若者の力が人間開発回復の原動力に!
ユース・ムーンショット:Fly Me to the Moon(フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン)
2026年1月23日
Original text
現在、アジア太平洋地域には 7 億人を超える若者が暮らしています。若者たちは 開発の行方をただ見守る「乗客」ではなく、未来へ向かうロケットを操縦する「パイロット」でもあります。若者のアイデア、エネルギー、そしてイノベーションは、その燃料となり、境界を押し広げ、経済、文化、コミュニティを驚異的なスピードで再構築します。しかし、多くの若者は、まさに飛び立とうとするその瞬間に、飛躍を阻む障壁に直面しています。
UNDPが掲げる「ユース・ムーンショット」は、人間開発における若者の大胆な飛躍を目指すビジョンです。その実現には、若者を前進させる力と、足止めする要因の両方を理解し、行動に移すことが不可欠です。若者を加速させる「ブースター」には、特定のスキル、イノベーションへの投資、そして障壁を乗り越えるための支援が含まれます。一方、「ブレーキ」となるのは、知識不足、ジェンダー差別、資金へのアクセスの制限などです。
UNDPとアジア太平洋地域のパートナーが、若者と共にダイナミックな社会経済的未来を築くためには、若者が重視する優先分野に取り組むと同時に、他分野での事業拡大の試みから得られた教訓を活かすことが極めて重要です。 このムーンショット構想を一言で例えると ー それは、ロケットの打ち上げのようなものです!
まず、エンジンを始動! UNDPとシティ・ファウンデーションによる「Youth Co:Lab」のパートナーシップは、ムーンショットを実現するための確かな基盤を築いてきました。本パートナーシップを通じて、これまでに58万人以上の若者を支援し、3,200の起業を後押しするとともに、約16万件の雇用創出を実現しています。 これらの成果に共通しているのは、多分野連携の力が、変革を飛躍させる推進力となっている点です。 Youth Co:Labが実施した「スプリングボード・プログラム」では、地域の投資家から総額2,300万ドル以上の資金援助を受け、Accelerating Asia社をはじめとする専門的なパートナーが、初期段階の社会起業家に対して投資準備支援を提供しました。中でも注目されているのが、DeafTawk社の取り組みです。同社はこれまでに4万5千人以上に手話通訳サービスを提供するとともに、1,100件を超える雇用を創出してきました。このほかにも、若者主導の社会起業による成功事例が数多く生まれています。
- 次に、打ち上げ準備! 若者の市民参加や気候変動キャンペーン、起業診断などを提供するテック・プラットフォームは、若者を社会変革の担い手として位置づけています。その象徴的な例が、国際司法裁判所(ICJ)による気候変動をめぐる国家の義務に関する勧告的意見の発表です。これは、アジア太平洋地域発として国際法史上、画期的な瞬間となりました。気候変動に対する世界の責任をあらためて問い直したこの判断は、バヌアツ政府の支持とUNDPの後押しのもと、6年前に太平洋諸島の学生たちが立ち上げた取り組みが原動力となって実現したものです。さらに、UNDPが主導する「Regional Civic Tech Innovation Challenge」では、透明性ある参加型ガバナンスを目指してデジタルツールを活用する若手イノベーターから、250件を超える応募が集まりました。これこそ、世界を新しい軌道へと飛躍させる若者のリーダーシップです。
- 打ち上げ後は、安定した軌道保持!大学から投資家まで、1,000を超えるパートナーと共に構築された地域のエコシステムが、若者の挑戦を継続的に支えます。UNDPは若者のエンパワーメントを重視し、大学との連携を通じてその基盤を強化してきました。現在、60を超える教育機関がこのミッションに参加しています。その一例が、日本の金沢工業大学(KIT)との協働事業です。UNDPはYouth Co:Labをとおして、持続可能性の概念を自らの人生と結びつけインタラクティブに学ぶことができる「Beyond SDGs 人生ゲーム」の開発に協力しました。
また、政府との新たな連携も進んでいます。UNDPは、イスラム開発銀行(IsDB)や各国政府と協力し、「若者起業エコシステム診断 (Youth Entrepreneurship Ecosystem Diagnostics)」を展開しています。このデータ活用型ツールは、政策、資金、人材、イノベーションなどの観点から総合的な起業エコシステムの評価を行うことができます。本診断は、若者を国家の制度や政策に組み込むことを目的に、これまでアジア太平洋地域の12か国で実施されています。分析結果は各国の若者に関する政策の形成を後押しし、若者の優先課題を長期的な開発戦略に反映させる動きにつながっています。 このようにして、政府の次世代に向けた計画や資金配分のあり方に影響を与えることで、若者主導のイノベーションが傍流から本流へと移行しています。
ムーンショットには多様なプレイヤーやパートナーの力が不可欠。それは、ある素晴らしい音楽が、歌詞、異なるリズムとテンポの楽譜、そしてそれを世に広める声によって命を吹き込まれるようなもの。私たちの取り組みも、さまざまな人々の力が合わさって初めて実現するのです。本記事の題名でもある「Fly Me to the Moon」は、もともとバート・ハワードによって作曲され、ケイ・バラードが最初に録音しました。その後、フランク・シナトラとカウント・ベイシー楽団が世界的な名曲へと押し上げ、クインシー・ジョーンズが特別なアレンジを加えました。テンポが活気づき、空間と動きに自由が生まれ、その変化に合わせて歌詞も進化しました。そして、この歌がアポロ計画と結びつき、「ムーンショット(月面着陸)」の象徴の一部になったのです。
UNDPの試算によれば、若者とともに取り組むプログラムへの1ドルの投資に対し、27.5ドルの収益が見込まれています。さらに、アジア太平洋地域に暮らす2,100万人の経済的な見通しが改善されれば、域内のGDPは1,900億ドル以上増加すると予測されています。この地域には、世界の若者の60%以上が暮らしています。若者への投資は、単なる賢い選択ではなく、未来に向けてもう一度月を目指すための、最も有望な軌道なのです。若者が主体性を発揮し、より多くの機会にアクセスできるようにするには、障壁を取り除き、打ち上げの準備を整え、そして若者自身が進むべき航路を描けるようにすることが必要です。