開催報告:四機関連携 アフリカビジネスセミナー(JETRO/JICA/UNDP/UNIDO) ―成長市場アフリカをビジネスチャンスへ― in 群馬
2026年8月20日
セミナー全体の様子
概要
イベント名:四機関連携アフリカビジネスセミナー(JETRO/JICA/UNDP/UNIDO) ―成長市場アフリカをビジネスチャンスへ― in 群馬
開催日:2026年7月24日(月)14:45 - 18:00
共催:JETRO、JICA、UNDP、UNIDO
会場: エテルナ高崎(群馬)
参加者:日本企業、支援機関、研究機関、アフリカ人材等
JETRO、JICA、UNDP、UNIDOの四機関は、日本企業によるアフリカビジネスへの参入促進を目的として、「成長市場アフリカをビジネスチャンスへ」と題したアフリカビジネスセミナーを群馬にて共催しました 。本セミナーは、TICADプロセスの一環として、アフリカ市場の最新動向や充実した公的支援、実際に現地で挑戦を続ける企業の実践事例を共有し、参加企業の具体的なアクションに繋げることを目的として実施され、県内企業を中心に約50名が参加しました 。
プログラム後半には、参加者と登壇者、各機関が直接意見を交わせるネットワーキングの時間や個別相談の機会を設け、新たなビジネス展開に向けた交流の場を創出しました 。会場内のUNDPブースでは、アフリカ各国に広がる現地事務所の密なネットワークや長年培った知見をベースに、社会課題と民間ビジネスを融合させる事業創出の可能性について情報提供を行いました。
アフリカ市場概況
JETRO調査部からは、アフリカ市場の最新トレンドと日本企業を取り巻く現状について解説がありました。アフリカ大陸は54か国、人口約15億人を擁し、2000年代以降高い経済成長を維持しています。日本との貿易額も約3兆円規模に達しており、資源・エネルギーのみならず、急成長する消費市場やインフラ分野への期待が寄せられています。一方で、現地の制度運用の不透明さや外国為替リスク、未整備のインフラといった特有の障壁が依然として課題であることも示されました。また、日本企業の進出先としては南アフリカ、ケニア、モロッコ等が主要市場であり、近年はナイジェリアやコートジボワールへの関心も高まっていることが紹介されました。
アフリカビジネス協議会(JBCA)の紹介
アフリカビジネス協議会(JBCA)事務局長の佐藤氏からは、官民連携によるアフリカビジネス促進の取組が紹介されました。同協議会は約500社が加盟するプラットフォームとして、各政府省庁が提供する補助制度や海外派遣プログラムに関する情報提供を行っています。また、日本で学ぶアフリカ人留学生や高度人材の日本企業とのマッチング支援にも注力しており、企業のグローバル人材確保や現地ネットワーク構築を後押ししている実態が紹介されました。
佐藤JBCA事務局長からの概要説明
特別講演
国連開発計画(UNDP)アフリカ局チーフエコノミストのレイモンド・ギルピンによるアフリカの成長市場とビジネスチャンスに関する特別講演が行われました。アフリカは世界的な経済ショックや海外援助の減少に直面していますが、増加し続ける若年人口とスタートアップの急増、また世界の重要鉱物の30%を保有し、3.4兆ドル規模の単一市場を生み出すAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)が稼働するなど、可能性を秘めた成長市場として世界経済における重要性が高まっています。
しかし、日本の対アフリカ直接投資(FDI)残高は全体のわずか0.3%(60億ドル)に留まっており、これは欧米の600億ドルや中国の470億ドルといった競合国と比べて著しく低い水準にあります。また、アフリカには重要鉱物だけでなく、再生可能エネルギー、自動車組立、ベンチャーキャピタルなど、日本の技術力を活かせる戦略的な投資分野が数多く存在しています。そして、ギルピンは「日本企業にとって先行者利益を獲得できる巨大な未開拓市場が残されている」と指摘しました。
また、アフリカはリスクが高いという先入観が根強くありますが、現実の平均投資収益率(ROI)は6.5%と他地域より高く、インフラローンのデフォルト率も5.5%と世界最低水準というデータがあります。決済インフラの遅れや規制の断片化といった構造的なボトルネックも、新しい金融技術や規制緩和によって克服されつつあります。ここから、JBICやJICAとの協調融資(ブレンデッド・ファイナンス)や貿易保険などを活用すれば、日本資本の初期リスクを効果的に軽減することが十分に可能であることを紹介しました。
最後に、日本企業がこの有望な市場で成功するには、現地の有力企業とのパートナーシップ構築など、実践的なアプローチが不可欠であると述べました。そのための戦略的な官民連携プラットフォームとして、TICAD(アフリカ開発会議)やUNDPのビジネスフォーラムが極めて重要なゲートウェイの役割を果たします。従来の政府開発援助(ODA)への依存から脱却し、民間セクター主導のビジネスやESG基準に沿った持続可能な投資へと進化させることで、日本とアフリカ双方の成長に繋がることを示しました。
国連開発計画 レイモンド・ギルピンからの特別講演
企業事例紹介① 株式会社キンセイ産業
株式会社キンセイ産業の金子氏からは、廃棄物をエネルギーに変える独自の「乾溜ガス化燃焼技術」を用いた海外展開について紹介がありました。同社は「地球の未来をつくる“乾溜”」を掲げ、ごみをなくし、水を生み出すことで地球の自然循環に貢献することを目指しています。1967年の創業以来、国内外で2,884基以上の豊富な納入実績を誇り、「知財功労賞経済産業大臣表彰」や「JAPANコンストラクション国際賞」など、多数の受賞歴を有しています。
タイでは、技術者及び運用・維持管理費不足等により医療廃棄物焼却炉を稼働できず、医療廃棄物の適正な処理が困難でした。また、医療廃棄物焼却炉を稼働できたとしても、ダイオキシン等への技術対応が不十分なため、環境汚染を拡大する課題に直面していました。そこで、同社はJICAの民間連携事業を活用し、黒煙や臭いを出さずに有害物質を無害化・減容化できる乾溜ガス化焼却装置を現地の病院に導入しました。これにより、二次感染のリスクを排除した衛生的かつ安全な廃棄物処理体制の構築を実現しました。
さらに、コロナ禍による日本からの渡航制限という予期せぬ障壁に対し、同社はオンラインツールを駆使した遠隔据付・運転指導という新たな実証モデルを確立しました。現地スタッフの手のみで完成した焼却システムは、ケニアの厳しい環境基準をクリアし、現地の廃棄物に対する意識を劇的に変える契機となりました。この画期的な成果は、国連工業開発機関(UNIDO)のコロナ対策支援プロジェクトに採択されたほか、公的機関との強固な連携のもとで国際的に極めて高い評価を得ています。
一方で同社は、海外展開を進める上での課題として、専門スタッフの不足といった推進体制の限界に加え、現地での備品盗難や不十分な引き継ぎ、維持管理予算の未確保といった現地運用の難しさを挙げました。いかにして自立的な稼働体制を現地で維持させるかが今後の普及の鍵となります。今後は、大学や海外協力隊、元留学生といった多様な人的ネットワーク(産学官連携)を最大限に活かし、技術指導の標準化と現地に根ざした持続可能な適正廃棄物処理モデルのグローバル展開を目指しています。
株式会社キンセイ産業からの事業概要、アフリカの取組等の発表
企業事例紹介② 株式会社冨士製作所
株式会社冨士製作所の桐渕氏からは、世界をリードする即席麺製造プラントの設計・製造技術と、そのグローバル展開について紹介がありました。同社は1964年の創業以来、即席麺の製造ラインに特化した専門メーカーとして、設計から製造、現地での立ち上げまでを完全オーダーメイドで一貫サポートする強みを有しています。即席麺の生産量日本一を誇る群馬県の地場産業を支えながら、国内・海外ともに50%以上の圧倒的な市場シェアを占めており、世界60カ国・900ライン以上の稼働実績を持つグローバルリーディングカンパニーです。
アフリカ諸国では、急激な人口増加と都市化に伴い、安価で保存が利き、手軽に栄養を摂取できる食糧の安定確保が急務となっています。特に2050年には世界第3位の人口大国になると予測されるナイジェリアを筆頭に、深刻な食糧需要の拡大に直面していました。同社は1985年のエジプト進出を皮切りに、現地の気候や主原料となる小麦の特性、さらには独自の食文化に合わせた柔軟なカスタマイズ技術を応用することで、アフリカ10カ国へ計54の製造ラインを納入し、現地での食糧の自給自足と安定供給に大きく貢献してきました。
現在、アフリカの即席麺市場は世界的な急成長を遂げており、ナイジェリアは世界第10位、エジプトは第16位の消費国(2024年時点)にまで成長しています。同社のプラントが現地で稼働することは、単に日本の食文化を伝えるだけでなく、巨大なアフリカ市場における雇用創出や食品加工産業の高度化、ひいては経済発展を支える基盤となっています。長年にわたり現地に寄り添い、安定した稼働を維持し続ける同社のエンジニアリング力は、各国の食品大手メーカーから絶大な信頼と評価を獲得しています。
同社は今後の課題として、未整備なインフラ地域への技術者派遣時の安全確保や、時差・言語の壁を乗り越えるためのリモート保守体制の構築を挙げました。特に中小企業としてのリソースの限界がある中、治安リスクの高い新興国でいかに安全かつ迅速にアフターサービスを提供できるかが課題となっています。今後は、現地の情報収集から契約、運用のサポートまでを包括的に補完し合える信頼できる商社や公的機関との初期段階からのパートナーシップをさらに強化し、人口増加が続くアフリカの食インフラを支える強固なビジネスモデルの確立を目指しています。
株式会社冨士製作所からの概要説明、アフリカでの取組等の発表
まとめ
本セミナーでは、アフリカ市場のポテンシャルに加え、日本企業が戦略的に活用できる各種支援スキーム、そして群馬県内からアフリカへいち早く進出した企業による経験が詳しく紹介されました。参加した地元企業にとっては、地元・群馬からアフリカ市場へ進出している企業の具体的な取り組みや事例が有益な参考情報となり、同様の進出ニーズや事業課題を抱える企業間で実務的な解決策やノウハウを共有し合う、有意義な意見交換の場となりました。
UNDP、UNIDO、JETRO、JICAの四機関は、今後も強固な協力体制を敷き、アフリカビジネスに挑戦する日本企業のために、実践的な市場情報、現地ネットワーキングの構築、そして個別具体的な事業化サポートを通じて、持続可能な官民共創アプローチをさらに深化させていく予定です。