日本とUNDP、ブータンにおけるネットゼロエミッションの持続を支援するための新たな電気自動車プロジェクトを支援

2022年6月29日

 

UNDPの「気候の約束 (Climate Promise) 」は、パリ協定の目標達成に向けて各国が自国の目標や約束を実現するための世界最大のイニシアティブです。その第2フェーズは「プレッジからインパクトへ(From Pledge to Impact)」をテーマに、目標策定から、策定した目標を具体的な行動に移すことを狙いとする活動が展開されます。日本はこのプロジェクトの支援国として、ブータンに110万米ドルの資金を援助し、カーボンニュートラルという目標実現に向けて、電気自動車 (EV)の普及促進に取り組みます。

 2022年5月14日、ブータン・ティンプー発‐国民総幸福量委員会 (Gross National Happiness Committee, 略称 GNHC) と国連開発計画(UNDP)は、110万米ドルの日本政府支援による新たな電気自動車普及プロジェクトの実施に合意し、調印式が執り行われました。GNHCの会議場で開催された式典には、在ブータン日本国大使館(デリーに所在)1から山下博之一等書記官及び保坂俊二等書記官が出席しました。

 

 

今回立ち上げられたプロジェクトは、気候危機に対応するため、「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution, 略称NDC)」に則り、首都ティンプーにおけるネット・ゼロエミッション(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や気候変動への対応に適した開発を達成することを掲げています。本プロジェクトは、UNDPブータン事務所からの技術支援を受けつつ、同国首相府EVプロジェクトマネジメントユニットによって実施されます。

本プロジェクトでは、19台の電気自動車の調達、および8か所の急速充電ステーションの設置を支援します。また、交通分野における政策決定者及び電気自動車の技術者へのキャパシティビルディング、さらに電気自動車普及のための政策立案や消費者からの信頼を得るための認知度向上に取り組んでいきます。

本プロジェクトは、UNDPのサポート及び地球環境ファシリティ (GEF)の資金援助を受けて、現在進行中である「ブータンにおける持続可能な低排出型都市交通システム」プロジェクトに基づいて、ブータンの第二次NDCで繰り返し表明されているカーボンニュートラルを維持するための重要な役割を担います。第二次 NDCでは、国内で主要な炭素排出の原因となっている交通セクターからの排出量の削減の重要性が強調されています。特に、エネルギーセクターからの総排出量の60%を交通車両が占めており、2019年には、そのCO2排出量が約40万トンにも増加しました。現状が続くと想定した場合、交通セクターからのCO2排出量は2050年までに125万トンにまでさらに増加すると予測されています。

温室効果ガス排出においては、軽車両グループによる排出量が最も増加すると予測されており(3.8倍)、続いて、中型車両(3.6倍)、重車両(3倍)の増加が見込まれています。現状では、軽車両(タクシーを含む)や二輪車両は、登録されている車両のうち約81%以上を占める一方、重車両や中型の公共交通機関のバスなどは合わせても1%未満です。さらにブータンにおける99.9%の自動車はディーゼルもしくはガソリン車です。

本プロジェクトでは、年間5,585kg、電気自動車の想定耐用年数である15年間で83,775㎏のCO2削減を想定しています。

調印式にて、GNHCのWangchuk Namgay長官代理は、「本プロジェクトにおける日本の補正予算は、ブータンにおけるカーボンニュートラルへのコミットメントと目標を実際の行動に移すための重要な支援です。e-モビリティを通じたグリーンな開発(環境に配慮した開発)は、気候変動を緩和するための大切な優先事項です。」と述べ、日本政府及びUNDPの支援に対し感謝を伝えました。

 

 

「将来にわたってカーボンニュートラルを持続し続けるため、UNDPブータン事務所の御尽力によって、日本政府から時宜を得た御支援を頂けたことに感謝申し上げます。ブータンにおける交通セクターは、温室効果ガス排出の主要な原因の一つとなっています。本プロジェクトは、ブータンの交通セクターにおける低炭素化を促進し、輸入化石燃料への依存を減らすという私たちの努力を補うものとなります。」と首相府電気自動車プロジェクト管理ユニットの関係者は述べています。

 UNDPブータン事務所の久保田あずさ常駐代表は、「このプロジェクトは、ブータンの第二次NDC、すなわち、交通、居住、産業や食の安全保障のための低排出戦略の実行を後押しすることになります。低排出開発戦略は、カーボンニュートラルの状態を維持しつつ、ブータンが開発目標を達成するための一助となります。第二次NDCで定められた炭素削減目標を達成することは、将来にわたってカーボンニュートラルを維持し続けることを含めたブータンの大きな環境目標を実現するために欠かすことができません。UNDPは、プロジェクトの実施を成功させるために、首相府と緊密に連携していきます。」と述べました。  

また、在ブータン日本国大使館の山下博之一等書記官からは、「ブータンと日本との間におけるパートナシーシップの主眼は、常に、脆弱性の軽減や、ブータンの農村部と都市部双方の持続可能な開発を進めることに置かれてきました。CO2排出量の抑制による気候変動問題への取り組みは、自然災害のリスクを軽減し、都市環境の改善を行っていく上で特に重要です。我々は、このプロジェクトの実施を通じ気候変動問題に対する変革がより一層進むことを期待しています。」と、述べました。

ブータンの第二次NDCと低排出開発戦略は、欧州連合、イタリア、スウェーデン、スペイン、ドイツの各国政府による拠出金で運営されているNDCサポートプログラム、及びUNDPの「気候の約束」の支援を受けています。  

このプロジェクトは、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で立ち上げられた「気候の約束」の第2フェーズ「プレッジからインパクトへ(From Pledge to Impact)」の一環として位置づけられています。この取り組では、100か国以上のNDC目標に対して具体的な結果を導くべく、支援の拡大が行われています。

この先駆的かつ画期的な取り組みを実施していくこの第2フェーズにおいて、日本は最大の支援国です。長年の資金提供パートナーであるドイツ、スウェーデン、EU、スペイン、イタリア、そして新たに資金提供パートナーとなった英国、ベルギー、アイスランド、ポルトガルがとともに、これらの取り組みを加速させることが期待されます。

詳細情報は、UNDP の「気候の約束」ウェブサイト(英語)をご覧ください。
climatepromise.undp.org


1ブータンは、在インド日本国大使館が兼轄しています。