新型コロナウイルス:グローバル危機対応に不可欠な法律情報と法的支援を提供する法研究ラボを新設

2020年8月5日

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ニューヨーク/ジュネーブ—2020年7月22日に発足した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)法研究ラボは、全世界190か国以上から新型コロナウイルス関連の法文書を収集、共有することで、各国がコロナ禍対策を実施するための充実した法的枠組支援の取り組みです。その目標は、個人やコミュニティの健康と福祉を守り、国際人権基準と整合する法律を確保することにあります。

この新法研究ラボは、国連開発計画(UNDP)、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、及びジョージタウン大学オニール国内・国際保健法研究所による共同プロジェクトです。

適切に策定された法律は、堅強な保健システムの構築や、安全で有効な薬とワクチンの評価・承認、より健全かつ安全な公共空間と職場の整備を可能にします。また、WHO国際保健規則の効果的な履行、監視、感染の予防と対策、人の移動と物流の管理、必須の医療サービスを維持する措置の実施の鍵を握るという点においても、極めて重要です。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「科学やエビデンス、人権に根ざした法律と政策により、人々は医療にアクセスし、新型コロナウイルスから身を守り、スティグマや差別、暴力のない生活を送ることができるようになります。法研究ラボは、新型コロナウイルス関連法と政策に関する成功事例を共有するため重要です」と語っています。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)は、その対策と抑制を目指す緊急立法措置の必要性を大幅に高めました。

「各国の新型コロナウイルス対策には、しっかりとした法的枠組みが欠かせません。保健医療関連の法律が、保健セクター以外のセクターによって制定されることは多くあります。グローバル・ヘルスの観点から、法的枠組みは、現状と新興の公衆衛生リスクに対応する国際的なコミットメントと整合性を持たせるべきです。保健医療関連の法律に強い基盤を持たせることは、これまでにも増して重要になっているのです」とテドロス・アダノム・ゲブレイェススWHO事務局長は述べています。

しかし、法律の策定、履行または執行がずさんであれば、社会から隔絶された人々に悪影響が及び、スティグマと差別が根を張り、コロナ禍を終息させるための取り組みに支障を来たすおそれもあります。

ウィニー・ビヤニマUNAIDS事務局長は「有害な法律は、スティグマと差別を悪化させ、人々の権利を侵害し、公共衛生対策を根底から損ないかねません。コロナ禍対策を効果的、人間的かつ持続可能なものにするためには、政府が新型コロナウイルスで影響を受けた人々の人権と尊厳を堅持する手段として、法を用いなければなりません」と語っています。

法研究ラボは、各国がコロナ禍対策として施行した法律のデータベースとなります。その中には、緊急事態宣言や検疫措置、疾病監視、マスク着用に関する法的措置、ソーシャル・ディスタンシング、投薬やワクチンへのアクセスが含まれます。データベースは、さらに多くの国とテーマの追加によって、拡充されることになります。

また、新型コロナウイルスに係る多様な法的枠組みに関する研究も重要な活動となります。こうした分析では、公衆衛生法の人権に対する影響を中心に取り扱い、各国が当面の新型コロナウイルス対策と、コロナ禍終息後の社会経済的復興への取り組みの指針となる成功事例を特定するための支援を提供します。この研究の基盤となったのは、各国が権利の基づく法的枠組みの導入を通じ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための支援として設置されたUHCリーガル・ソリューションズ・ネットワークによる活動です。

「私たちはコロナ禍の中で、どのような対策が成果を上げているかを理解するために法律や政策がどのように用いられているかを追跡、評価する必要があります」ジョージタウン大学国際保健学部で教鞭を執るマシュー・K・カバナー博士は、このように語っています。また、ジョージタウン大学法律センター・オニール国内・国際保健法研究所のケイティー・ゴットシャルク所長は、「私たちは今後、初期のコロナ禍対策で得られた教訓を活かし、最も効果的な法律を施行してゆかねばなりません。それを可能にするのが、法研究ラボです」と付け加えました。


UNDPについて
UNDPは貧困や格差、気候変動といった不公正に終止符を打つためにたたかう国連の主要機関です。170か国において、人間と地球のために総合的かつ恒久的な解決策を構築すべく、様々な専門家や連携機関からなる幅広いネットワークを通じ支援を行っています。

詳しくは、ウェブサイトをご覧になるか、@UNDP / @UNDPTokyo (twitter) とUNDP LinkedInをフォローしてください。

WHOについて
WHOは公衆衛生に関し、国連システム内でグローバル・リーダーシップを発揮しています。1948年に創設されたWHOは、6つの地域に150か所を越える事務所を構え、194の加盟国と協力しながら、健康を増進し、世界を安全に保つとともに、社会的弱者層に奉仕しています。2019年から2023年にかけての目標は、さらに10億人にユニバーサル・ヘルス・カバレッジを提供できるようにすること、さらに10億人を健康上の緊急事態から守ること、そして、さらに10億人により良い保険と福祉を提供することです。新型コロナウイルスに関する最新情報と、コロナウイルスから身を守るための公衆衛生上のアドバイスについては、www.who.intをご覧になるとともに、TwitterFacebookInstagramLinkedInTikTokPinterestSnapchatYouTubeでWHOをフォローしてください。

UNAIDSについて
国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、HIVの新規感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連の死者ゼロという共有のビジョンの達成を目指し、世界を指導、鼓舞しています。UNAIDSは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)国連児童基金(UNICEF)、世界食糧計画(WFP)、UNDP、世界人口基金(UNFPA)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、UNウィメン、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、WHO、世界銀行という11の国連機関による取り組みを取りまとめ、世界的・国内的パートナーと密接な連携を図りながら、持続可能な開発目標(SDGs)の一環として、2030年までにエイズ禍の終息を目指しています。詳しくは、unaids.orgをご覧になるとともに、FacebookTwitterInstagramYouTubeをフォローしてください。

オニール国内・国際保健法研究所とジョージタウン大学について
ジョージタウン大学内にあるオニール研究所は、法律が今後とも、重大な健康問題を解決するための基礎的な手段になり続けるという本質的なビジョンのもと、国内的・国際的な喫緊の健康問題に対する革新的解決策を作り出すために創設されました。ジョージタウン大学国際保健学部は公衆衛生学、経済学、政治学、医学関連の奨学金を支給しています。ジョージタウン大学のグローバル・ヘルス・イニシアティブは、全世界の家庭とコミュニティが抱える健康課題の具体的な解決策を開発するための全学的プラットフォームとして機能しています。詳しくは、oneillinstitute.orgをご覧になるとともに、TwitterFacebookをフォローしてください。

UHCリーガル・ソリューションズ・ネットワークについて
新型コロナウイルス法研究ラボの生みの親ともいえるUHCリーガル・ソリューションズ・ネットワークは、WHO、UNDP、UNAIDS、列国議会同盟(IPU)およびジョージタウン大学オニール国内・国際保健法研究所による共同事業です。この取り組みのねらいは、政策立案者や市民社会団体、その他のステークホルダーと連携し、すべての人々とコミュニティが必要とする十分に良質で有効な増進的、予防的、治癒的、更生的、緩和的医療サービスにアクセスする権利を確保しつつ、こうしたサービスの利用者が、金銭的な苦境に陥らないで済むようにするための法律を策定することにより、各国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するための支援を行うことにあります。


報道関係者のお問い合わせ先:
UNDP | Sangita Khadka – sangita.khadka@undp.org
WHO | Carla Drysdale – cdrysdale@who.int
UNAIDS | Sophie Barton-Knott – bartonknotts@unaids.org
Georgetown University O’Neill Institute | Lauren Dueck – Lauren.Dueck@Georgetown.edu