アフリカの内陸国ザンビアでの広報活動

吉田圭佑 国連開発計画(UNDP)ザンビア事務所 コミュニケーションアシスタント 国連ユースボランティア(UNYV)

2022年1月18日

ジェンダーに基づく暴力予防プログラムのモニタリングに同行する筆者

Photo: UNDP Zambia/ Shupe Makashinyi

ザンビアはアフリカ大陸南部に位置しており、北にコンゴ民主共和国、北東にタンザニア、東にマラウイ、南にモザンビーク、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビア、西にアンゴラと8つの国と隣接している内陸国です。ザンビアは日本人にとってあまり知られていない国ですが世界三大瀑布の一つとして知られるビクトリアフォールズや数多くの野生動物を楽しむことができる国立公園が各地にあるなど豊かな自然環境が魅力です。また日本で東京オリンピック閉会式が開かれていた1964年10月24日に、イギリス保護領北ローデシアからザンビアへと独立を果たしました。そのため北ローデシアとしてオリンピックに参加しましたが閉会式ではザンビアとして異なる国名で参加したという世界的にも珍しいエピソードを持つ国でもあります。

この地図で採用されている名称や表現は、国や地方、都市及び地域の法的地位や、国境や教会の画定に関して、国際連合事務局や国連開発計画のいかなる家権を表明するものではありません。

私は国連ユースボランティア(United Nations Youth Volunteer: UNYV、ここでは大学が国連ボランティア計画(UNV)との協定に基づき、学部生を開発途上国にボランティアとして5ヶ月間ほど派遣するプログラムのこと)として派遣され、コミュニケーションチームの一員として2021年9月からUNDPザンビア事務所で勤務しています。本来であれば4年生として秋学期を過ごすはずでしたが、これまでの経験や学びを活かして憧れの国連機関で働いてみたい、これまで学部で学んできた国際協力の世界で実際に働くことでどのようにプロジェクトは実施されているのかされているのか身近で学びたいという想いからザンビアにやってきました。

仕事は広報業務が中心で、イベントやプロジェクト視察に同行しての写真撮影に加えてソーシャルメディアへの投稿やニュースレター等広報物の作成、デザインなどを担っています。5ヶ月間という短い任期にたくさんのことを経験して欲しいという上司の配慮もあり、元難民の統合支援、ジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence: 略称GBV)の予防と早期対応、若者の起業支援といった複数のプログラムに関与し、首都ルサカ市内だけでなく中央・南部・北西部州といった地域へのイベントやモニタリングにも参加しました。

ザンビア各地の地元リーダー達と。ジェンダーに基づく暴力撤廃に向けて協力関係促進のための会

Photo: UNDP Zambia/Shupe Makashinyi

技術科学省の大臣(中央)に説明する若手女性イノベーター(右)

Photo: UNDP Zambia/Moses Zangar

私は、日本政府からの支援を受けて実施されている、元難民と現地ザンビア人の統合と生活環境の向上を目的とした「持続可能な再定住プログラム」(Sustainable Resettlement Programme)にも関わっています。独立以降、ザンビアは紛争を経験することなく、その安定した治安と平和な環境を求めて近隣国から逃れてくる難民を受け入れており、その数は2021年の11月時点で累計10万人以上に上ります。難民や亡命者として逃れてきた人々は北西部州のMehebaや西部州のMayukwayukwaと言われる居住エリアでザンビア人と共に生活をすることになります。そしてそのうち多くの人々が、難民としての地位を失った後もザンビアへ残ることを選択し、現地のザンビア人たちと共に今でも暮らしています。またこれらの地域では長らく難民を受け入れてきたことから、故郷にアイデンティティーやつながりを持たない子どもやその孫の世代が誕生しており、新たな局面を迎えています。これら元難民であった人々や難民にルーツを持つ世代の人々は現地住民と同様に農業を営み、同じような生活環境の下で生活しています。

そこでザンビア政府と各国連機関は元難民・難民・ザンビア人を対象に「ザンビアにおける難民の持続可能な定住を通じた人間の安全保障の促進」、「ザンビアにおける難民に対する早期復旧を通じた人間の安全保障の促進」、「ザンビアにおける持続可能な定住のためのインフラ開発」といったプロジェクトが実施されてきました。これらのプログラムのもと、ガバナンス能力の強化、社会サービスの拡大、生計手段確保に向けた研修、コミュニティーの結束強化、警察制度の強化、インフラ・公共施設の建設や復興など、多様な角度からの取り組みが行われ、生活環境の改善と再統合が進められています。私はこうしたプログラムを通じて実施された取り組みや、そこから生まれたインパクトに関する広報資料の作成を担当しています。

Meheba地域において舗装された道路。舗装がなされていない道路は水はけが悪く通行に困難をきたす

Photo: UNDP Zambia/ Keisuke Yoshida

Meheba地域において日本政府支援のもと建設された施設への道を示す看板

Photo: UNDP Zambia/ Keisuke Yoshida

既に任期の半分以上が経過してしまいましたが、活動の複雑さや規模感の大きさなどから、実施されているプログラムとその背景情報の収集と把握には今もなお苦労しています。広報担当として信頼できる情報発信のためには正確かつ最新の情報を持ち続けなければなりません。またUNDPは国連機関で構成される開発グループを先導する必要があり、UNDP単独で実施されるプログラムよりも、他の国連機関やステークホルダーと共同で実施されるプログラムが多く、どこが主体となり何を行っているのかといった、より詳細な情報の把握が必要です。そのほか、日本とは異なる環境で仕事をしていると様々な困難に直面し、日々の業務を大変に感じることも多いですが、職員が真摯に仕事をしている姿や支援を受けた人々から、プロジェクトによってもたらされた意識や生活の変化について聞くたびに、UNDPザンビア事務所の一員として誇らしい気持ちになります。以前GBVプロジェクトのモニタリングに参加した際、GBVに関する啓発活動が実施されている地元の住民住人との話し合いで、ある男性参加者が「GBVに関するワークショップに参加して自分たちの意識が変わった。自分たちも他のコミュニティーに広げていきたい」という話をしていた姿は忘れられません。このように現地で働くからこそ得られる知識や体験があったり、多様な国籍や経歴を持つ職員たちとともに働くことができたりと、かけがえのない経験を得ることができました。国連ユースボランティアプログラムに参加して本当に良かったと心から感じています。

本年(2022年)はチュニジアにおいて第8回アフリカ開発会議(TICAD8)の開催が予定されており、アフリカの今後の発展には目が離せません。この記事を通じてみなさんがぜひアフリカ、そしてザンビアに関心を持ってくださると嬉しいです。


筆者:吉田圭佑 国連開発計画(UNDP)ザンビア事務所・コミュニケーションアシスタント・国連ユースボランティア
2018年に関西学院大学総合政策学部に入学。2021年9月より、国連ユースボランティアプログラムに参加。2022年3月に大学卒業後は、同年9月より、サセックス大学においてConflict, Security and Development MA入学予定。


※国連ボランティアについては、国連ボランティア計画(UNV)ホームページを参照。