子どもたちに安全な学習環境を提供
パキスタンで災害に強い学校24校を引き渡し
2025年5月6日

2025年4月23日 — パキスタン北西部・KP州ブネール郡において、耐災性能を強化した24校の合同引き渡し式が行われました。この取り組みは、気候変動の影響を受けやすい地域において、子どもたちが安心して学べる、より安全で災害に強い教育環境を整備する上で、重要な節目となります。
この取り組みは、国際協力機構(JICA)の支援を受けて実施されている、「耐災害型学校インフラ整備(DRSI)プロジェクト」の一環であり、国連人間居住計画(UN-Habitat)と国連開発計画(UNDP)が、パキスタン北西部カイバル・パフトゥンハー州(KP州)政府の初等中等教育局と連携して共同で実施しています。

本プロジェクトでは、KP州8郡にある150校を対象に、構造的な安全性と耐災害性の基準を満たす改修が進められています。これにより、13,595人の女子生徒を含む31,218人の児童・生徒が直接恩恵を受ける見込みです。また、この取り組みは、地震や洪水のリスクが高い地域における学校の安全性向上を重視する「仙台防災枠組」に基づく、パキスタンの国際的な取り組みにも貢献しています。
ブネール郡ではこれまでに24校の改修が完了し、地域社会に引き渡されました。現在、残る1校についても作業が進められています。また、構造的な安全性の強化に加え、衛生環境の改善にも力を入れており、生徒と教職員のために50基のトイレを新たに整備しました。

JICAパキスタン事務所の宮田尚亮(みやた・なおあき)所長は、本プロジェクトが教育インフラの耐災害性を強化するうえで果たす重要な役割を強調しました。構造面および非構造面での対策、特にWASH(水と衛生)分野での整備を通じて、自然災害の影響を軽減し、KP州における地域のレジリエンス強化を目指しています。本事業は、「仙台防災枠組」およびSDGsの目標11(住み続けられるまちづくりを)への貢献も意図しており、3万1千人を超える児童と教職員が、安全かつ強靭な学校環境の恩恵を受けることになります。
式典では、UN-Habitatの上級顧問兼プログラム・マネージャーであるジャウェド・アリ・カーン氏がプロジェクトの目的を紹介し、UN-HabitatがWASHを含む基礎的サービスの提供を含め、構造・非構造の両面から教育インフラのレジリエンスを高める役割を担っていることを説明しました。また、ブネール郡の選定された学校の耐震補強が完了し、児童たちは安心して学べる安全で強靭な教室に戻れるようになったと述べました。
この式典には、カイバル・パフトゥンハー州教育省、UN-Habitat、UNDP、地域のリーダー、教員、保護者、生徒らが参加しました。ブネール郡の教育担当官は、耐災害性のある学校インフラ整備を支援したJICAへの感謝を述べ、特に地震に強い建物が、命と教育の両方を守るうえでいかに重要かを強調しました。
UN-Habitatの副プログラム・マネージャーであるハミド・ムムターズ氏は、当該地域が地震リスクの高い地域であり、学校施設の脆弱性が課題であることを強調しました。同氏は、UN-Habitatが災害レジリエンスに関する国際的な専門知見を活かし、本プロジェクトの全体設計および実施を主導したことを説明。具体的には、構造評価、費用見積、用地計画、建設監督、関係者との調整、能力強化および研修など、包括的な支援を提供しました。
また、耐震補強された学校施設は、建物の強化にとどまらず、伝統的な石造りの構造を生かした保存、屋根の防水加工、採光と換気を改善する新しい窓ガラスの設置、清潔で耐久性のある床材、気候に対応した天井ファンと照明の整備、機能的な衛生設備の整備、そして効果的な授業を支える新しい黒板の設置など、多面的に学習環境の質を向上させたと述べました。
UNDP KP州サブオフィス代表のアブドル・ハシーブ氏は、教育分野における災害レジリエンス強化へのUNDPの継続的なコミットメントを改めて表明しました。「UNDPは、契約管理、財務管理、モニタリングを通じて、インフラと衛生環境の改善、そして学習環境全体の向上を支援してきました。この節目は、教育分野でのレジリエンス構築が災害からの保護にとどまらず、より安全で包摂的な未来への投資であることを示しています」と述べました。
災害に強い学校インフラの整備は、すべての子どもたちにとって安全で包摂的、かつ中断のない教育を確保するために不可欠です。現在の取り組みによって現場では着実な成果が上がっていますが、それでもなお、必要とされる支援の規模に対して確保されている予算は大きく不足しています。

学校のレジリエンスをさらに強化し、子どもたちの命と未来を守るためには、より一層の支援が必要です。これは、すべての人に包摂的で公平な質の高い教育と安全な学習環境を保障することを目指す持続可能な開発目標4(SDG4)の達成にも直結する重要な課題です。