中央アジアの若者によるデジタル暴力防止

強靭なコミュニティ構築に向けた地域間知識交流

2025年12月11日
Group photo of diverse attendees at a conference, some holding certificates, with flags and banners.
Photo: UNDP Kazakhstan/ Saltanat Boteu

カザフスタンの首都アスタナで、大学におけるデジタルやジェンダーに基づく暴力への革新的な対策を模索する、地域事例コンテストが開催されました。

この取り組みは、カザフスタンの国連開発計画(UNDP)が、日本政府の支援による無償資金協力「第二次中央アジアにおける暴力的過激主義防止のためのコミュニティ強靭化及び域内協力促進計画」の一環として、カザフスタン国内の国連機関である国連人口基金(UNFPA)、世界保健機関(WHO)、国連女性機関(UN Women)、国連児童基金(UNICEF)と連携して実施しました。イベントには、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンから集まった30名の若者が参加しました。

世界的にデジタル化が加速する中、オンライン上での過激化やデジタル暴力のリスクは拡大しています。特に、最も活動的でありながら脆弱な層である若者にとって深刻な課題となっています。SNSやオンラインプラットフォームは、偽情報の拡散、個人情報の漏えいや不正利用、さらにはAIを用いたディープフェイクの作成にますます利用されています。こうしたデジタル暴力は、若者の心理的な強靭性を損ない、社会における疎外感を助長し、過激化の温床を生み出します。

国際的な調査によると、デジタル暴力は着実に増加しており、世界の女性の38%が、個人情報の拡散や画像の改ざんといったオンライン被害を経験しています。

Photo: Man in suit speaks at podium, holding microphone, with multiple international flags behind.
Photo: UNDP Kazakhstan/ Iris Mambur

「日本は、女性の権利を守り、社会の強靭性を向上するための世界的な取り組みを引き続き強く支持しています。ジェンダーに基づく暴力の根絶は、個人の幸福のためだけでなく、持続可能な開発にとっても不可欠です。」 と、飯島泰雅駐カザフスタン共和国日本国特命全権大使は述べました。

専門家は、こうしたリスクの増大は、AIツールの広範な利用可能性、統一されたデジタルセキュリティ基準の欠如、教育者や保護者への研修不足、そしてディープフェイクやデジタル操作に関する法的な規制の欠如と関連していると指摘しています。

Photograph of a man in a suit speaking into a microphone, with US, Japan, and UN flags behind.
Photo: UNDP Kazakhstan/ Iris Mambur

「今日、認識とデジタルリテラシーは、個人が自らを守り、より責任あるオンライン環境を育むために不可欠な安全スキルとなりつつあります。UNDPにとって、この要素は、パートナー国におけるデジタル公共インフラの構築を推進する上での重要な優先事項であり、カザフスタン政府との協力によるプロジェクトを通じて、デジタルスキルやAIリテラシーの促進にも取り組んでいます。」と、カタジナ・ヴィヴェルニアUNDPカザフスタン常駐代表は述べました。

UNDPの『人間開発報告書2025』では、テクノロジーへのアクセスに加え、女性や女児の平等を達成するためには、デジタルソリューションの創出者やテクノロジーの課題を形成するリーダーとしての女性や女児の役割の拡大が必要だと指摘しています。

Man in a suit speaks into a microphone, holding a blue folder, with flags in the background.
Photo: UNDP Kazakhstan/ Iris Mambur

「若者の参加によって開発されたプロジェクトは、単なるイノベーションにとどまらず、私たちの国や地域全体で、人間の尊厳と女性や女児の権利を守るための具体的な貢献を示しています。カザフスタンはすでにジェンダーに基づく暴力に対する法制度を強化しています。この文脈において、デジタル暴力防止に関する地域協力はこれまで以上に重要であり、アルマトイにある中央アジア・アフガニスタン持続可能な開発目標(SDGs)地域センターは、この取り組みのための効果的なプラットフォームとなり得ます。」と、ディダル・テメノフ カザフスタン共和国外務省 多国間協力局長は述べました。

今回のコンテストは、実際に発生した事例を基に企画されました。地域の大学で、女性学生の写真が無断で収集・公開され、AIを用いて不適切な画像が生成され、屈辱的な「ランキング」がまとめられたクローズドのオンライングループが発見されたのです。参加者は、このような問題に対抗するためのアプローチについて議論しました。AIを活用した不正コンテンツの検出、大学のデジタルポリシーへの新要素の導入、被害者支援の仕組みなどが検討されました。

「このコンテストを通じて、たった一つのアイデアでも現状を変えられることを実感しました。私たちは、オンライン空間を恐怖ではなく、機会の場にしたいのです。私たちのチームはその一歩を踏み出したと信じていますし、若者こそが変革の原動力になれると思います。」 と、優勝チームのキャプテンであり、タジキスタンから参加したルクニヤ・ニヨズベコワ氏は語りました。 

この取り組みは、UNDP、UNFPA、UNICEF、WHOのメンターや専門家に加え、大学、民間テクノロジー企業、市民社会の代表者による支援を受けて実施されました。