気候変動の混乱により、家を追われる人々
世界難民の日
2025年6月20日
移住者数は過去最高水準に達している。気候変動対策は根本原因に対処することが必要。
気候変動による移住はすでに現実のものとなり、拡大を続け、さらに大陸も越え人々の生活を破壊しています。レジリエンス(強靭性)への真剣な投資がなければ、さらに多くの命が失われ、コミュニティが根こそぎ奪われ、苦労の末に築いた進歩が失われるでしょう。
昨年10月、ハリケーン・ミルトンによりアメリカでは約600万人が自宅を離れざるを得なくなり、これは嵐による避難としては過去最多の記録となりました。ブラジルでは、イギリスの国土に匹敵する広さが洪水に見舞われ、77万5千人が避難を余儀なくされました。チャドでは、1年間で洪水により家を追われた人の数が、過去15年間の合計を上回りました。
2024年末時点で、災害によって避難を強いられた人は4,600万人にのぼりました。これは過去10年間の年間平均のほぼ2倍にあたります。そして、これは単なる数字ではありません。その一人ひとりに、狂わされた人生、失われた住まい、閉ざされた未来があります。
チャドでは、1年間で洪水により自宅を追われた人の数が、過去15年間の合計よりも多い。
2023年には、難民および庇護申請者の70%が、気候変動に対して非常に脆弱な国々からとなっています。最も深刻な影響を受けているのは、こうした脆弱な国家ですが、支援は最も少ないのが現実です。これらの国々が主要な気候資金から受け取る支援は、1人あたりわずか2米ドル。一方で、より安定した国々ではその額が162ドルに跳ね上がります。
これは単に不公平というだけではなく、極めて危険な短絡的判断です。適応とレジリエンス(強靭性)に1ドル投資すれば、将来的に10ドルの利益が生まれるとされています。対応が遅れれば遅れるほど、代償は大きくなります。 そして人々が故郷を追われるほど、社会の不安定さは深まっていくのです。
しかし、前に進む道はあります。 平和、安全、そして避難の問題を同時に考慮した気候対策を設計することで、根本的な原因に取り組むことができます。国連開発計画 (UNDP)は、気候変動対策と危機対応・復興支援を結びつける長年の経験を有しています。それらを通じ、各国が力強い解決策を前進させている具体的な事例が見えてきています。
イエメンでは、太陽光発電式の水供給システムが、限られた資源を巡る緊張を緩和している。
イエメンでは、太陽光発電による給水システムが、資源の奪い合いによる緊張が高まる前に、それを和らげています。UNDPとKSreliefの支援によるプロジェクトでは、女性たちが太陽光ビジネスを運営し、2万1,000世帯以上の家庭に電力を届けています。
サヘル地域では、干ばつや土地の劣化が紛争と避難の要因となっていますが、再生可能エネルギーと土地の回復が状況を改善しつつあります。 マリでは、デンマークの支援により修復された給水ポイントが、紛争の影響を受けた地域で1,700世帯以上の日常生活の負担を軽減しています。
ヨルダンでは、ドイツとEUの支援により、アズラックとザータリの太陽光発電所が10万人以上のシリア難民の生活を支えています。 水資源が極めて乏しいこの国で、共有資源をめぐる緊張も緩和されています。 ここでは、再生可能エネルギーは単なる気候対策ではなく、「平和をもたらす力」となっているのです。
日本は、紛争の影響を受けた地域での復興支援を行っています。 たとえば、フィリピン・バンサモロ地域では、戦争未亡人や元戦闘員のために太陽光発電の製氷機を提供し、スーダンでは、避難民の家族に対して太陽光エネルギー、灌漑設備、雇用の機会を支援しています。
UNDPは、スーダンの避難民家族と協力し、太陽光発電、灌漑、および雇用機会を提供している。
2023年の「グローバル難民フォーラム」では、UNDPがUNHCRおよび60以上のパートナーとともに、気候リスクの軽減と避難民を受け入れる地域社会への支援を約束しました。しかし、志だけでは十分ではありません。投資が伴わなければならないのです。資金は、排出削減だけでなく、安定性の構築、包摂、そして地域主導の行動を支えるものであるべきです。
世界がブラジルで開催されるCOP30とパリ協定10周年に向かう中、気候変動による避難を国際的な議題に据えることが、これまで以上に急務となっています。それには、資金、強固なパートナーシップ、そして最前線にいる人々を政策設計に真に参加させることが必要です。
「世界難民の日」は、難民と彼らを受け入れる地域社会の貢献を称える日です。同時に、気候変動によって増え続ける避難の現実に光を当てる機会でもあります。今、求められているのは、根本原因に取り組み、将来のコストを削減するための持続的な投資です。加速する気候の混乱の時代において、レジリエンスを築くことは、賢明な選択であるだけでなく、私たち全員の生存に関わる課題なのです。