太平洋島嶼国、世界をリードする日本の国境管理とデジタル化を学ぶ
2023年10月6日
東京発:フィジー共和国、パラオ共和国、そしてバヌアツ共和国の太平洋島嶼国の代表が9月30日より一週間日本を訪問し、世界をリードする日本の国境管理におけるデジタル化について知識を深めるため入国管理に携わる関連機関の視察を行いました。
日本政府の掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想では、ルールに基づき自由で開かれた国際秩序を実現するために、地域全体の繁栄を確保していくという考え方を推進しています。その枠組みの一環として、日本政府は太平洋島嶼国においても海上保安や国境管理業務へのデジタル化の導入を奨励し、観光を主な収入源とする太平洋島嶼国の国境管理の安全性と効率性を向上すると同時に、経済効果を高める方針を積極的に支援しています。
日本政府は国連開発計画(UNDP)太平洋事務所を通じてフィジー共和国、パラオ共和国、そしてバヌアツ共和国を対象に実施している「新型コロナウイルス感染症危機に対する国境管理能力強化計画」事業を支援し、今回の訪日視察はこの事業の取り組みの一つとして行われました。
新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、医療対応能力の限界にある太平洋島嶼国では厳格な国境閉鎖措置により入国者制限を設けていました。しかし、2023年春に国境の開放に踏み切って以来、港や空港において、入国を円滑に進めるための国境管理や入国者の検疫・隔離体制の強化及びデジタル化の導入が早急に求められている状況です。例えば、フィジーの内務・入国管理省は、政府のデジタル化政策と並行して「国境管理と安全対策5か年計画」(2023-2028年)を立ち上げ、入国カードのデジタル化の具体化を検討しています。本事業では、そういった国の優先事項をテクノロジーやイノベーションといった解決策を用いて後押しています。
このような事業目的を達成するため、世界でいち早く入国システムのデジタル化を進めた日本のデジタル庁が公開したVisit Japan Webに着目したフィジー政府は、今年4月にデジタル庁とオンライン会議を設け入国カードのデジタル化に至った経緯や過程について情報交換を行いました。これらを参考に、フィジー政府はVisit Japan Webに類似したデジタルシステムを導入する計画を掲げ、同じくデジタル化を推進する隣国パラオ、バヌアツ政府とともに日本を実際に訪れ各入国管理機関からより具体的な方針や対策を学ぶ機会を要望していました。
実際に、デジタル庁が2023年3月に導入したVisit Japan Webにより、これまでの紙媒体の入国カードに代わり、入国者が事前にオンライン上で入国の際に必要な個人情報や旅程の提出、そして関税申告が可能となり、入国の際に必要な手続きの大幅な簡略化に成功しています。このようなシステムは、現在、オーストラリア、ニュージーランド、そしてシンガポールなどでも採用されており、事前に申請したデータをもとに入国時にはEゲートなどのシステムを通じて短時間で入国・通関できる体制にあります。
視察団は日本滞在中にVisit Japan Webを立ち上げたデジタル庁をはじめ、羽田空港の税関、入国管理局、動植物検疫所、そしてVisit Japan Web制作・運営に携わっている三菱総合研究所、NTTデータグループなどを訪問し、同システム導入に当たり検討した法整備、他省庁・機関との調整、ソフトウェア、サイバーセキュリティ対策、運営予算や管理方法などを具体的に学びました。
デジタル庁国民向けサービスグループ統括官村上敬亮氏は、「世界をリードする日本の入国手続きのデジタル化事業、Visit Japan Web導入の経験を太平洋島嶼国の政府と共有することができ大変嬉しく思っている。今年5月のデジタル庁職員のフィジー訪問時にも内務・入国管理省主催の入国カードのデジタル化に関する国家協議に参加しデジタル化の利点や問題点について議論を交わしたが、今度は、フィジーを含め、パラオ、バヌアツ政府の代表が日本のデジタル化政策を実際に入国管理の現場を訪れて体感し日本の技術を伝えることができた。今後、各国でのデジタル化を実現できるよう協力していきたい」と述べ、太平洋島嶼国への支援の重要性を確認しました。
視察団の代表、フィジー内務・入国管理省の事務次官メイソン・スミス氏は、情報管理の一本化により入国管理業務の時間を短縮し、シームレスな対応を可能とする入国カードのデジタル化はフィジー政府にとって不可欠だとしたうえで、「観光業を主な産業とするフィジーにとって、コロナ危機に対応した入国制限が撤廃された今、入国カードのデジタル化により情報管理を徹底し、収集したデータの安全性を高め、安心して観光客が訪れるようなシステムを構築することは目前の課題だ。このような学びの機会を提供していただいた日本政府に深い敬意を示したい」と述べ、日本と太平洋島嶼国とのパートナーシップの重要性を再認識しました。
UNDP太平洋事務所のムンクトゥヤ・アルタンゲレール常駐代表は、「デジタル化の構想は明確に描かれていても、それを具体化する過程では多くの困難に直面する。今回の視察旅行を経て、日本で得た知見をもとに各国の政府が独自のデジタル化を進めていくことを期待する。その中で、日本のデジタル庁をはじめ、太平洋島嶼国政府間での交流を深め、より効率的で安全な国境管理体制の構築を可能とするようUNDPは事業を通じて支援を継続していきたい」と述べ、日本政府の協力に感謝の意を表しました。