アフリカにおける公正なエネルギー転換

2022年8月18日
just energy transitions

TICAD8 サイドイベント

Credit: UNDP Africa
Event Details

26 8月 2022

22:00-23:30 JST

ハイブリッド開催: オンライン / Culture Center(チュニジア)

参加登録はこちらから

共催:チュニジア政府、UNDP

言語:英語、フランス語


 

背景

持続可能な開発目標の目標7(SDG7)は、2030年までに普遍的なエネルギーアクセスを実現することを呼びかけています。現在アフリカでは、電力にアクセスできない人口が5億8000万人おり、アクセスを促進する緊急措置を講じる必要があります。2021年にグラスゴーで開催されたCOP26にてコミットメントを示したアフリカの指導者たちは、こうした措置を牽引する必要があるのです。 2022年に140万人だった人口は、2040年には200万人に、2050年には250万人となりほぼ倍増する可能性があるため、普遍的なエネルギーアクセスを提供するということは容易ではありません。SDG7を達成するため、2030年まで少なくとも年間7500万件の新規アクセスを目標とした上で、さらなる対策が必要となっています。

アフリカには、風力、太陽光、水力、地熱など、膨大なエネルギー資源が眠っています。水力発電はサハラ以南のアフリカの電力システムの基礎であり、太陽光発電はコストの低下によりますますアクセスしやすいものとなるでしょう。また、アフリカにはマンガン、銅、リチウム、コバルト、クロム、プラチナなど、電気のバッテリー、風力タービン、燃料電池の製造に不可欠な鉱物資源が豊富にあります。これらは、ゼロ・カーボンへ移行する世界市場において、重要な輸出資源となります。しかし、アフリカがエネルギー転換から得る利益は、原料生産者がどの程度バリューチェーン上流の処理能力を高めるため、原料生産者がどれだけ投資・開発できるかにかかっています。

グリーンエネルギーへの移行に向けたインフラの構築には、投資の大幅なスケールアップが必要です。サハラ以南のアフリカで普遍的エネルギーアクセスを実現するために必要な投資水準は、IEA(2018年)によれば年間550億ドルと見積もられています。同じくIEAによる一つの試算では、電力セクター全体に対する年間投資額は、現在の4倍、つまり年間約1,000億ドルまで増加する必要があるとされています。COP26で作成された「Financing net-zero roadmaps」では、アフリカのエネルギー・運輸セクターにおいて必要な脱炭素化投資額は、2026-2050年で年間2~3億ドル、2021-2015年で年間1億ドル程度とされています。

これは気の遠くなるような数字であり、このような規模の投資をどのように動員することができるのかという疑問が生じます。財政的な制約がある中で、政府ができることには限界があり、国営電力会社の多くは財務状況が脆弱です。そのため、大規模なエネルギープロジェクトへの投資は、国際金融機関や開発機関の支援を受ける傾向にあります。電力発電は、大規模なものは公的資金への依存度が高く、再生可能エネルギーは民間資金が多く使われています。投資を支援する政策や規制、そして市場の成熟は、ミニグリッドや独立型システムへの民間投資の呼び込みに役立っています。

主な論点

本イベントでは、次のような課題について検討を深めていきます。

  1. アフリカの多様な環境において公正なエネルギー転換とはどのようなものか?誰にとっての正義か?アクセシビリティに焦点を当てるべきか、それともアフォーダビリティか?SDGsの文脈の中で、開発への影響はいかなるものか?
  2. アフリカのエネルギー転換に最も適したエネルギーミックスは何か?段階的移行のメリットとデメリットは?
  3. アフリカ諸国は、持続可能なエネルギーへの移行のためどのように資金調達するのか?また、どのような資金調達手段を利用できるのか?持続可能なエネルギー投資に対するリスク回避(またはリスクプール)のためどのような手段を講じることが可能か?地域的アプローチは資金調達を容易にするか?
  4. 伝統的に社会から疎外されてきた個人やコミュニティにとって、手頃な価格とアクセスを確保するため、どのようなステップが考えられるか?どのようにすれば、誰一人、どの地域も取り残されることがないようにできるか?
  5. UNDPやUNIDOなどの開発機関は、アフリカ全域で公正なエネルギー転換の支援・促進にあたりどのような役割を果たすことができるか?ウクライナ戦争後の多国間主義の弱体化は、アフリカの公正なエネルギー転換の展望にどのような影響を及ぼすか?

目的

このような背景のもと、チュニジア政府は、2022年8月27日・28日に首都チュニスで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において、UNDPチュニジアとハイレベルイベントを共催する運びとなりました。

ウクライナ戦争、新型コロナウィルス、気候変動の影響による世界的危機の中、アフリカ大陸の持続可能な開発における重要な転機となるTICAD8の主催者として、チュニジア政府はアフリカにおいて鍵となる開発及び投資課題を提唱する一連のサイドイベントを開催する予定です。本イベントは、チュニジア政府によるTICAD8公式サイドイベントの一環として、アフリカにおける「公正なエネルギー転換」に焦点をあて、ハイブリッド形式で開催されます。チュニジア政府は2022年7月、産業・鉱山・エネルギー省を通じて、2030年に向けた国家エネルギー転換戦略を策定しました。この戦略では、すべての国民と経済活動のために、「供給の安定化」「脱炭素化」「公正な移行」「包括的経済発展」に焦点を当て、クリーンでアクセスしやすく、安価なエネルギーの供給を保証しています。