タンザニアで就学前児童向けの画期的な住血吸虫症治療薬を規制承認、試験的導入への道を開く

2025年11月20日

タンザニアの就学前児童は、同年齢層向けに特別に設計された初の治療薬が規制当局により承認されたことを受け、住血吸虫症からの安全が確保される大きな一歩を踏み出しました。

Photo: UNDP / Kumi Media

タンザニアは、住血吸虫症に罹患する就学前児童向けに開発された初の治療薬「アルプラジカンテル」を、世界で初めて規制承認しました。 

この成果は、タンザニア政府と緊密に連携しながら、新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)の支援によって実現したものであり、同国における疾病対策の大きな転換点となります。今年後半には3つの地区で 先行導入が予定されており、これまで治療から取り残されてきた幼児にとって、待望の解決策が提供されます。 

住血吸虫症は、世界で2億5,000万人以上が感染している、顧みられない熱帯病の一つです。推定5,000万人が就学前児童(24~59か月)であり、その大半はサハラ以南アフリカに居住しています。この病気は、寄生虫によって引き起こされ、汚染された水との接触で感染します。治療しなければ臓器障害、栄養失調、認知発達障害を引き起こし、貧困と健康不良の悪循環に陥ります。 

就学前児童は住血吸虫症に対して最も脆弱であるにもかかわらず、これまで世界保健機構(WHO)の推奨薬「プラジカンテル」にこの年齢層に適した製剤がなかったため、集団治療キャンペーンから除外されてきました。一方、新しい製剤「アルプラジカンテル」は、幼児が安全かつ効果的に服用でき、飲みやすいよう設計されています。本製剤は、日本の公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)や欧州・途上国臨床試験パートナーシップ(EDCTP)の支援を受け、ドイツ・ダルムシュタットにある製薬会社メルクが主導する小児用プラジカンテル・コンソーシアムによって開発されました。2023年12月に欧州医薬品庁から科学的評価を受け、2024年5月には WHO事前認証済医薬品リストに追加されました。

規制当局による承認は、新しい医療技術が安全性・有効性・品質基準を満たすことを保証し、国の保健システムに導入するための重要なステップです。特に規制能力が限られる低・中所得国において、薬剤を迅速に届けるために不可欠な第一歩になります。 

タンザニアにおいて、ADPはタンザニア医薬品・医療機器庁によるアルプラジカンテルの承認プロセスを加速させるため、技術支援に加え、WHOの厳格規制当局共同登録手続きの活用を促進しました。これにより、同国の規制当局は厳格な審査を行った規制当局、今回のケースでは、欧州医薬品庁による評価結果を活用し、承認までの時間を大幅に短縮し、命を救う薬をより早く届けることが可能となりました。 

UNDPが主導するADPは、日本政府からの資金援助を受け、WHO、熱帯病医学特別研究訓練プログラム(Tropical Diseases Research: TDR)、医療における適切な技術のためのプログラム(Program for Appropriate Technology in Health: PATH)とのパートナーシップのもと実施しています。 

タンザニアは、コートジボワール、ガーナ、ケニア、セネガル、ウガンダとともに、アルプラジカンテルの先行導入国に加わりました。アルプラジカンテルの初回投与は、2025年3月にウガンダで実施され、小児用プラジカンテル・コンソーシアムのADOPTプログラムの一環として、スイス熱帯公衆衛生研究所とアンリミット・ヘルス(Unlimit Health)の主導のもと行われました。ADPならびに本コンソーシアムは、メルク社提供の製品を用いて、これらの国々の導入を支援しています。 

ADPは包括的な支援パッケージの一環として、規制当局の能力強化、 地域規制制度の調和、疾病の基礎データ収集、地域社会との対話促進、国家レベルの協議支援など、包括的な取り組みを進めており、命を救う医療技術が安全かつ迅速に届くよう尽力しています。 

タンザニアでは、この取り組みは国立医療センター(NIMR: National Institute for Medical Research)を通じて「小児用プラジカンテル製剤提供・展開準備に向けた医療システム能力強化(STEPPS)プロジェクト」として実施されています。

2025年第4四半期に開始予定のタンザニアでのパイロット事業では、イティリマ、センゲレマ、キゴマ地区で、18か月間にわたり2万5,000人以上の就学前児童に薬剤を届けます。タンザニアや他の先行導入諸国で得られる経験とエビデンスは、各国の戦略策定を支え大陸全体での拡大に向けた指針となります。 

タンザニアによるアルプラジカンテル導入の取り組みは、科学とパートナーシップ、そして政治的意思が結集したとき、最も脆弱な人々を守り、誰もが健康で強靭な未来を築けることを示す力強い証です。