共感を引き出す:ウクライナの戦争被害者へ人間中心の支援を提供すること

2023年9月4日
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「オンブズパーソンの事務所は、毎日、行方不明になっている家族の捜査、住居からの退避、戦争によってもたらされた逆境の中での社会的支援の必要性など、さまざまな課題についての電話相談や訪問者を受けつけています。彼らは法的助言や明確な情報を求めていますが、何よりも彼らは自分たちの声を聞いてほしいと願っています。私は彼らを助け、そして話を聞くためにここにいます」と、ポルタヴァ州のオンブズパーソン地域コーディネーターであるヴィーラ・ヤコベンコは述べています。 

ロシアによるウクライナへの侵攻は、莫大な苦しみと恐ろしい人権侵害を引き起こしました。人々の基本的な権利は戦争の残虐行為と国際人道法の大規模な違反によって脅かされています。ウクライナへの全面的な侵攻は何百万もの市民に影響を与え、大規模な破壊、集落や町全体の破壊、エネルギーや社会インフラの損傷、避難、人命の喪失、紛争に関連した性的暴力をもたらしました。 

社会政策省(Ministry of Social Policy)によれば、2023年1月時点で約490万人が公式に国内避難民として登録されています。さらに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2023年8月にはヨーロッパ全域で約620万人のウクライナ人が難民登録されています。全面的な侵攻が始まって以来、101,543件の行方不明者が登録されています。それらのほとんどは見つかりましたが、市民や軍の人員を含む2万3000人以上が未だ行方不明です。

 

統計の裏にいる人たちを見る:戦争被害者とコミュニケーションをとること

統計の裏には、戦争の残虐行為によって影響を受けた人たちだけでなく、その人の家族、親戚、友人、そして愛する人々がいます。彼らは想像を絶する苦しみを経験し、人道的支援と国家のサービスが必要ですが、何よりも人間によるサポートが必要です。 

したがって、戦争被害者に直接的な支援提供に責任を負う者は、戦争被害者と効果的にコミュニケーションをとるための特定のスキルが必要です。この観点から、日本政府の支援を受けたUNDPは、戦争被害コミュニティに迅速な支援の提供、がれきの除去、地雷撤去、越冬のための重要なインフラの支援など、さまざまな側面に焦点を当てた多面的なイニシアティブを構築しました。同時に、国内のパートナーや関係者が人権と国際基準の原則に基づいて戦争被害者に直接支援を提供できる能力を高めることも強調しています。人間の安全保障の基礎に立脚したこのアプローチは、保護、エンパワーメント、連帯の3つの基本原則に支えられています。 

このイニシアティブの焦点の一つは、国家政府関係者、地方自治体関係者および非政府関係者の能力を強化し、コミュニティの安全保障の支柱を強化し、人権を尊重し、特に最も脆弱で社会的に排除されたグループに対して司法へのアクセスを保証することです。

このイニシアティブの一環として、日本政府の支援を受けたUNDPは、2023年3月にウクライナ議会人権委員会事務局のメンバーおよびその地域ネットワーク向けの綿密なトレーニングプログラムを実施しました。このトレーニングプログラムは、戦争の影響を受けた人々、特に捕虜、亡くなった方々、行方不明者、退役軍人、戦闘で負傷した方々とのコミュニケーションの基本をカバーしており、ストレスを経験している人たちとの接し方、難しいトピックについてのコミュニケーション方法、危機的な状況での個人の安全確保についての見解や知識を提供します。 

「私たちは頻繁に、過度のストレスを抱えている人や過度に感傷的になっている人たちに出会います。彼らは少しでも良いニュースを求めています。たとえば、毎週、戦闘中に息子が行方不明になった女性からの電話を受けます。私がこれについての情報を提供できる立場にはないことを知りながらも、彼女がそのような会話で慰めを見つけたいことを明白です。私たちの業務は、すべての電話に応答し、私たちに接近してくる人々に注意を向けることです。私たちの役割は時には道徳的なサポートを提供することであり、それを必要とする人々を助けるために最善を尽くします」と、ヴィーラ・ヤコヴェンコはトレーニング中に述べています。」

 

人権の側面:最も脆弱な人々の権利が保護されることを担保すること

残忍な戦争とその恐ろしい結果は誰にも免れることはありません。しかし、特定のグループの人々は、社会的地位、経済的繁栄、教育、年齢、性別、民族など、さまざまな理由により、特に脆弱な立場にあり、彼らの権利が侵害されるリスクが高まっています。

これらのグループには、行方不明者や戦争捕虜の家族が含まれます。紛争によってもたらされる不確実性と感情的な動揺に向き合いながら、彼らの法的サポートと保護の必要性がますます緊急性を帯びています。 

これらの人々は非常に高いストレスと不安を経験し、しばしば状況の法的側面を整理する能力を持っていないため、彼らの権利が保護され、彼らが受けるべき具体的な社会的支援を受けれるようサポートが必要です。 

5月から、行方不明者や戦争捕虜の家族や愛する人々との定期的な会議が開始されました。彼らは自身の権利、法的地位、そして利用可能な社会的サポートについての知識が限られているため、これらの人たちは人権侵害のリスクにさらされています。 

2023年4月以降、UNDPと日本政府の支援を受けて、オンブズパーソンの事務所は、行方不明者や戦争捕虜の家族590人以上との定期的な会議を実施しました。これらのセッションでは、重要な最新情報や法的サポートを提供し、変化を起こすために必要なアドボカシーのために必要な人権問題を体系的に特定することを目的としています。

 

全体像と次のステップ 

尊重という原則に基づいて戦争の影響を受けた人たちやトラウマを受けた人たちとの効果的なコミュニケーションスキルは、特に法的支援を提供する側や生存者にとっての最初の連絡窓口にいる者など、責務履行者全員にとって不可欠なものです。この重要なニーズを認識し、UNDPは日本政府と協力して、2023年を通じて一連のトレーニングイベントを実施し、支援を拡充します。これらのイベントは、戦争の影響を受けた人たちに支援を提供する無料の法律相談所、国家警察、検察官、オンブズパーソンの事務所、社会サービスプロバイダーなど、より広い範囲の関係者が対象になることを意図しています。これらにより、関係者が戦争犯罪の特定、国内および国際司法の能力、繊細なコミュニケーション、効果的な調整の知識とスキルを身につけることを目指します。

これらの活動により、幅広い関係者が、戦争の影響を受けた人たちと効果的にコミュニケーションを取り、サポートするために必要なスキルと知識を備えることが期待されます。また支援を提供する関係者がより一層自身の義務を果たし、必要な人々に包括的な支援を提供し、義務を果たす中で人権の原則と国際標準を守ることになります。