと主張しました。

チリツィ・マルワラ国連大学長は、閉会の挨拶において、AI導入を成功させるための4つの柱を提示し、今後の方向性をまとめました。具体的には、大規模言語モデルの誤りによって現地の文化が損なわれるのを防ぐなど、正確性と文化的妥当性を確保する「価値観」、開発者に求められる倫理基準としての「行動」、スタートアップのAI導入を促進するための経済政策や税制上の「インセンティブ」、そして「政策・規制」です。また、アフリカはEUなどの地域と比較して、AIに特化した法整備において大きな格差が存在すると警告するとともに、病院、学校、セキュリティ分野におけるAIの利用を適切に規制する政策を策定できるよう、立法者を育成することが急務であると強調しました。最後に、AIが単なる技術の問題ではなく、日常生活、人間同士の関わり、さらには大陸全体の未来にも関わるものであるとの認識を共有してくれた参加者に感謝の意を表し、締めくくりました。