UNDP、地震で被災した南東部トルコで復興活動を開始

2023年3月19日

UNDPは180万ドルを投入しての初期支援を行う一方、国際社会による更なる大規模な支援を要請

トルコの11州を襲った大地震により、46,000人以上が命を落とし、270万人(この地域の総人口の約20%)が避難、そして214,000棟以上の建物が破壊されました。地震発生から1カ月が経過しましたが、支援の必要性は依然として膨大、資源は不足していると、国連開発計画(UNDP)は警告します。国連の緊急要請としてトルコ支援のために要請された10億米ドルのうち、現時点で資金が提供されているのはわずか10.4%で、「早期復興」のための支援は皆無です。

現在、政府主導の緊急対応として避難生活を強いられている190万人に避難場所を提供していますが、震災直後に建てられた多くの仮設テントキャンプに代わって、コンテナ街が急速に形成されつつあります。また、野心的な急速的な住宅再建計画も発表されています。

しかし、ニーズは依然として深刻です。2023年3月4日から6日にかけてアディヤマン、ガジアンテプ、ハタイ、カフラマンマラス、キリス、サマンダグを訪問し、地元当局と話をしたUNDPトルコ事務所のルイザ・ヴィントン常駐代表は次のように語ります。「今こそ国際連帯の時です。これはその範囲と規模において前例のない災害であり、適切に対応するためには、それに応じた規模の多額の支援が必要です。」

損害と復旧にかかる費用については精査中ですが、地震による金銭的な被害が莫大となることは確実です。世界銀行が2023年2月27日に発表した衛星を使った迅速評価によると、物理的な被害額は342億米ドルに上り、復興にはこの2倍から3倍かかるとしています。UNDP、世界銀行、欧州連合(EU)の支援を受けて政府が主導する長期ニーズ評価では、すでに1000億米ドル以上の被害が見込まれています。この評価が完了すれば、その結果に基づき、2023年3月にブリュッセルで開催されるEUドナー会議において、復旧・復興資金を要請することになります。

ヴィントン常駐代表は、「重要な資金を待っている間においても、復興に向けた取り組みを開始するのに無駄にできる時間はありません。災害対応から1ヶ月が経過した今、私たちはすでにコミュニティの再建と日常生活を取り戻すのに必要な措置を講じる必要があります」と訴えます。

このため、UNDPは、小規模で開始しても急速に拡大できるよう設計された5種類のイニシアティブに対して180万米ドルを拠出しました。このうち、50万米ドルは国連中央緊急対応基金(CERF)から、残りの130万米ドルを内部資金と他プロジェクト資金からの転用分でまかないます。

まず初めに、UNDPは、新しい3つの「コンテナ街」を支援し、住民に衛生設備(トイレなど)と廃棄物管理施設を提供します。この取り組みは、トルコのUNDP親善大使を務める人気俳優のメルト・フラト氏の活動から着想を得ています。フラト氏は自身が共同創設したNeeds Map(İhtiyaç Haritası)を通じて、政府と連携しながらハタイに避難民のための仮設コンテナ・コミュニティを作ろうとしています。アディヤマンとカフラマンマラスの仮設住宅にも同様の支援が提供される予定です。

UNDPはすでに、自然保護センター(DKM)との協力のもと、ハタイに11万米ドルの廃棄物管理や衛生設備(トイレなど)を納入しています。衛生設備のほかにも、女性と女児のニーズに特別な注意を払う必要がある分野は数多くあります。国連人口基金(UNFPA)は、地震発生地域に暮らす妊婦22万6千人のうち、2万5千人が今月中に出産すると推定しています。

次に、UNDPはハタイ、アディヤマン、カフラマンマラスに「移動式デイケアセンター」を設立し、トルコの家族・社会政策省(Ministry of Family and Social Services)と協力して、被災地の高齢者や障がい者に社会的ケア、紹介サービス、車椅子や介護用おむつなどの必須備品を提供する予定です。

「被災地の自治体は、一様にこれを優先的なニーズだと訴えています。震災により、多くの高齢者が孤立し、心に傷を負っています。この移動式施設は、申請書の記入を手伝ったり、失くした杖を交換したり、親身になって話を聞いたりと、手を差し伸べるのに役立ちます。」とヴィントン常駐代表は説明します。

第3に、文字通り壊滅的な状況となったハタイでは、 UNDPは地元の女性協同組合の連合体であるKEDVと協力して移動キッチンを設置し、被害の大きかった地元の生産者から食料品を購入しながら、困っている人々に温かい食事を提供する予定です。このように、UNDPは、救援資金を地元のビジネスにとってのライフラインとなるような形で活用することを目指しています。

第4に、被災地以外に避難している多くの避難民を支援するため、UNDPは産業技術省と協力して、生計を失った人々が再び立ち直れるように、中小企業への助言などの支援と、的を絞った職業訓練を提供する予定です。

第5に、UNDPは、地震で被害を受けたかけがえのない文化遺産を保護するための設備と専門知識を提供します。ヴィントン常駐代表は、「この地域は古代文明の発祥地であり、多様性が地域のアイデンティティの特徴となっている文化の交差点です。この類まれな遺産を修復することは、地域社会の精神を再建する上で中心的な役割を果たすでしょう。」と述べます。

さらに次のように説きます。「支援ニーズの大きさを考えれば、これらの活動はささやかなものです。しかしながら、通常の生活を取り戻すためにすでにできることを見せることで、国際社会からの資金援助を促せればと思っています。」

UNDPの地震対応の活動重点分野については、こちら(英語)をご覧ください。