誰一人取り残さないパラオの防災情報

2022年9月22日
パラオのコロール州、マラカルヒルトップで、AM放送システムの完成を発表する大統領

パラオのコロール州、マラカルヒルトップで、AM放送システムの完成を発表する大統領

Photo: UNDP

2022年9月1日(コロール、パラオ) – パラオ共和国の全国民はこのたび、新設の中波(AM)放送システムを通じ、緊急メッセージを受信できるようになりました。

この総額75万5,920米ドルの中波(AM)放送システムは、パラオでの災害情報発信の強化を目的とする「防災とインフラ整備によるパラオ災害対応・気候変動対策(EDCRパラオ)プロジェクト」に基づき、国連開発計画(UNDP)が設置したものです。2022年9月1日(木曜日)に行われた引渡式には、パラオのスランゲル・S・ウィップス・ジュニア大統領とグスタフ・アイタロー国務大臣のほか、柄澤彰パラオ共和国駐箚日本国大使、ケビン・ペトリーニUNDP北太平洋事務所常駐副代表も出席しました。

2012年に台風24号(ボーファ)、2013年に台風30号(ハイエン)に襲われたパラオでは、中波放送(AM)アンテナが損傷を受け、緊急事態と災害時に欠かせない通信手段が使えなくなりました。その結果、全国放送のラジオ局の電波も国内全土に届かなくなり、国民、特に離島に住む人々に対する情報発信ができなくなりました。台風の被害があってから、特に自然災害に関する不可欠な情報を流すAMラジオ放送は、南部のソンソロール、ハトホベイの両離島、北部のカヤンゲル島の他、排他的経済水域(EEZ)内を航行する船でも聞けるようになっています。

引渡式

中波(AM)放送システムの引渡式

Photo: UNDP

スランゲル・S・ウィップス・ジュニアパラオ共和国大統領は「私たちは、コミュニティ全体に情報が行き渡り、家族や家屋、事業所を守るために力を合わせることができれば、自然災害による被害を最低限に抑えられることを目の当たりにしてきました。このAM放送タワーは、 国家緊急管理局と国家公文書・メディア局(Bureau of Archives and Media)にとって不可欠なツールとなります。台風その他の緊急事態が迫っている時に、極めて重要な情報をできるだけ多くの国民と共有できるからです。その他の通信手段が全て使えなくなったとしても、人命救助に貢献できる可能性があります」と語っています。

ウィップス大統領はさらに、「寛大な資金援助をいただいた日本政府と、このプロジェクトの実現に貢献していただいたその他の方々、そして、その完成に向けて尽力いただいたすべての人々に感謝したいと思います。ありがとうございました(Kom kmal mesaul)」と付け加えていました。

日本からの資金供与を受けたUNDPの介入で、パラオは全国放送サービスを復旧できるようになります。

この取り組みでは、ラジオ番組を通じた災害関連の警報や啓発を含め、公共政策と国民の意識向上を図る情報の普及に責任を負う国務省公文書・メディア局を支援しています。特にラジオには、コミュニティに最新の災害状況に関する情報を常に提供し、災害の影響を軽減するための実際的な対策について助言するために果たすべき大切な役割があります。また、最も信頼の厚いメディアの一つとして、特に農村部と離島部で命を救える情報を伝達するうえで、引き続き不可欠な役割を果たしています。

AM放送システムの再建は、副大統領と法務大臣のリーダーシップのもと、公共事業局、国家緊急管理局(NEMO)、コロール州およびパラオ公共事業局(PPUC)を含め、パラオの幅広いパートナーとの連携によって実施されています。

グスタフ・アイタロー国務大臣は、「AMタワーの建設、完成および引渡しは、パラオが今後とも、パンデミックや自然災害の際に十分な情報を備えていることを示す証拠であると同時に、その旨を視覚的に宣言するものでもあります。国民はリアルタイムのライブストリーミング情報を簡単に入手し、安全と安心を確保できるようになります」と語っています。

大臣はさらに付け加えて、「国務省公文書・メディア局は、国家緊急事態管理委員会(NEC)の熱心なメンバーであり、今回のインフラ整備は、吟味された権威ある正確な情報をリアルタイムで放送することに関する私たちの役割と、NECや国との連携をさらに強固にするものです。UNDPを通じて実施された今回の日本政府からの寛大な支援は今後とも、ここパラオでの暮らしを変え続けてゆくことでしょう」と述べました。

柄澤彰パラオ共和国駐箚日本国大使は「このAMシステムが長期にわたり、パラオの防災システムに欠かせない要素として、パラオ国民の生活と財産を守るために活用されることを望んでいる」と述べています。

ケビン・ペトリーニUNDP北太平洋事務所常駐副代表も挨拶し、「日本政府からの寛大な資金拠出のおかげで、UNDPはパラオ政府との協力により、通信の復旧、および、AM放送システムと関連の帯域幅容量の再建を図り、パラオ最南西端の島々に至るまで、いつでもリアルタイムで重要なメッセージを伝達できるようになりました」と述べました。

今回の支援は、日本政府の総額750万米ドルに上る資金供与で実現した「防災とインフラ整備によるパラオ災害対応・気候変動対策」プロジェクトに基づき、UNDPを通じて提供されました。世界銀行の2021年のデータによると、パラオの人口は1万8,174人となっています。

UNDPのEDCRプロジェクトは、2019年の発足以来、パラオの災害リスク管理に戦略的な意味を持つ機材を供与してきました。このプロジェクトのねらいは、ジェンダーに配慮した災害情報の発信と気候監視システムを強化すること、国と各州の災害対応担当者のジェンダーに配慮した防災能力を向上させること、および、水管理を改善し、ジェンダー面と社会面のインクルージョンに対する認識を統合することを通じ、コミュニティの災害に対する抵抗力を高めることにあります。

集合写真
Photo: UNDP

さらに詳しい情報については、下記にお問い合わせください。

Paula Cirikiyasawa, Country Project Coordinator, EDCR Project Office in the Republic of Palau
Tel: +(691) 320 4456, Email: paula.cirikiyasawa@undp.org