「この会社をはじめて良かった。」

困難を乗り越えるアフガニスタンの女性起業家たち、投資を求めて

2025年5月23日
Women in traditional attire gather in a room, seated on the floor, with one woman standing.

5人の子どもを育てる母でもあるモズガン・モハマディさんは、アフガニスタンのヘラート県パシュトゥン・ザルゴン郡ミルサド村にあるEUとUNDPが再建したコミュニティセンターの責任者で、仕立て業を営んでいます。

Photo: UNDP Afghanistan/Elise Blanchard

アフガニスタンで女性の美容院の営業禁止が命じられたとき、カラエナウ出身のシルゾイさんは自身が経営していた美容院を失い、人生の意味の一つを奪われました。

「心が引き裂かれ、どん底まで落ち込みました」と当時を思い返します。

タリバンが2021年に政権を掌握して以降、女性の労働参加に対する制限が女性の社会的排除を進めており、その結果、UNDPの推計によると、アフガニスタンのGDPは20億米ドル相当失われ、1人当たりの家計所得はほぼ半減しました。

2023年には女性の雇用率がわずか7%にとどまり、移動や就業に対する制約が増える中、小規模事業は、80%の女性主導の世帯にとって、家計を支えるうえで、数少ない現実的な選択肢のひとつとなっています。

連帯・エンパワーメント・支援

女性主導の企業は、連帯、エンパワーメント、心の支え、そして社会的なつながりの場でもあります。

UNDPの支援により、7人家族の唯一の稼ぎ手であるシルゾイさんは再出発をすることが出来ました。今では織物や絨毯などを制作する手工芸ビジネスを営んでいます。 「他の女性たちと一緒に働くことで、精神的に前向きになれました。海外からの注文もあり、自立をする上で自信と希望を持つことができました。」  
– シルゾイさん

A woman in a black hijab stands in a vibrant shop, surrounded by colorful tassels and decorations.

美容院を失ったが、 UNDPの支援を受け新たな事業を立ち上げたシルゾイさん。

Photo: UNDP Afghanistan

2022年、UNDPが女性による既存事業の継続支援や起業を後押しする取り組みを始めたとき、多くの人々は不思議そうに見ていましたが、3年がたち、80,000件のビジネスが研修や資金、新しいマーケットへのアクセス、エネルギー、デジタル化支援を受け、40万人の雇用を生み出しています。多くのアフガニスタンの女性にとって、外で働き、人と繋がることが出来るということは人生を大きく変化させることです。それは自信、癒し、自立、そして希望をもたらします。

社会の一員としての女性たち

ヘラート県でARSサフランを運営するシャビタ・オミドワールさんは「心理的に、女性が社会の一員として関わることは非常に重要です」と話します。EUが資金を提供するUNDPの支援により、彼女は新しい機材を揃え、20人の女性を雇用し、彼女たちの賃金を上げることができました。 

「この会社をはじめたこと、そして他の女性たちに仕事を提供できていることを誇りに思います。自分自身の収入があるおかげで、彼女たちは誰にも依存せず、物乞いする必要がありません。」
– シャビタさん

A woman in a blue shawl arranges flowers between flags, displaying cultural pride.

シャビタ・オミドワールさんは UNDPとEUからの助成金を受け ARSサフランを運営している。

Photo: UNDP Afghanistan/Elise Blanchard
Women sorting saffron flowers in a well-lit room, some wearing black hijabs and one in blue.

UNDPとEUの支援により、ARSサフランは事業拡大と新市場の開拓に取り組む。

Photo: UNDP Afghanistan/Elise Blanchard

2024年の「道徳法」など新たな規制は、女性のビジネス運営の課題を大きく増やしました。UNDPが実施した600以上の女性が経営するビジネスへの調査では、彼女たちの困難の中での不屈の姿が明らかになりました。この法律により、約半数がマーケティング活動に支障をきたし、仕事のための移動が困難になり、そして「男性の付き添い(マハラム)」が求められるため、運営コストも上昇しています。4分の1以上の企業が、厳しい服装規定や男女の分離に直面しています。こうした困難が増す中で、女性起業家たちは資金調達がますます難しくなっています。それでも、彼女たちは挫けません。実に76%が事業を継続する意向を示し、廃業を検討していると答えたのはわずか6%でした。

ビジネス成長のために必要なこと

「マイクロビジネスの罠」から抜け出すことが第一歩です。多くの女性経営者は、銀行の融資を取得することが非常に困難だと感じており、しばしば、ビジネス継続や拡大のためにマイクロクレジットや借金に頼っています。多くは担保を所有しておらず、資産の名義も自分ではないことがほとんどです。また、彼女たちは経営・マーケティング・財務スキルも不足しています。

スーザンさんはカラエナウで飲食店を営んでおり、アフガン風餃子「マントゥ」や「アシャク」を提供し、結婚式やパーティーの注文も受けています。

A woman in a black hijab and mask sits in a brightly lit kitchen while two others prepare food.

スーザンさんは銀行からの融資を試みましたが、条件が厳しく断念した。

Photo: UNDP Afghanistan

私はここまで来られたことを誇りに思っていますが、現在も最大の課題の一つは資金不足です。将来、ヘラート市に飲食店を開いて、海外から来た人たちにも料理を提供するのが夢です」 
– スーザンさん

スーザンさんのように、多くのビジネスは自宅を拠点にしています。こうした事業の成長を支援することにより、アフガン女性たちの精神衛生上の危機を深刻化する束縛を打開することが出来ます。

「自由に働ける場所」

パシュトゥン・ザルゴン郡の農村地域にある新たに再建された女性向けコミュニティセンターでは、経済的自立を目指し、170人以上の女性が裁縫、絨毯織り、刺繍の訓練を受けています。

「私たちにとって、自由に働けるのは初めての経験です。この場所で、女性同士で話したり、悩みを共有したり、笑い合ったり。癒しになっています」
– モズガン・モハマディさん(5児の母でありコミュニティセンター責任者)

Several women in traditional attire sit together, one holding a baby, in a cozy indoor setting.

女性主導のビジネスは、連帯・エンパワーメント・心の支え・社交の場でもある

Photo: UNDP Afghanistan/Elise Blanchard

このセンターでは需要が設備のキャパシティを上回っており、さらなる資金や資材、設備が求められています。

「ここには、自立をするために仕事をして、自身のビジネスを起こし、お金を稼ぎたいと願う女性がもっとたくさんいます」 
– モズガンさん

第二のアプローチとして、すでに何百人もの女性を雇用しているより規模の大きい企業が、事業拡大や課題の克服に取り組めるよう支援しています。資金提供、研修プログラム、市場アクセスの改善に向けた取り組みは不可欠です。

職業訓練は、他に学ぶ機会が限られている女性や少女たちに、就業スキルや生活スキルを提供し、女性が所有する企業は、ネットワーキングや課題解決のための不可欠なプラットフォームにもなっています。

Hands gathered around a brightly colored design book on a patterned rug.
Photo: UNDP Afghanistan
A young girl in a headscarf reads a book, with classmates in the background.
Photo: UNDP Afghanistan

電気で違いを

エネルギーもまた重要な要素です。電力が高価で不安定なアフガニスタンで、太陽光発電により、女性起業家はコストを削減し、生産性を高めることができています。より良い換気や暖房設備が整えば、事業所はより長く営業を続けることができ、労働環境の改善にもつながります。

カブールでは「セーフ・パス・プロスペリティ」社が女性用衛生用品を製造しています。アフガニスタンでは90%以上の女性が適切な用品を持てない現状があり、非常に重要なサービスとなっています。日本政府の支援のおかげで、UNDPは太陽光パネルの設置が可能となり、同企業は稼働時間の拡大とエネルギーコストの削減をすることが出来ました。

「私たちの使命は、シンプルでありながら変革的なものです。それは、社会的・経済的に困難な状況にあるアフガニスタンの女性や少女たちに、尊厳ある雇用の機会を創出することです。私たちは単に機械を動かしているのではなく、アフガンの女性と少女たちの経済的レジリエンスへの道を照らしているのです。」
– チームリーダーのアレゾ・オスマニさん

オスマニさんの仕事の最も困難な側面の一つは、日々仕事を求めて訪れる女性たちに「ノー」と言わなければならないことです。それは、尊厳ある雇用への強い希望と可能性の表れでもあります。

UNDPが、ドナーや主要パートナーの支援と共に行っている女性主導ビジネスへの取り組みは、比較的少ない財政投入で非常に大きな影響を生み出しています。数十万件の雇用を即座に創出しただけでなく、およそ270万人の生活環境を改善しました。

アフガニスタンの女性たちが求めているのではなく施しではなく、成功への公平な機会です。あらゆる困難に立ち向かいながら、彼女たちは収入、雇用 を生み出し、女性と少女たちにとってより豊かで充実した生活を築いています。

金融へのアクセス拡大、融資に対する保証の確保、国際市場における優遇措置の提供、そして支援体制を整備することで、女性経営のビジネスの成長を継続的に後押しし、アフガニスタンのより豊かな未来を築くことができるのです。