UNDP報告書が明らかにしたアフガニスタンの女性起業家の苦闘と逞しさ

2024年4月17日

起業は、女性とその家族にとってのライフラインとなってきた。本調査によると、女性が経営する企業の80%において、その事業収入が女性の主な収入源となっている。また、女性が経営する事業は、他の女性が切望する雇用機会も生み出している。

Photo: UNDP Afghanistan

アフガニスタンでは、困難な課題に直面しているにもかかわらず、女性が経営し、女性が主導するビジネスが目覚ましい強靭性を発揮しており、逆境の中で経済的安定と希望の重要な柱としての役割を果たしています。こうした現状は、国連開発計画(UNDP)が発表した「アフガニスタンの女性起業家の声を聞くー苦闘と逞しさ」と題する包括的な報告書から浮かび上がってきました。

この報告書は、過去3年間に実施された様々なデータから得られた洞察をまとめたものです。2022年の詳細なインタビュー、2023年のフォーカス・グループ・ディスカッション、そして2024年の3,100人以上の女性から回答を得た定量調査のデータが含まれており、アフガニスタンにおける女性起業家の状況の変化について詳細な実相を提供しています。

調査の結果、アフガニスタンの女性起業家はビジネスを行う上で様々な困難と高いコストに直面していることが明らかになりました。深刻化した差別と経営上の制約に加え、著しく弱体化した金融システムにより、調査対象となった3,000人以上の女性のうち41%が借金を強いられており、そのうち銀行やマイクロファイナンス機関から融資を受けたことがあるのはわずか5%に過ぎません。73%がマフラム(付き添いの男性家族)なしには地元の市場にさえ行くことができないと回答するなど、移動の制限も課題をさらに悪化させています。

アフガニスタンでは、1,580万人が食糧難に陥っており、労働年齢の女性世帯員の就業率は過去1年間で6%に半減しています。起業は女性とその家族にとってのライフラインとなり、本調査によると、女性が経営する企業の80%において、その事業収入が女性の主な収入源となっています。また、女性が経営する事業は、他の女性が切望する雇用機会も生み出しています。

カンニ・ウィグナラジャUNDPアジア太平洋地域局長は、 「女性起業家たちは、最も悲惨な状況下で、驚くべき気概、逞しさ、機知を発揮してきました。UNDPとその国際・国内NGOパートナーは、彼女たちのニーズに対して戦略的に焦点を当てながら、7万5,000の零細・小規模事業を支援してきました。私たちは、450万人以上のアフガニスタン人が恩恵を受けたと試算しています。これは1事業あたり月平均42米ドルという、全体のインパクトに比べれば驚くほどの少額で実現したものです。」と述べました。

UNDPは、金融リテラシーや事業管理に関する訓練、事業運営や決済のデジタル化、マーケティングや製品開発、キャッシュ・フォー・ワーク、メンタルヘルス、国内外の市場へのアクセス支援など、さまざまな事業支援サービスと金融への直接アクセスを組み合わせた総合的な対応を通じて、女性起業家を支援しています。

アフガニスタンUNDP常駐代表であるスティーブン・ロドリケスは、 「女性は長い間、アフガニスタンの家庭安泰の原動力であり、地域経済の維持に重要な役割を果たしてきました。UNDPはこうした女性たちの声に共鳴し、彼女たちの貢献とその可能性に投資することによる正の波及効果を引き続き強調します。困難を克服した彼女たちの勇気と逞しさは、不屈の精神と希望を力強く物語っています。彼女たちには国際的な支援が必要であり、この報告書は私たちがどのように彼女たちを支援できるかについて、さらなる洞察をもたらしました。アフガニスタンの未来は彼女らにかかっています。」と述べました。

最近アフガニスタンを訪れ、この調査に参加した起業家たちに会う機会を得たウィグナラジャ局長は、「コミュニティに焦点を当てた国際援助が、将来に向けた変革のために絶対に不可欠であることを目の当たりにしました。日本政府、欧州連合をはじめとする、私たちの使命を信じて現地での活動を支援するドナーに心から感謝しています。彼らの貢献は、地域社会の強化と女性のエンパワーメントに直接役立っています。さらなる支援があれば、私たちはアフガニスタン全土に支援の手を広げ、ダイナミックな起業家たちの将来性を向上させることができます。」と振り返りました。

その他の主な調査結果:

  • ドナーからの支援と市場需要の高まりにより、ビジネスチャンスが拡大している。約66%の女性が、過去1年間でビジネスが成長したと報告している。対外援助が最も大きな要因で(60%)、次いで需要の増加(44%)、製品の質の向上(43%)、価格の低下(28%)が挙げられた。
  • 女性が事業を営む上での制約について尋ねたところ、女性主導の中小零細企業の32%が、ジェンダー差別が事業の市場アクセスに課題をもたらしていると考えており、28%が物資調達の難しさを、19%が正規・非正規両方の融資確保の難しさを挙げている。
  • 女性主導型ビジネスの融資元は、家族(61%)、友人(45%)、他のビジネスからの融資(21%)、正規の銀行(5%)または海外からの送金(5%)、マイクロファイナンス機関(2%)、コミュニティ貯蓄グループ(2%)、ハワラ(0.31%)などであった。
  • 調査対象となった女性の60%が女性世帯主であることから、ビジネスは経済的生存と自立のための道と言える。

本調査について:

UNDPイスタンブール開発のための民間セクター国際センターが、REACH(危機、災害、避難民の状況からの詳細なデータ、タイムリーな情報、詳細な分析を提供する人道イニシアティブ)及びトルコ経済政策研究財団(TEPAV)と共同で実施した本調査は、3,100件の定量的インタビュー、100人以上の参加者によるフォーカス・グループ・ディスカッション、数十件の詳細な個別インタビューを含む、女性起業家に対する広範な調査に基づいている。アフガニスタンの女性起業家の経済状況について、これまでで最大かつ最も包括的な調査のひとつである。