武見敬三参議院議員がインドのデジタルワクチン管理プラットフォームを視察

2023年9月5日

プラットフォームの説明を受ける武見議員

Photo: UNDP India

UNDP(国連開発計画)インド事務所は、インド政府と協力して、ワクチン接種のデジタル管理プラットフォームを開発し、これを強化してきました。このプロジェクトは、Gaviワクチンアライアンスの支援を受け、2014年に開始しました。主な目的は、インド全土の病院に対する各種ワクチンの適切な数量及びタイムリーな補充、各病院におけるワクチンの冷蔵保管状況のモニタリング、そして各病院での正確な接種記録管理を行い、より多くの人々にワクチンを届けることです。

このインドで独自に開発されたデジタル管理プラットフォームを、武見敬三参議院議員が2023年8月25日に視察しました。視察の目的は、本プラットフォームに関する理解を深め、インドにおけるデジタルテクノロジーの保健医療分野への活用状況を把握することです。

UNDPはインド政府と連携し以下の3つのプラットフォームの開発と導入を支援しました。

  • 電子ワクチン情報ネットワーク(eVIN): ワクチンの在庫と保管温度をリアルタイムで管理するシステムです。SIMカード付きの温度計とスマートフォンアプリを使用して、インド全域の病院のワクチン保管状況を一元管理しています。このシステムは、特に遠隔地や僻地に住む人々にもワクチンを確実に届けるために貢献しています。
  • 新型コロナ・ワクチン情報ネットワーク(CoWIN): 新型コロナ・ワクチン接種をデジタルで追跡するプラットフォームです。11億人以上がこのシステムに登録し、22億回以上のワクチン接種が行われました。このシステムは、パンデミックに迅速に対応するために3カ月という短期間で開発され、多くの命を救いました。
  • インドの全国予防接種プログラムのデジタル化(U-WIN): インド全土で妊婦や子供のワクチン接種状況をデジタルで追跡するシステムで、現在試験的に導入されています。これにより、誰がいつどのワクチンを受けたかが把握できます。このシステムは、特に母子が必要なワクチンを遅滞なく確実に接種するために非常に重要です。

このシステム導入により、ワクチンの廃棄が大幅に削減されました。具体的には、9,000万回分以上のワクチンが節約され、本取組への1ドルの投資に対して2.9ドルの経済的利益が生まれました。こうした効率化は、特に開発途上国においては貴重な資源を有効活用する上で重要です。

eVINスマートフォンアプリ

Photo: UNDP India

Sim付き温度計

Photo: UNDP India

このシステム導入により、ワクチンの廃棄が大幅に削減されました。具体的には、9,000万回分以上のワクチンが節約され、本取組への1ドルの投資に対して2.9ドルの経済的利益が生まれました。こうした効率化は、特に開発途上国においては貴重な資源を有効活用する上で重要です。

特にコロナ禍での影響は大きく、スタンフォード大学の報告によれば、このシステムによって340万人の命が救われたとされています。世界的な保健専門家から構成されるExemplars in Global Healthイニチアチブは、CoWIN が、1 日で 2,500 万人以上への大規模ワクチン接種を可能とし、他国でも応用可能な技術として成功を収めていると評価しました。また、このプロジェクトはマイノリティや弱い立場の人々にも配慮しており、誰一人取り残さないという精神の下、公的サービスから取り残されがちであるトランスジェンダーの人々や身分証明書を持たない人々へのコロナワクチン接種も実施しました。

今回の視察はニューデリーにあるBasant Gaon一般総合病院で行われ、武見議員はワクチンの冷蔵倉庫での保管状況、冷蔵倉庫に設置されたsim付き温度計、スマートフォンやPCベースのワクチン管理アプリ 、ワクチン接種記録の追跡方法等を視察しました。また、視察後半に実施された意見交換会では、デリー政府の家族福祉部長、州ワクチン接種担当官、県ワクチン接種担当官、医官、看護師、冷蔵倉庫担当者 、コミュニティーでのワクチン接種キャンペーン担当者、UNDP担当者等、行政のハイレベル担当者から現場担当者まで本取組に係る幅広い関係者との意見交換を行いました。視察を終えた武見議員は「コロナ禍において、UNDPインド事務所が連邦政府や地方政府と連携しつつ短期間にワクチン接種を全国的に管理する情報システムを築き上げたことに心から敬意を表したいと思います。しかも引き続き母子保健に関わる情報を一元的に管理する情報システムの構築にも取り掛かっており、これらの個人の健康情報が全国的に一元的にシステム管理される様になれば、インドの保健事情は大幅に改善されていくことになる事が期待されます。」と述べました。

意見交換する武見議員(中央奥)と野田UNDPインド事務所常駐代表(左奥)

Photo: UNDP India

このプロジェクトの成果は新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(ACCESS AND DELIVERY PARTNERSHIP:ADP)を通してアフガニスタン、インドネシア、ウクライナ、ガイアナ、スーダン、セルビア、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ブータン、マラウイ、ミャンマー等多くの国々と積極的に共有されています。また、インドでの経験に基づいたこれらの国々へのADPの技術支援は、各国独自のデジタルワクチンシステム導入展開の重要な参考となっています。ADPは武見議員が設立に尽力し日本の支援で2013年から実施されており、各国の医療システムの強靭性の向上、新規医療技術(ワクチン、医薬品、診断ツール)の効果的な提供に向けた政策、人的能力、制度および規制の開発を支援しています。

本視察とデジタルワクチンプラットフォームの概要をまとめた動画は以下でご覧いただけます。

問い合わせ: UNDPインド事務所 SDGsコーディネーター 河野雄太 yuta.kono@undp.org