日本とUNDPが連携し、マリとエチオピアの中小企業を支援

2021年4月5日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界規模で前例のない保健的、経済的、財政的影響をもたらしました。無数の悪影響の中でも特徴的なのが、パンデミックによって世界中で経済活動が急激に減速したことです。そして、アフリカは特に脆弱な状態に置かれています。

国連開発計画(UNDP)は、COVID-19のパンデミックの初期段階から各国を支援しており、各国からの対策・対応支援、回復支援に関して増え続ける要請に対応しながら、迅速対応ファシリティを含む様々なアセットや運用メカニズムを動員してきました。2020年6月、COVID-19のパンデミックによる課題に直面している国々を支援する取り組みの一環として、UNDPと日本政府のパートナーシップであるグローバルプロジェクト「包括的な新型コロナウイルス感染症への対応及び社会・経済的影響に対する支援」をUNDPの現地事務所29拠点にて実施しました。

マリやエチオピアなど、人口の大半が、生計を維持するためにインフォーマル・ビジネスに大きく依存している国々では、中小企業(SME)が特に打撃を受けており、COVID-19が日常業務に及ぼす影響によって閉鎖を余儀なくされた企業もあります。 マリについては、国連資本開発基金(UNCDF)による直近の公式見通しによれば、同国の経済成長率は、当初の5%の予測に対し、0.9%になると推計されています。

同様にエチオピアでは、パンデミックが中小企業に深刻な影響を及ぼしており、コミュニティはインフォーマル・ビジネスを通じて生計を立てるのに苦労しています。


マリ

UNDPでは「マリにおける包括的な新型コロナウイルス感染症への対応及び社会・経済的影響に対する支援」を通じ、対策、予防、対応面でCOVID-19に対峙するためのマリ政府によるグローバル行動計画を支援しており、以下の点に重点的に取り組んでいます。

  • ウイルスの拡大やパンデミックの悪影響に関する脆弱層の意識啓発:女性462,849人を含む936,697人の受益者に対し、5月から12月にかけてのバマコやモプティにおけるウイルスの拡大に関する意識啓発が行われました。脆弱層に対し、ウイルスの拡大やパンデミックの悪影響について意識啓発を行うことで、こうした層に感染症が存在していることを知ってもらい、ウイルスの拡大防止のための対策措置を守ってもらうことで、パンデミックの社会経済的悪影響を緩和することができました。
  • 各地の医療従事者に対する研修:女性181人を含むコミュニティの医療従事者282人の能力構築により、以下についての知識が向上しました:ウイルス拡大に対する闘い、感染が確認された症例への対応や担当保健機関への紹介、接触者の追跡、そして、マリの遠隔地のコミュニティにおいて感染症が存在していることと、そのCOVID-19によって保健的・社会経済的悪影響が生じていることに関する最も脆弱な層の意識啓発を行いました。
  • 織物協同組合および企業41団体の若い直接受益者252人の能力構築:現地の織物協同組合および企業41団体の直接受益者252人について、UNDPの「3x6アプローチ」やJICAが推進する「カイゼン」を採用することで、起業家スキルを強化し、最も脆弱な層向けに繰り返し使用可能なマスク267,289枚を製造しました。こうした能力構築活動を通じて、これらの若者たちは、マスク製造の質や協同組合および企業の生産性を高めることができ、貯蓄を増やし企業経営能力を強化できたことで、COVID-19後の回復に備えた生計の再建を進めることができました。

このような取り組みを行う中、UNDPでは危機が最も脆弱な層の生活環境に及ぼす影響を緩和する回復措置を支援するためにJICAとの連携を進めていくことを模索しています。

例えば、マリでは、カメルーンや中央アフリカ共和国でのJICAとの連携の成功事例に倣い、日本の製造業の知見を活かした支援を実施しました。カメルーンでは、生産性や効率性の向上を目的として、JICAが現地の中小企業を対象としてカイゼンプロジェクトを実施しおり、JICAの研修を受けた人々は、「カイゼン・コンサルタント」として、同国の中小企業に研修を行っています。中央アフリカ共和国では、UNDP実施のプロジェクトにおいて、カメルーンのカイゼン・コンサルタントが研修を行い、「カイゼン手法」を利用して現地で生産されたマスクがWHOの基準を満たし、WHOが現地での迅速な配布を支援しました。マリにおけるUNDP実施のプロジェクトにおいても同様に、JICAの協力で育成されたカメルーンのカイゼン・コンサルタントがオンライン研修に講師として参加し、質の高いマスクが製造されるようになりました。


エチオピア

マリと同様に、UNDPと日本政府のパートナーシップにより、中小・零細企業(MSME)を支援するための「エチオピアにおける包括的な新型コロナウイルス感染症への対応及び社会・経済的影響に対する支援」プロジェクトは、対策、対応、回復の3つの目的に沿って行われています。

エチオピアでは、中小・零細企業を支援する総合的なアプローチは、以下の5つの柱を中心としています。

  1. 市場に関する将来を見越した専門的知見を提供すること
  2. 市場アクセスを容易にし、多国籍企業を含む包摂的な市場を構築すること
  3. デジタルトランスフォーメーションを加速すること
  4. UNCDFと共に、中小・零細企業や地元政府への融資を展開すること
  5. 中小・零細企業が存続し、成長するためのエコシステムを強化すること

これらの柱については、中小・零細企業をより良いかたちでサプライチェーンに組み込んで支援するために、中央政府や地元政府と共同で、中小・零細企業とは直接、大企業と共同で、といった形態で追求することができます。

UNDPでは、人間の安全保障の概念にコミットしているJICAとのパートナーシップは、脆弱なアフリカのコミュニティがより良い未来を確かなものにするための有意義なアプローチであると考えており、今後も、マリ、エチオピア両国をはじめとする各国の日本大使館とも積極的に関与しながら、これらのプロジェクトがアフリカの各国の優先課題と一致し、持続可能な開発に寄与するものとなるよう、その解決に貢献していきます。