アフリカの観光業の再活性化を通じて、新型コロナウイルスからの回復を支援すべく議論を実施

開催報告「Boosting Africa’s Transformative Power of Tourism」

2021年6月29日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行による壊滅的な影響からアフリカが立ち直るには、深刻な打撃を受けた観光業を競争力のある新たな機会へと変える必要があります。2021年6月21日にオンラインで開催された国連のハイレベル・イベント「Boosting Africa’s Transformative Power of Tourism」において、日本政府、国連、アフリカ連合およびアフリカ諸国の代表者たちが発信した重要なメッセージです。

2022年にチュニジアで開催予定の第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に先立って開催されたこのイベントには、国連加盟国、国連機関、地域・国際機関、民間セクターが参加しました。議論を通して、復興の基盤として持続可能性を確保するには、積極的な観光政策が重要であると強調しました。

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このような困難な時代、観光業に依存しているコミュニティが利益を得られる政策を支援し、実施する必要があります。具体的には、アフリカ大陸内の接続性の改善に向けた航空輸送政策、中小企業のスキル強化、デジタル化や資金調達、マーケティングやプロモーションの強化、包摂性のある政策やグリーン投資の促進を目指す取り組みなどが必要です。短期的には、入国要件や現地での安全・保安に関する明確かつシームレスなプロトコルを実施し、発信して、旅行者の信頼を回復することも重要です。

TICAD8のホスト国である国連チュニジア政府代表タレク・ラデブ大使は、次のように語りました。「観光業は、アフリカにおける繁栄、貧困削減、持続可能な開発、そして安定の柱です。観光業がアフリカの復興や経済統合に貢献し、変革的かつ包括的な成長を後押しします。」

国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長のアフナ・エザコンワは、「世界が再び開かれる今こそ、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が生み出す「One Africa市場」に向けて、競争力を解き放ち、ニッチな分野を特定し、可能性を最大限に引き出すイノベーションとグリーン主導の観光モデルや政策を展開すべき時です。」と述べました。

2019年には、アフリカ大陸の観光業は世界で2番目の成長を遂げました。7,000万人もの海外旅行者がアフリカを訪れ、旅行・観光業がアフリカ大陸の国内総生産のうちの約1,700億ドルを占めました。しかし、コロナ禍によって、すべての社会・経済セクター、特に観光業が壊滅的な影響を受けました。国連世界観光機関(UNWTO)によると、2020年の全世界の海外旅行者数は10億人減少し、アフリカを訪れた海外旅行者数は74%減、観光関連の輸出は64%減となりました。回復には時間がかかり、地域によってばらつきがあると予想される中、アフリカの観光セクターをより持続可能で包括的なモデルへと調整しつつ、支援を行うことが重要です。

UNWTOアフリカ地域開発局局長のエルシア・グランドコート氏は、「観光業は、アフリカ全土のコミュニティにより良い復興の機会を与え、社会の主流から取り残されたグループや女性、若者に雇用と機会を提供します。コロナ危機への対応が続く中で、私たちは安全で持続可能なアフリカ観光の再開を加速させるために協力しなければなりません。」と語りました。

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今回のハイレベル・イベントでは、コミュニティの経済復興に資すると同時に、若者や女性の雇用や起業を促進するように、持続可能性を念頭に置きながら観光セクターを変革する必要性についての議論も交わされました。

国連事務次長・国連アフリカ担当事務総長特別顧問のクリスティーナ・ドゥアルテ氏は次のように語りました。「旅行・観光業界の混乱が、アフリカの旅行・観光のビジネスモデルを再考し、競争力を向上させる新たな機会をもたらしています。この勢いを利用して、既存の旅行政策や枠組みを再構築し、観光業を内発的で持続可能な社会経済成長の力とすることが重要です。」

Mastercard Foundationルワンダ担当責任者であるリカ・ルイガンバ氏は、「観光業に従事するアフリカの若者たちは、常に素晴らしい才能や創造性、レジリエンスを見せてくれます。そうした若者たちへの投資は、彼らの粘り強さの証明となると同時に、私たちがパンデミックを乗り越えた先に逞しさを手にする可能性を秘めた、希望の行動でもあるのです。」と述べました。

世界銀行のシニア観光スペシャリストであるショーン・マン氏は、「競争力のある観光セクターがアフリカの国々にとって非常に重要であり、より環境に優しく、レジリエンス(強靭性)が高く、より包括的な復興を優先させなければなりません。」と語りました。

一部の国々は国境を再開し始めていますが、パンデミックの波はアフリカ大陸全域で猛威を振るい続けており、旅行・観光業は切迫した状況が続いています。このような状況下でのAfCFTAの運用開始は、国内および地域内の旅行をさらに促進すると期待されています。AfCFTAには、航空輸送コストの高さ、接続性の悪さ、柔軟性に欠けるビザ制度といった、国境を越えた移動の制限やインフラ・輸送上の課題を緩和でき、さらに地域のバリューチェーンや付加価値のある製品の製造を促進する可能性があります。観光業はAfCFTAのサービス貿易議定書の優先分野の一つであるため、大きな期待が持てます。

国連アフリカ連合常任オブザーバーのファティマ・キャリ・モハメッド大使は、「アフリカを抜きにして観光を語ることはできません。アフリカの自然・文化遺産には、古代のイノベーションの始まりや人類の歴史が詰まっています。AfCFTAの運用開始のおかげで、アフリカ大陸は観光業の今後の成長を支援する機会を得ていると私は確信しています。AfCFTAはより良い復興に不可欠です。」と述べました。

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このイベントは、2021年のアフリカ対話シリーズのテーマ「文化アイデンティティとオーナーシップ:マインドセットを再形成する(Cultural Identity and Ownership: Reshaping mindsets)」ならびにアフリカ連合の2021年のテーマ「芸術、文化、遺産:私たちが望むアフリカ建設のための梃子(Year of the Arts, Culture and Heritage: Levers for Building an African We Want)」のフォローアップの一環として行われたハイレベルなパネルディスカッションであり、社会がパンデミックから回復するのを助け、持続可能な開発や持続可能な平和をはじめとするすべての人々にとって好ましい変化を促す観光の可能性を再考する機会になりました。

アフリカの回復とより良い復興のために国際社会が一丸となって支援を拡大することを目指して、提言はTICAD8の準備に向けた世界的な議論に反映される予定です。

UNDP総裁のアヒム・シュタイナーは次のように語りました。「アフリカにおける観光業の未来は輝いています。そして、今こそ観光セクターが社会を前進させる時です。AfCFTAはこれまでにないほどアフリカ大陸を開放するでしょう。しかし、観光セクターの単なる経済改革の枠を超えなければなりません。例えば、自然界に対する観光セクターの付加価値を測る必要があります。こうした取り組みは、新たな刺激策、金融支援、投資を動員するために不可欠であり、大陸全土における手頃なブロードバンドへのアクセスを拡大するための新たな努力も必要になるでしょう。」

国連日本政府代表部の石兼公博大使は、「アフリカのストーリーを再構築する機会を捉え、アフリカの豊かな自然・文化財、人的資源の可能性を最大限に引き出しましょう。2022年にチュニジアで開催されるTICAD8は、ポストコロナ時代にアフリカ全土でより強靱で活力ある社会や経済を目指す、世界全体での取り組みを後押しするでしょう。」と述べました。


アフリカ開発会議(TICAD)とは
アフリカ開発会議(TICAD)は1993年、多国間の協力やパートナーシップ強化を通じてアフリカの開発、平和、安定を促進するために日本政府が立ち上げました。

TICADの発足は、アフリカの開発ニーズに国際的な関心を再び喚起する契機となりました。この20年間で、TICADはアフリカの「オーナーシップ」と国際的な「パートナーシップ」の原則のもと、アフリカの開発のために国際的な支援を動員し、またそれらを持続させることを目的とした世界的に開かれた多国間の主要なフォーラムへと発展しています。

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イブ・サバーグ(Eve Sabbagh)
UNDPニューヨーク戦略的コミュニケーション・スペシャリスト
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