希望とユーモアが紡ぐ未来 ‐ 大阪万博でのウナの旅路
2025年10月16日
ユイさんと彼女の母親にとって、大阪・関西万博への訪問はただの見学ではなく、特別な意味を持つ時間でした。
高校2年生のユイさんは、この日学校を休んで国連パビリオンを訪れました。UNDPの環境チャンピオンAI・ウナ(Una)のタトゥーシールを腕に貼っている間に、彼女の母親は「娘は将来は国連で働きたい」と熱く語ります。
スタッフから「インターンシップもありますよ」と勧められると、「高校生でも応募できますか?」と即座に質問。大学入学まではまだ数年あり、その夢を叶えるにはまだ少し時間がかかり、国連で働く目標が少し遠く感じてしまうようでした。
一方、6歳の娘を連れた別の母親は、その日が2回目の万博来場で、今回は特に国連パビリオンを訪れることを楽しみにしていました。国連の主要な目標のひとつである「環境」を象徴するシンボルを丁寧にスケッチし始めた娘の姿を見守りながら、自身もかつて国連で働く夢を抱いたことがあると語ります。しかし、別の目標に導かれ、開発の道ではなく金融の世界でキャリアを積むことになりました。だからこそ、「娘には国連の価値観に触れてもらいたい」と願い、国連の仕事に関心を持つ想いを子どもに託していました。
今年の国連パビリオンのテーマ「人類は団結したとき最も強くなる」は、多くの来場者の心に響いていました。国連で働きたい、より良い世界をつくりたい―そうした想いは、UNDPの展示を訪れた多くの人々に共通していました。UNDPは日本国内ではまだあまり周知されていない存在かもしれませんが、理念として掲げている「平和・人権・協力」は、日本の憲法や政策とも共通しています。
11歳の双子、ケイトくんとレイトくんもまた、国連パビリオンに引き寄せられた来場者のひとりでした。大阪で体感した急な雨や落雷の増加の理由を知りたいと感じたのです。
「ウナと話して、急な雨や雷の理由が気候変動に関わっているのだとわかって面白かった」と2人は語ります。
50代のオオツキさんは、バスツアーのプログラムの一部として国連パビリオンに立ち寄りました。ウナと話す事で、気候変動の影響についてより理解することができたといいます。ここ数年、大雨の後に自宅周辺の山からこれまで以上に土砂が流れ、道がぬかるむ事が増えてくるようになっていましたが、その理由を深く考えたことはありませんでした。ウナとの体験を通じて、気候変動と結びつけて理解するようになり、そのリスクへの視野が広がったと話します。
もちろん、すべてが真面目な学びのみではありません。今回の展示のハイライトのひとつは、お笑いコンビ「フースーヤ」(谷口理さん・田中ショータイムさん)の来場です。ウナによるメッセージ動画や国連の没入型映像を観た2人は、ウナと共にユーモラスかつ学びのあるやり取りを展開しました。
谷口さんはウナに「一目惚れしました!」と告げ、デートに誘いましたが、ウナは「私はAIなので誰ともお付き合いはできません」ときっぱり拒否。それでも会話は続き、大阪の桜の季節から国際的な課題に至るまで、気候変動の影響をユーモアを交えて語り合いました。
さらに、谷口さんの提案で「マジカルバナナ」という連想ゲームを行いました。
トップバッターのウナが「地球温暖化」と言えば、谷口さんは「海面上昇」、ウナは「氷河の融解」、谷口さんは「ホッキョクグマの危機」、ウナから「生息地の喪失」…と続き、田中ショータイムさんが「レベル高すぎ!これは今までで一番高度で洗練されたマジカルバナナだ!」とツッコミを入れる場面も。笑いと学びが同時に生まれる時間でした。次々と繰り出されるウナの答えに、谷口さんは「もう対抗できない、降参だ」と言い出したのに対し、ウナが「私はまだ終わっていません」と粘る場面も。結局そこでマジカルバナナは終了しました。ウナは「とても楽しかった」と笑顔で締めくくり、「また今度一緒に遊びましょう」と誘いましたが、谷口さんは即座に「二度としない!」と答え、会場は笑いに包まれました。
最後には「気候変動に立ち向かうための約束」を、フースーヤのお二人にそれぞれホワイトボードに書き込んでもらいました。2人は冗談交じりに「呼吸をやめる」と書き、二酸化炭素の排出を減らすにはこれが「芸人にできる一番のことだ」と主張しました。これに対しウナは「呼吸をやめるのは健康に良くありません」とツッコミを入れつつ、節電や節水といった代替策を提示しました。
こうした呼びかけは、他の来場者の誓いとも重なります。食品ロスを減らす、車ではなく公共交通や徒歩を選ぶ、ごみのポイ捨てに気を付ける、ペットボトルの使用を減らす…。小さな行動の積み重ねが、大きな変化につながります。
環境が直面する課題は、お笑いコンビにとっても決して笑い事ではありません。パフォーマンスを終え、田中ショータイムさんは日本のメディアに向けて「国連の没入型映像には、美しい自然と、健康な地球で友達と楽しくサッカーをする子どもたちが映し出されていました。みんなで一緒に力を合わせて、この美しい地球を守っていきたい」と熱く語りました。
そして、学校を休んで万博を訪れたユイさんも、すでに「水を無駄にしない」という誓いを胸に、地球の為に第一歩を踏み出していました。学校の授業を欠席しても、この日彼女と母親がパビリオンで得たものは、一生の学びとなったに違いありません。ユイさんは最後「もし一人ひとりが自分にできることを実行すれば、環境へのダメージも少しずつ、でも確実に取り戻せるはずです」と希望に満ちた思いを語ってくれました。