TICAD閣僚会議のサイド・イベント「マルチセクター・ダイアログ」
2022年6月30日
1993年以後、TICAD共催者とパートナーは、アフリカの開発に関して時節に応じた課題について議論してきました。TICADの議題は、アフリカ大陸の開発状況や機会に最も関連したものとなるように焦点を合わせ、時代とともに進化してきました。日本政府、国連アフリカ特別顧問室(UNOSAA)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)の5つの共催者は、約30年にわたって、アフリカのリーダー、地域機関、開発パートナー、国際機関、国連システム、学術界、市民社会組織、民間セクターを巻き込み、開発課題の特定、取り扱う議題の優先付け、有効な協力関係を模索してきました。
新型コロナウイルス流行による壊滅的な影響を受け、世界が「より良い回復」に向けた道筋を考える中、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)が今年8月27-28日に開催される予定です。
アフリカの現在の開発課題は、新型コロナウイルスの大流行によって増大かつ緊急性を増しており、国際社会は課題に取り組むためのアプローチと解決策を再考することが不可欠となっています。アフリカ全域で、パンデミックは経済に悪影響を及ぼし、開発の成果を後退させ、不平等を悪化させ、社会の脆弱性を高めています。一方、ポスト・コロナを見据え、より強く、より公平で、より賢く、より持続可能な国や社会を構築する好機でもあります。包括的で持続可能かつ強靭な成長のための道筋をつけるプラットフォームとしてのTICADの価値は、アフリカ諸国がパンデミックの社会・経済的影響からの「より良い回復」を試みるという文脈で、これまで以上に重要なものとなっているのです。
新型コロナウイルスの流行によってもたらされた渡航制限のため、TICAD8サミットに先立つ閣僚会合は、2022年3月26日から27日にかけて、初めてオンラインで開催されました。参加者はアフリカ各国代表とTICAD共催者に限定され、TICAD8に向けて円滑かつ効率的な協議が行われました。このような背景から、閣僚会合の成果を共有し、アフリカ開発に携わる多様なステークホルダーの意見を得るためのサイド・イベントとして、2022年4月5日に日本の外務省とUNDPが共催し「マルチセクター・ダイアログ」が開催されました。
TICAD閣僚会合のコンセプトに沿う形で、本ダイアログではポスト・コロナ時代を見据えた新たな優先事項や課題について議論し、以下の3つのテーマに焦点を当てました。
テーマ1:経済的不平等の是正を伴う持続可能かつ包摂的な成長の実現
テーマ2:人間の安全保障に基づく持続可能で強靭な社会の実現
テーマ3:アフリカ自身の努力を支援することによる持続可能な平和と安定の構築
冒頭、米谷光司外務省アフリカ部長兼TICAD8事務局長は、閣僚会合の成果について説明しました。米谷部長は、新型コロナウイルスの流行がアフリカに与える社会・経済的影響が大きいことを踏まえ、日本は他のパートナーとともに、人間の安全保障の理念に基づき、「人」と「質の高い成長」を重視したアフリカ主導の開発と「持続可能な開発目標」の実現を引き続き支援すると強調しました。
米谷部長は、「閣僚会合では、多くの国から、パンデミックからのより良い回復のためには、民間セクターと民間投資の役割が不可欠であることが指摘されました。日本は、デジタル技術の活用を含め、アフリカへの民間投資を促進するための具体的な努力を続けていきます」と述べました。
また、ワクチンやその他の必要不可欠な医薬品への公平なアクセスや、アフリカ独自の生産能力強化の問題が、アフリカの閣僚から挙げられた重要な懸念事項の一つであると付け加えました。米谷部長は、日本がアフリカの保健分野での取り組みを引き続き推進することを強調しました。
米谷部長は気候変動もまた、地域にとって脅威となりつつあることから、グローバルな問題の一つとして挙げられたと指摘し、日本は日本の技術を活用しながら、アフリカの気候変動への取り組みを支援していくことを改めて表明しました。「実際、グリーンエコノミーは今後数年間でアフリカ開発の新たな原動力になり得ると考えている」と強調しました。
平和と安定について、アフリカ諸国は、大陸における民主主義の定着、法の支配の強化、平和構築の分野における能力開発の拡大に継続的に取り組むことの重要性を指摘しました。また、人道・開発・平和の連携を促進し、紛争予防及び解決において若者や女性を積極的に参画させることの必要性も、閣僚会合で強調されました。
マルチセクター・ダイアログには81機関(国連機関14、欧州委員会4、アフリカ地域機関3、国際機関8、開発機関4、民間企業23、NGO23、協会2)の代表者が参加し、日本及びアフリカから193名が傍聴しました。
本ダイアログでは、アフリカ大陸において経済的不平等を是正し、持続可能で包括的な成長を達成するための多くの課題と機会が提起されました。その中には、包括的な経済改革に不可欠とされる食料システムの変革も含まれていました。さらに、参加者は、持続可能な農業生産性とフードチェーンを強化する必要性と、強靱な市場インフラの開発への投資を拡大する必要性を改めて強調しました。
社会保護と若者の雇用は、貧困に立ち向かい、経済的不平等を是正するための重要な手段として、また、政治的安定と社会的結束を強化するために不可欠なものとして、議論の中で大きく取り上げられました。アフリカでは、特にインフォーマル経済において、社会保護の適用範囲が依然として限られており、アフリカ中の労働者がディーセント・ワークに十分にアクセスできていないという懸念も表明されました。
エネルギーへのアクセス不足については、水力、風力、太陽光、地熱などのエネルギー資源が豊富にあり、大きな機会を生み出す可能性があるにもかかわらず、何百万人ものアフリカ人が安定した電力供給を受けられないままであることが強調されました。アフリカ大陸の電力不足を解消するためには、革新的な資金調達が重要であることが指摘されました。
さらに、スマートな製造分野だけでなく、スマートエネルギーや社会的不況への対応、天然廃棄物の管理といった分野において革新的なデジタル・ソリューションを加速させることの重要性が指摘されました。
世界情勢や市場価格の変動、健康に関連する危機への脆弱性を軽減するために、国、地域、大陸レベルでバリューチェーンを構築する必要性が強調され、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施の必要条件として認識されました。AfCFTAが成功することで、失業、貧困、栄養失調に対処し、ヘルスケアシステムへのアクセス改善に貢献するなど、ポジティブな相乗効果がもたらされることが示唆されました。
人間の安全保障に基づく持続可能で強靭な社会をいかに実現するかを考える上で、参加者は、この地域における気候変動の影響に注目し、それが既存の社会・経済的課題をさらに悪化させていることに言及しました。公共サービスの気候変動への対応力の欠如、気候変動に適応するためのインフラの不足、食料生産の不足、生物多様性の損失などの懸念が示されました。低炭素、気候変動に強い、自然を基盤としたソリューションによるグリーン・トランジションの推進、官民パートナーシップによる緩和と適応のための気候資金の調達は、大陸全体で気候変動の影響に対処するための基本であると考えられました。
テーマ別討論で繰り返し取り上げられたのは、世界で最も高い水準にあるアフリカの若年層の潜在能力であり、参加者は、包括的で回復力のある復興には人的資本への投資が不可欠であることを強調しました。
その中で、教育分野と子どもの機会拡大のためのイニシアティブ、そして高等教育や職業技能に必要な投資を含む人的資本の開発が重要な介入分野と強調されました。また、医療インフラや医療機器の整備は、医療従事者の人材育成とセットで行う必要があることが指摘されました。
参加者は、パンデミックによってHIV、結核、マラリアとの闘いにおけるこれまでに苦労して得た多くの成果が失われたことを認め、HIV、結核、マラリアとの闘いとより強力な保健システムの構築のために少なくとも180億ドルを調達する世界エイズ・結核・マラリア対策基金の第7次増資に日本が貢献したことに感謝の意を表明しました。
今回のダイアログが重視したもう一つの分野は、アフリカ自身の努力を支援することによる持続可能な平和と安定の構築でした。
参加者は、アフリカにおける平和と安全の概念に体系的な変化が起きていること、そしてマルチセクター・パートナーシップは、平和と安全の課題を考えるための手段として、大陸、地域、国、地方における既存の戦略に配慮すべきであると述べました。同様に、人道的危機を克服するためには、人道支援関係者は民間セクターを含む開発アクターと協力することが不可欠であると強調しました。アフリカ連合の関連条約やアフリカの国内避難民の保護・支援などに言及され、アフリカ諸国が最も先進的な法的枠組みを先導していることも認識されました。また、選挙管理を通じて自由で透明な選挙、監視・観察メカニズムを構築することが、民主主義を強化し、良い統治を実現するために最も重要なことであると述べられました。
本ダイアログの最後には、アフリカと日本のNGOや民間セクターの代表者から考察が述べられました。
市民社会代表者は、TICADプロセスは「人間中心」であるべきだと表明し、市民社会の積極的な参加は、TICADの成功だけでなく、アフリカ大陸が2030アジェンダを達成できるように、ポスト・コロナの再建に向けたアフリカ諸国の努力にとっても不可欠であると付け加えました。
市民社会の代表は、国際機関や非国家主体、特にアフリカの市民社会の多様な参加によって、アフリカの開発の進展と課題を示すパワフルで活発な議論ができた一方で、アフリカのディアスポラやアフリカの民間セクター、特に中小規模の企業や慈善団体の幅広い参加があれば、本ダイアログはより大きな利益を得ただろうと述べました。
民間セクター代表者は、アフリカで行われている開発努力を支援することの重要性を改めて強調しました。日本からは、グリーンエコノミー、アグリビジネス、ロジスティクス、コネクティビティ、デジタルトランスフォーメーションの発展を支援するよう、ビジネスセクターの代表者に呼びかけました。特に自動車、医療、製薬の分野で、日本のアフリカへの投資は今後飛躍的に増加する可能性があることが認識されました。
最後に、民間セクターの代表者は、アフリカの政府および民間セクターの開発において、事業運営における説明責任と透明性を高めるための能力開発に向けた投資を拡大する必要性を強調しました。
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