ウクライナでの戦争による全世界的な生活費高騰で、数千万人が貧困に転落とUNDPが警告

Posted 2022年7月8日
Analysis of 159 developing countries globally indicate that price spikes in key commodities is already having immediate and devastating impacts on the poorest households, with clear hotspots in the Balkans, countries in the Caspian Sea region and Sub-Saharan Africa (in particular the Sahel region), according to the UNDP estimates.
UNDP Serbia

開発途上国では、全世界的な食料とエネルギーの価格高騰の直接的影響により、わずか3か月間で7,100万人が貧困に陥りました。貧困率への影響としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)による影響よりもはるかに速いスピードで進んでいます。

給付対象を絞った家庭への給付金の支給は、エネルギー補助金の一律支給よりも公平かつ費用対効果が大きいものの、各国政府はその財源として多国間システムからの支援を必要としています。

ニューヨーク発 –国連開発計画(UNDP)は7月7日に報告書を発表し、開発途上国では物価の急騰によって、2022年3月からのわずか3か月間で、貧困層が7,100万人も増大したと警告しました。

物価の急騰に伴って金利が上昇する中で、景気後退による貧困がさらに増大し、これがさらに危機を悪化させることで、世界的に貧困がますます加速、深刻化するおそれもあります。

財源の枯渇や多額の公的債務に加え、グローバル金融市場での金利上昇にも直面している開発途上国は、国際社会が急遽関心を寄せない限り解決できない課題を抱えています。

全世界の開発途上国159か国の分析結果によれば、主要一次産品の価格高騰はすでに、最貧層世帯に直接、壊滅的な影響を及ぼしていることが分かります。UNDPの推計によると、バルカン半島やカスピ海地域の諸国、サハラ以南アフリカ(特にサヘル地域)には、明らかなホットスポットも生じています。

今回の報告書は、国連事務総長グローバル危機対応グループがウクライナ戦争の波及効果について行った2回の状況報告で提供した知見をさらに深めるものとなっています。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「これまでに類を見ない価格の高騰は、全世界で多くの人々にとって、これまで買えていた食料が突如として買えなくなることを意味します。今回の生活費高騰の危機により、多くの人があっという間に貧困、さらには飢餓に陥っており、それによって社会不安の脅威も日に日に高まっています」と語っています。

貧しい国では特に、生活費高騰の危機に対応する政策立案者が、難しい選択を迫られています。ほとんどの開発途上国が、財源の枯渇と債務の累積に苦しんでいる中で、貧困層と弱者層の世帯に対しどうすれば有意義な短期的救済策と両立できるかが課題となっています。

シュタイナー総裁は「開発途上国全体が今も続くコロナ禍や、債務の重圧、そして今度は食料とエネルギーの危機加速への対応に苦しむ中で、私たちはグローバル経済の恐ろしい格差拡大を目の当たりにしています」と語っています。さらに総裁は「それでも、新たな国際的な取り組みで、この経済の悪循環を止め、生命や暮らしを守ることはできます。具体的には、決定的な債務救済措置や、国際的サプライチェーンの活動継続のほか、協調的な対策によって、世界で最も社会から取り残されたコミュニティが、手ごろな価格で食料とエネルギーを確保できるようにすることなどが挙げられます」と語りました。

各国は貿易制限や租税還付、エネルギー補助金の一律給付、給付対象を絞った家庭への給付金の支給によって、この危機による最悪の影響を緩和しようと努めてきました。

報告書は、給付対象を絞った家庭への給付金の支給のほうが、一律の補助金よりも公平で費用対効果も高いことを明らかにしています。

報告書の著者であるジョージ・グレイ・モリーナUNDP戦略政策統括は「一律のエネルギー補助金は短期的に役立つ可能性があるものの、中長期的には不平等を拡大し、気候危機をさらに悪化させるほか、給付対象を絞った家庭への給付金ほど、生活費高騰の直接的影響を緩和することはできません。応急処置として、ある程度の救済にはなったとしても、やがては傷口を広げることになってしまいます」と語りました。

報告書を見ると、エネルギー補助金により得をするのは、豊かな人々に不当に偏ることが分かります。エネルギー補助金の一律給付による恩恵の半分以上は、20%の最富裕層が受けることになるからです。これに対し、家庭への給付金のほとんどは40%の最貧層に裨益します。

モリーナ氏は「食料と燃料の天文学的な価格高騰で打撃を受けている人々の手に現金が渡れば、プラスの影響が広範に及ぶでしょう。私たちのモデリングによると、今回の危機では、少額の給付金支給でも、最貧層と最弱者層にとって劇的な安定効果が得られます。また、コロナ禍への対応から、開発途上国がこうした給付金支給の財源を確保するためには、国際社会による支援が必要なことも分かっています」と述べています。

モリーナ氏はさらに、そのために必要な資金を捻出するため、一人当たりGDPに関係なく、すべての開発途上国がこうしたショックから立ち直れるよう、2年間の公的債務の返済猶予も検討すべきだと付け加えています。これは国際金融機関が最近になって、開発途上国向け資金の流動性強化を求めたことにも呼応しています。

世界銀行によると、コロナ禍による影響だけでも、開発途上国の債務は50年ぶりの高水準に達し、その歳入額の2.5倍を超えています。

様々な貧困線を基準とした場合、全ての場合で危機により最も深刻な影響に直面している国としては、中央アジアのアルメニアとウズベキスタン、サハラ以南アフリカのブルキナファソ、ガーナ、ケニア、ルワンダおよびスーダン、中南米のハイチ、南アジアのパキスタンとスリランカが挙げられます。エチオピアやマリ、ナイジェリア、シエラレオネ、タンザニア、イエメンでは、その影響は最も低い貧困線において特に深刻になる可能性があるほか、総じて最も大きな打撃を受ける国としては、アルバニアやキルギス共和国、モルドバ、モンゴル、タジキスタンが挙げられます。