信頼の力:柔軟な通常資金運用でアフリカの変革を

アフナ・エザコンワ 国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ地域局長

2025年2月6日
A worker in a hard hat, safety glasses, and ear protection uses a tablet in a warehouse with shelving behind.

アフリカの若い女性イノベーター

Photo: UNDP

ニジェールでは、ある女性若手起業家がアグリビジネス企業を営み、政情不安を抱える地域で食料安全保障に貢献しています。ルワンダでは、小規模グリーン投資プログラムが気候変動対策を進める3億円規模の原動力として開花しました。レソトでは、若きイノベーターたちが夢をかなえ、それぞれのコミュニティで雇用を創出し、変革を推進しています。シエラレオネでは、外交官たちが国際舞台でアフリカの声を増幅し、国連安全保障理事会で地域の優先課題の審議を確保しています。これらは単なるサクセスストーリーではなく、信頼の重要性を実証するストーリーでもあります。それは通常(コア)資金への信頼に他なりません。信頼こそが、アフリカの潜在的な力なのです。

私は国連開発計画(UNDP)アフリカ地域局長として、通常資金に財政ギャップを埋める以上の役割があることを目の当たりにしてきました。通常資金のおかげで、柔軟な対応や大胆なイノベーション、そして恒久的なインパクトの創出ができるようになっているからです。とりわけ、それは信頼、すなわち少額の戦略的投資で、並外れた成果を実現できるという考え方に対する信頼の力を実証するものでもあります。

 

小さな投資で大きなリターン

通常資金はアフリカ全土で、インパクトを何倍にも増やせる資源を供与することで、真の変革の火付け役として機能しています。中央アフリカ共和国では、安定化への取り組みに対する100万ドルの資金供与が、2,000万ドルにも上る追加的資金を引き寄せました。ルワンダでは、当初30万ドルで立ち上げられたルワンダ・グリーン投資ファシリティが現在、脱炭素化の取り組みで3億ドルを超える運用を行っています。そしてベナンでは、コア資金投資1ドルにつき、24ドルの非コア資金が投入されています。これらは例外的な事例ではなく、一貫した傾向を示しているのです。

ガーナでは、通常資金からの5万ドルによって、暴力的過激主義対策に関する1,000万ドル規模の脆弱性評価が可能になりました。ガボンでも同様に、15万ドルのコア資金が、環境保護について2,500万ドル、国家開発イニシアティブに係る政府の費用分担として2億ドルの追加資金の呼び水となりました。こうした「投資リターン」は、柔軟な資金供与が指数関数的成長の基盤になるという動かしがたい事実を裏づけています。

 

イノベーションとレジリエンスを解き放つために

通常資金は単なる金融手段ではなく、イノベーションや柔軟性、レジリエンスを実現するための手段でもあります。各国はこれによって、複合的な課題に対処し、従来型の供与資金では得られないチャンスをつかめるようになります。エリトリアでは、コア資金がアフリカ開発銀行から2,000万ドルを確保することに役立ち、3万人のクリーン・エネルギーへのアクセス改善が図れるようになりました。コンゴ共和国では、15万ドルの資金供与で、若者2万人が農産業やヘルステック分野で就業したり、起業したりするための道筋を整備しました。

モーリシャスでは、危機下の状況でこの機敏性が実証されています。コロナ禍のさなかに通常資金からわずか2万5,000ドルの投資を行ったことで、440万ドル規模のeヘルス事業の基盤ができ上がり、デジタル健康記録システムを通じて患者治療に革命を起こすきっかけとなったのです。ニジェールでは、政情不安によってドナーからの資金供与が中断しているため、通常資金が重要な食料安全保障・安定化プログラムの生命線となり続けています。

 

数字に隠されたストーリー

こうした数字の裏には、変革のストーリーがあります。実際の人々の生活が、通常資金の力で一変したストーリーです。レソトでは、農村部の2,500人を超える若者が、STEAM教育イニシアティブを通じてスキルを身に着けましたが、うち200人以上がマスターカード財団などのパートナーから助成金を受けています。これらの若手起業家は345人に雇用を創出し、若者主導のイノベーションが持つ潜在能力を実証しました。

エスワティニでは、インゲロ現地認証スキームをはじめとする取り組みを通じ、イノベーションが活発化しています。2万ドルの投資で零細・中小企業(MSMEs)の市場参入障壁を取り除いたこの変革的プログラムに対しては、政府がスケールアップを目的に84万ドルの資金供与を約束しました。

コンゴ民主共和国では、1,000万ドルのコア資金供与が必須の社会事業への投資6億1,000万ドルへと膨らみ、政府も2億1,400万ドルの支出を行っています。この戦略的投資は、グローバルファンドから1億6,300万ドルの追加資金を確保することにも役立ち、数百万人の保健医療へのアクセスを劇的に改善しました。ルワンダのある若手女性起業家は、通常資金によるプログラムが持続可能なビジネスの立ち上げにいかに貢献したかについて、次のように語っています。「この支援がなければ、私の家族にも、コミュニティにもチャンスは生まれなかったでしょう。」これらはいずれも希望やレジリエンス、機会が生まれるストーリーであり、信頼すべきものが信頼されれば、何ができるようになるかを如実に物語っています。

 

変革のために

通常資金最大の拠出国であるドイツ、スイス、日本、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、デンマーク、韓国、カタールをはじめとする皆様の信頼は、その触媒となる役割を果たしてきました。気候変動から経済不安に至るまで、柔軟な資金拠出は、現地主導型のソリューションと変革を産むインパクトを可能にする生命線となっています。

通常資金への投資によって、プログラムに資金を提供するだけでなく、インパクトを倍増させ、イノベーションを育み、暮らしを一変させるモデルに活力を与えているのです。その明らかな証拠として、コア資金に1ドルが拠出されるごとに、さらに数億ドルの資金が集まり、アフリカ全土で大きな価値と真の変化を作り出しています。

 

アフリカの未来に投資を

信頼、柔軟性、スケーラビリティ、持続可能性、そしてインパクト。

この5つが通常資金の効果を裏づける特徴です。これらが一体となって、コミュニティのエンパワーメントやレジリエンスの構築、希望を育むことを可能とするのです。アフリカのサクセスストーリー、アフリカの潜在能力を信じる力を証明するストーリーを描き続けようではありませんか。皆さんがアフリカを信頼すれば、アフリカはそれに応えられるのですから。